ビジネスにおける振り返り、正しく実施できていますか?個人からチームでの振り返りまで、効果的な振り返りはなかなか難しいものです。
正しい観点を抑えて振り返りを実施するためには、フレームワークの活用が有効です。本記事では、ビジネスシーンにおける振り返りで活用できるフレームワークを、ポイントとともにご紹介します。

振り返りのポイントと重要性

実行と振り返りの流れについて

振り返りは、過去の自身の行動や判断を客観的に見直し、改善点や反省点を見つけることで、今後の動きをより良くするためのものです。「振り返り」は「結果を確認する」だけでなく、具体的な次のアクションへと移していくところまでを含んでいます。「結果の確認」→「原因・課題の明確化」→「改善策の検討」→「実行」が基本的な流れとなります。
もし、適切な振り返りによって毎日1%の改善ができれば、1年後には37.8倍の成長が実現できます。継続的な改善を行うために、振り返りはとても重要なのです。

振り返りの流れ

効果的な振り返りにはフレームワークの活用がおすすめ

過去の「結果」から「原因・課題」を見つけ出し「改善行動」につなげていくことが振り返りのプロセスです。一般的な落とし穴として以下のようなものがあります。

  • 結果を網羅的に確認できていない
  • 原因がうまく見つけられない/原因究明の深さが足りない
  • 結果を適切に分類できていない

振り返りのプロセスにおいて「原因・課題」の精度がもっとも重要です。「原因・課題」が適切に洗い出されていれば、「改善策」は苦労することなく見つけられます。
逆に本質から外れた「原因・課題」にフォーカスしてしまうと、どんなに質の良い「改善策」も効果を生まない内容となってしまいます。

「結果の確認」から、質の高い「原因・課題」を見つけ出すためには、振り返りのフレームワークを利用することがおすすめです。フレームワークを活用することで、結果の分類や、考える際の観点が明確になり、抜け漏れなく洗い出しができるだけでなく、質の高い原因究明ができるようになります。
ただし、振り返りのフレームワークといっても多くの種類が存在します。本記事では、「人数」「振り返りの期間」「利用難易度」といった観点を含めてご紹介します。

振り返りのフレームワーク11選

KPT

・おすすめ度: ★★★★★
・振り返り人数: 個人・複数名
・振り返りの期間: 1日〜数ヶ月
・利用難易度: 中
・ビジネスとの親和性: 高

「ケプト」や「ケーピーティー」と読みます。KPTは「Keep」「Problem」「Try」の頭文字をとったもので、振り返りに必要な3つの観点です。

【K】Keep:よかったこと、続けるべきこと
【P】Problem:問題、課題
【T】Try:解決策、今後取り組むこと

非常にシンプルな考え方ですが、汎用性も高く、振り返る業務の内容や人数に関わらず活用できます。KPTの概要や活用方法をまとめた記事がありますので、ぜひ参考にして取り入れてみてください。

経験学習モデル

・おすすめ度: ★★
・振り返り人数: 個人
・振り返りの期間: 1ヶ月から数ヶ月
・利用難易度: 高
・ビジネスとの親和性: 高

経験学習モデルとは、ビジネスにおける個人の能力向上は、書籍や座学などで得られる体系的な学習ではなく、現場の体験や経験によって大部分がもたらされるという理論に基づいた振り返りのフレームワークです。以下の4ステップを順に繰り返していく方法になります。

  1. 具体的経験(Concrete Experience):自分が経験した具体的事実や経験を振り返る
  2. 省察的観察(Reflective observation):自分自身の経験を多様な観点、客観的な観点から振り返る
  3. 概念化(Abstract Conceptualization):具体的経験と省察的観察を総合的に踏まえて、次の経験に生かせる内容を概念化する
  4. 試行(Active Experimentation):概念化した内容を実践に反映させる

