社内で改善提案を出す場合に、「良い案が思い浮かばない」「どのような改善提案が良い提案なのかが分からない」という方は多いのではないのでしょうか。
本記事では改善提案のポイントと、改善提案を考えるための具体的なアプローチについて記載していきます。

そもそも改善提案はどうあるべきか

改善提案とは

改善提案とは、業務や作業における改善案について提案することです。主体となるのは現場に近い作業メンバーや管理者の方で、トップダウンではなくボトムアップによって提言されます。現場を理解している人の視点や観点で、現状業務の効率化、コスト削減、生産性向上、ミスの削減など、業務をより良い状態で進行できるようにするためのアイディア出しが改善提案です。

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どのような改善提案が“良い”提案なのか

改善提案は「効果が大きく」「実現可能性が高い」ものが理想的です。いずれも抽象的なため、もう少し具体的な項目として観点を記載します。

「効果」として検討可能な要素

「効果の大きさ」の側面で対象となるのは主に以下の要素です。定量的に測れる要素が主な指標となります。一般的には費用対効果を考える場合が多いですが、作業品質や生産性に関わる要素は様々なものがあります。

  • 売上の向上
  • コストの削減
  • 作業のスピードアップ
  • 処理件数の増加
  • ミスの削減

「実現可能性」を考えるうえでの観点

改善提案にあたり、実現可能性を考えることは重要です。机上の空論や夢物語のような提案では実行に移せませんので、ある程度具体的なアプローチ方法と実現可能性を考慮しましょう。具体的には以下の観点で実現可能かどうかをチェックしましょう。

  • 効果が出るまで必要な時間
  • 改善案を実行するために発生する金銭的コスト
  • 改善案を実行するために必要となる人的リソース
  • 社内規定やルールに抵触しないか
  • 情報の保護、セキュリティにおいて大きなリスクがないか

もし、多少の障害や問題があっても工夫して乗り越えられないかどうか、チームの知恵も借りながら前向きに検討してみてください。

良い提案のために最も重要なのは課題の発見

改善提案においては良い課題を見つけることをまず念頭に置きましょう。誤ったアプローチとして、いきなり具体的な施策や打ち手を考えてしまう場合があります。
「課題を見つける」→「課題を解決するための案を考える」というステップで考えることで、質が高い改善提案が行えます。解決することで大きな効果を生み出せる課題がないか、という観点で考え始めましょう。

改善提案の種となる課題の見つけ方

事業内容やチームの状況によって課題は千差万別ですが、課題発見に繋がりやすいテクニックと考え方として「チームでの振り返り」「業務の可視化」ご紹介します。ただし、「業務の可視化」はかなりの時間と工数がかかってしまうため、社内のメンバーで実施する場合は「振り返り」を活用することを推奨します。
また、課題に関しては小さな課題も含めて、できるだけたくさん見つけるように意識することが重要です。量は質の母なので、課題の良し悪しはさておき、量を沢山挙げるようにしましょう。

チームで振り返りを実施する

現在の業務についてチームで振り返りを実施すると、多くのヒントを得ることができます。もちろん、ただなんとなく振り返るだけでは良い課題は見つかりません。振り返りは状況やチームの人数に応じていくつかのフレームワークが存在しますので、最適なものを選んで実施してみてください。ここでは代表的なものを2つだけご紹介します。また、別の記事で11種類の振り返り方法をご紹介していますので、興味がある方は合わせて参考にしてください。
振り返りにあたっては5名以下のチームであれば、1時間×2回程度の実施を目安として取り組んでみてください。

KPT

KPTは「Keep」「Problem」「Try」の頭文字をとったもので、振り返りに必要な3つの観点を合わせた言葉です。チームメンバーでブレインストーミングに近い形でそれぞれ要素について意見を出し合います。

改善提案の課題発見手法としてのKTP活用
KPT
  • 【K】Keep:よかったこと、続けるべきこと
  • 【P】Problem:問題、課題
  • 【T】Try:解決策、今後取り組むこと

KPTは非常によく用いられる方法です。KPTの詳細や活用方法をまとめた記事も参考にしてみてください。また、KPTはProblemで見つかった課題に対して、Tryで具体的な解決方法を考えることができますので、改善提案における課題発見だけではなく、具体的なアプローチについても多面的な検討が可能となります。

YWT

YWTは「Y(やったこと)」「W(わかったこと)」「T(つぎにやること)」の3つの観点で過去の取り組みを振り返ります。

「Y(やったこと)」は実際に取り組んだ施策や経験を洗い出します。ここでは事実を思い出しながら列挙すればよいので、結果の良し悪しや解釈を考える必要はありません。
「W(わかったこと)」は「Y(やったこと)」の内容を受けて、どのようなことがわかったかを洗い出します。良い点・悪い点に関わらず洗い出しましょう。
「T(つぎにやること)」は「Y(やったこと)」と「W(わかったこと)」から、今後どのようなアクションに繋げていくか、を考えます。

改善提案の課題発見の観点だと、「Y(やったこと)」「W(わかったこと)」の2点が重要です。特に「W(わかったこと)」の中に課題となる要素が含まれていますので、確認してみてください。

現在の業務を可視化する

定型的に対応している業務においては、それぞれのメンバーの中に知見やノウハウ、手順が存在していて、可視化されていないケースが多々あります。業務を可視化することで、いままで気づかなかった無駄や非効率な部分が課題として見つかります。
業務の可視化は、前述の振り返りと比較すると、難易度としても、必要な時間としても、少々ハードルが高い取り組みとなりますが、抜本的な改善提案を目指す場合は、ぜひチャレンジしてみてください。