こちらのモデルは、振り返りを理解するための概念に近いものなので、実際に利用するには少々ハードルが高いかと思いますが、「省察的観察」の考え方が重要なポイントになります。冒頭で説明した、2つ目の「原因・課題の明確化」という要素は”俯瞰的に・客観的に”考えることが重要です。それによって、次の「概念化」のステップが行いやすくなります。「概念化」は理解がしづらいポイントですが、「汎用化」という表現で捉えても問題ありません。今回の結果に対してだけではなく、今後起こりうる様々な事象に対して当てはめられるような要素として考え直すことが「概念化」のステップです。
このフレームワークは比較的長期スパンでの個人の振り返りに有効です。

Start – Stop – Continue – Change

・おすすめ度: ★★★
・振り返り人数: 個人
・振り返りの期間: 1日
・利用難易度: 低
・ビジネスとの親和性: 中

個人の継続的な振り返りに活用できるフレームワークです。特にビジネスにおいて習慣、ルーティンで取り組んでいる業務や行動を見直すうえで役に立ちます。Start,Stop,Continue,Changeは以下の観点で洗い出しを行います。

  • Start (スタート): 今後、新しく取り組みたいこと
  • Stop (ストップ): 現在取り組んでいることで、やめるべきこと
  • Continue (コンテニュー): 現在取り組んでいることで、継続すること
  • Change (チェンジ): 現在取り組んでいることで、工夫・変更できること

Start以外の3つの項目は「現在取り組んでいること」を見直す観点になります。重要なのが「Stop」の項目です。普段、習慣やルーティンとして業務に取り組んでいると、不要となっている作業にも関わらず、形骸化したまま取り組んでいることもあります。4つの観点から見直しをおこない、より効果的に時間を使えるようにしましょう。

ダブルループ学習

・おすすめ度: ★★★
・振り返り人数: 複数名
・振り返りの期間: 1ヶ月〜数ヶ月
・利用難易度: 中
・ビジネスとの親和性: 高

ダブル・ループ学習は組織の取り組みにおいて、既存の目的や前提そのものから見直し、抜本的な改善を実現するための考え方です。ハーバード大学のクリス・アージリスが提唱しました。組織においての学習のプロセスは、「シングル・ループ学習」と「ダブル・ループ学習」の2つがあり、「シングル・ループ学習」の取り組みからもう一段踏み込んだ内容が「ダブル・ループ学習」となります。

基本となるサイクル

まず、計画から実行までのプロセスを以下の3段階に分けて考えます。

  1. 前提…目標や取り組む内容など、行動の基本となる指針
  2. 行動…前提に基づいて実際に取るアクション
  3. 結果…行動したことで得られた結果やフィードバック

シングル・ループ学習

シングル・ループ学習の場合は、上記の「2. 行動」と「3. 結果」のサイクルを繰り返す考え方です。つまり、特定のアクションによって得られる結果や経験から反省を行い、次のアクションを改善していきます。
例えば、パソコンの手配を担当しているチームであれば、「依頼を受けてから手配するまでにかかる時間を短く」という目標に対して、セットアップの方法や配送の方法を見直すことがシングル・ループ学習の取り組みになります。

ダブル・ループ学習

ダブル・ループ学習はシングル・ループ学習よりも一段踏み込んだ改善プロセスです。シングル・ループ学習における「2. 行動」と「3. 結果」の見直しに加えて、「1.前提」部分の改善を行います。
先程のパソコン手配の例でいえば、「依頼を受ける前からパソコンをストックしておく管理に変更する」や「パソコンの準備を各部署の担当者自身ができるスキームに変更する」など、抜本的な改革がダブル・ループ学習になります。

ダブル・ループ学習を意識することで、既存の概念や前提を疑うことが可能となり、より効果の大きな振り返りを実現できる可能性が高まります。

ジョハリの窓

・おすすめ度: ★★★
・振り返り人数: 複数人(対象は個人)
・振り返りの期間: 数ヶ月〜1年
・利用難易度: 高
・ビジネスとの親和性: 中

ジョハリの窓は個人かつ長期の振り返りに適したフレームワークです。客観的に自分を見つめ直すことで、深い自己理解と改善が可能となります。
自分自身の特徴を「自分から見た場合」「他者から見た場合」の観点で分析することで、主観的な認識と、客観的な認識を比較することが可能となります。

ジョハリの窓
  1. 自分も他人も知っている自分の性質(解放)
  2. 自分は気付いていないが他人は知っている性質(盲点)
  3. 他人は知らないが自分は知っている性質(秘密)
  4. 自分も他人も知らない性質(未知)

振り返りは一緒に仕事をしているチームメンバーなど複数名で取り組みます。事前に一般的な正確を表す要素(几帳面、真面目、丁寧、etc)を10個程度リストアップしておき、各メンバーごとに「自分に該当する要素」「相手に該当する要素」を列挙していきます。その後、以下の要素で項目を分類します。

  • 自分も相手も挙げた項目→①開放の窓
  • 相手だけが挙げた項目→②盲目の窓
  • 自分だけが挙げた項目→③秘密の窓
  • 自分も相手も挙げなかった項目→④未知の窓

客観的な視点、主観的な視点から自分の理解を深められるだけではなく、一緒に働いている相手が自分のことをどのように捉えてるのかを把握できるので、コミュニケーションの円滑化も期待できます。

YWT

・おすすめ度: ★★★★★
・振り返り人数: 複数名
・振り返りの期間: 1日〜数ヶ月
・利用難易度: 低
・ビジネスとの親和性: 高

YWTは「Y(やったこと)」「W(わかったこと)」「T(つぎにやること)」の3つの観点で過去の取り組みを振り返ります。KPTと似ていますが、「Y(やったこと)」が実際の取り組みや経験にフォーカスしている点が大きな違いです。フレームワークとしてはシンプルかつ直感的に取り組めるので、振り返りの経験が少ないチームでもおすすめです。

「Y(やったこと)」は実際に取り組んだ施策や経験を洗い出します。ここでは事実を思い出しながら列挙すればよいので、結果の良し悪しや解釈を考える必要がない、ことがメリットになります。
「W(わかったこと)」は「Y(やったこと)」の内容を受けて、どのようなことがわかったかを洗い出します。良い点・悪い点に関わらず洗い出しましょう。
「T(つぎにやること)」は「Y(やったこと)」と「W(わかったこと)」から、今後どのようなアクションに繋げていくか、を考えます。

フレームワークの項目が直感的に理解しやすく、KPTと並んで活用しやすいものになります。

KPTA

・おすすめ度: ★★★★★
・振り返り人数: 個人・複数名
・振り返りの期間: 1日〜数ヶ月
・利用難易度: 中
・ビジネスとの親和性: 高

KPTAはKPTにA(Action: 具体的な行動)の要素を追加したものになります。具体的な項目は以下の通りです。

【K】Keep:よかったこと、続けるべきこと
【P】Problem:問題、課題
【T】Try:解決策、今後取り組むこと
【A】Action:具体的な行動

KPTを活用していると、Tryの要素が抽象的な着地になってしまうことが多々あります。そのような場合でも、Actionの項目を明確に設けることで抽象的な反省や目標からさらに一歩踏み込んだ、具体的な行動につなげることができます。

PDS

・おすすめ度: ★★
・振り返り人数: 複数名
・振り返りの期間: 数ヶ月
・利用難易度: 中
・ビジネスとの親和性: 高

「Plan:計画」「Do:実行」「See:検討」の頭文字をとったものになります。振り返り手法としても活用可能ですが、継続的な改善を行うための一つの考え方として捉えていただくのが良いでしょう。PDCAと比較されることが多く、Actionの要素が含まれていないことがネガティブな要素として言及されます。ただ、具体的なアクションを考え出すことはハードルが高いため、振り返りの経験が少ないチームで「自分たちの状況の認識を揃える」ために活用することをおすすめします。
勝手がわかってきたら、PDCAやKPTAを利用して、次のアクションの検討を含んだ振り返りに挑戦してみてください。