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業務ヒアリングの実施

自分が担当していない業務は、概要はわかっていても具体的な手順や詳細、注意点は把握できていないことがほとんどです。改善対象の各業務を担当している方に実際に聞いてみることが、業務理解への近道です。業務ヒアリングの具体的な方法をまとめた記事がありますので、内容を確認しながらヒアリングを実施してください。

業務フローチャートまたは作業手順書の作成

ヒアリングした結果をまとめる場合や、現在の業務を可視化するためには、フローチャートまたは、作業手順書の作成がおすすめです。それぞれにメリットデメリットがありますので、投下可能な工数などを考慮してより良い方を選択してください。

フローチャート
改善提案における業務可視化のためのフローチャート
フローチャートサンプル

フローチャートは図を用いて、業務の流れを可視化する方法です。フローチャートの具体的な作成方法をまとめた記事があるので、参考にしながら作成してください。

メリット

  • 作成にかかる時間が比較的短い
  • 作成の難易度がやや低い

デメリット

  • 内容が抽象的であるため、細かいレベルの課題が発見しずらい
作業手順書
改善提案における業務可視化のための業務手順書
作業手順書 サンプル

作業手順書は作業のステップごとに担当者や具体手順、チェック観点にまで踏み込んで記載するため、細かいレベルで改善点が発見できます。作業手順書の具体的な作成手順は、作り方についてまとめた記事を参考にしてください。

メリット

  • 業務、作業の内容が詳細に把握できるので、細かい課題も発見しやすい

デメリット

  • 作成に時間がかかる(作業者の協力が必要)
  • 作成の難易度がやや高い

さまざまな観点で課題を考える

業務の現状を把握しただけでは、どのような課題があるか見つけづらいと思います。ここでは可視化した業務から具体的な課題を発見するための観点・考え方をいくつかご紹介します。

QCD

QCDは「Q: Quality(品質)」「C: Cost(費用)」「D: Delivery(納期)」の3の頭文字を合わせた言葉です。生産管理および業務品質を表す指標となります。ご自身の業務におけるQCDを定義することで、改善できそうな要素や課題がある項目を見つけましょう。主に以下のような形で対応しています。

  • Q: Quality(品質): 業務プロセスにおけるミス、成果物の品質
  • C: Cost(費用): 人的コスト、原価、コミュニケーションコスト、無駄な作業
  • D: Delivery(納期): 作業ステップの削減、作業の短期化、納期の短縮

QCDについては詳細を解説した記事も参考にしてください。

ムダ・ムリ・ムラ

業務の非効率さを生み出す指標で、3Mと呼ばれる場合もあります。言葉のままですが、「ムダ」は不要な作業や過剰なリソース、「ムリ」は作業量とリソースの不一致、「ムラ」は作業量やリソースの不安定さを表します。課題発見のために以下の観点で現在の業務を確認しみてください。

  • ムダ: 不要な作業・人員を過剰に投下している・設備やツールが活用できていない
  • ムリ: 作業量の超過・人員不足、短納期・過剰な品質
  • ムラ: 作業量の不安定さ・作業人員の不安定さ

見つかった課題に対して優先順位をつける

上記のプロセスを経て、課題が見つかったら優先順位をつけるようにしましょう。もし、改善提案をおこなう背景や目的があれば、そこに照らし合わせて「効果の大きさ」「取り組むハードル」「必要な時間」の観点で考えると良いでしょう。特に判断する指標がない場合は「費用対効果」の観点で判断しましょう。

改善のためのアプローチ方法

課題が見つかったら、具体的な改善方法を検討します。企業の状況によって、打てる手立ては大きく異なりますので、こちらについても改善案の検討に使えるフレームワークをご紹介します。いずれのフレームワークも業務プロセスそのものを最適化するアプローチとなります。

ECRS

改善提案の具体アプローチとなるECRS
ECRSの流れ

「イクルス」または「イーシーアールエス」と読みます。業務プロセスを改善する場合の観点です。ECRSは一般的に効果が大きいとされるアプローチの順番ごとに項目が並んでいるため、以下の流れにしたがって、改善できる部分がないか確認しましょう。

  1. Eliminate(排除): 業務やプロセスをなくす
  2. Combine(結合) : 別々の作業を同時に処理する、ひとつにまとめる
  3. Rearrange(再配置): プロセスや担当者を入れ替える
  4. Simplify(簡素化): 手順やプロセスを簡単なものに変える

ECRSについても詳細を別の記事にまとめているので、合わせてご確認ください。

業務の平準化

平準化は「へいじゅんか」と読み、「ある一定期間における従業員・組織の作業量を均等にする」ことを指します。平準化によって組織にとって、もっとも生産性が高く・効率が良い作業体制を実現することができます。
平準化を実現するための具体アプローチは以下になります。

  • 業務が発生するタイミングのコントロール
  • 業務を定型化して誰でも対応できるようにする
  • 進捗管理をすることで日々の作業量の見える化
  • 管理者を任命することで業務分担の最適化を図る

平準化の意味やアプローチの詳細を別の記事にまとめているので、合わせてご確認ください。

進捗管理・業務管理のためのツールの導入

業務を円滑にすすめ、ミスや抜け漏れをなくすためにツールを導入することも効果的です。Excelやスプレッドシートを用いて進行管理表を作成することはもちろん、専用のツールを利用することも可能です。メディアの中でもおすすめのツールを紹介している記事がいくつかありますので、ぜひ参考にしてみてください。

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まとめ

改善提案について、取り組み方のイメージがつきましたでしょうか。本記事では、抜本的な改善を目指した場合のアプローチについて紹介させていただきました。
もちろん、改善提案には様々な規模のものがあります。どんな小さな規模の改善でも、現状よりも少しでも良い状態を実現したいという意識を持つことが重要です。個人レベルで考えるのはもちろん、組織やチーム全体でより良い状態を模索してみてください。

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