PDCA

・おすすめ度: ★★★★
・振り返り人数: 複数名
・振り返りの期間: 1ヶ月〜数ヶ月
・利用難易度: 高
・ビジネスとの親和性: 高

Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の流れで継続的に改善を繰り返す方法です。それぞれの項目に当てはめながら施策を進めていきます。

  • Plan(計画): 目標やゴールを設定。定量的な内容に落とし込むことが重要
  • Do(実行): 計画した目標に到達できるように実行
  • Check(評価): 実行の結果に対して良し悪しを含めた評価を実施
  • Act(改善): 評価を受けて反省・改善策を検討し、次の行動につなげる
PDCAサイクルの流れを表した画像
PDCAサイクル

業務改善の文脈でPDCAの考え方を取り入れる場合はBPM(ビジネスプロセスマネジメント)の考え方と具体的な取り組み方をまとめた記事が参考になるかと思います。ぜひ、合わせて確認してみてください。

LAMDA

・おすすめ度: ★★★★
・振り返り人数: 複数名
・振り返りの期間: 1ヶ月〜数ヶ月
・利用難易度: 高
・ビジネスとの親和性: 高

LAMDAはPDCAサイクルの発展版にあたる考え方です。LAMDAのそれぞれが以下の頭文字になっています。

  • L(Look):現地現物で観察する
  • A(Ask):問を立てて背景を確認する
  • M(Model):理解した点をシンプルに体系化する
  • D(Discuss):具体的なポイントを議論して深める
  • A(Act):決定事項をもとに行動する

上記がLAMDAのサイクルです。また、考え方について以下のポイントがあります。

  • 現地現物: 考えが机上の空論になってしまうことを避けるために、現場に直接赴いて自分たちの目で状況や結果を確認、認識する
  • 双方向のコミュニケーション: 1人で考えるのではなく、関係者やチームなど複数名で振り返りに取り組むことで多面的・客観的に考察を深める
  • プロトタイプ化: 考察の結果を抽象的な内容に留めることなく、具体的なソリューションや製品、取り組みに具体的に落とし込む
  • フィードバックの獲得: 具体的な形に落とし込んだプロトタイプに対して、関係者や第三者から客観的なフィードバックを受け、ブラッシュアップしていく

PDCAと類似しているものの、取り組みの指針においての具体性が高く、より高精度な振り返りが期待できます。ただし、観点や考え方の難易度も高いため、ある程度振り返りの文化が醸成されていて、より高度な振り返りやプランニングにチャレンジしたい、という場合に活用をお勧めします。

4行日記

・おすすめ度: ★★★
・振り返り人数: 個人
・振り返りの期間: 1日
・利用難易度: 低
・ビジネスとの親和性: 中

4行日記は個人で活用できる振り返りのフレームワークです。文字通りですが、毎日、4行の日記を書くことで様々な気付きを得ながら自分自身を見直すことができます。個人的な目標達成のための振り返りとして有効です。

具体的には「事実」「発見」「教訓」「宣言」の観点で書き出していきます。分量の目安としては1行あたり20文字程度、4行で80文字以内にまとめるのが理想です。

  • 事実: 1日のうちにあった出来事から1つ選んで客観的に書き出す
  • 発見: 「事実」から得られる気付きやひらめいたことを書き出す
  • 教訓: 「発見」から得た内容を今後も活かせるように普遍的な教訓として書く
  • 宣言: 将来自分が有りたい姿を現在進行形(〜している、等)の形で書く

毎日継続することで、自分では意識していない潜在的な癖や強み、人生において大切にしている価値観などが明確になり、自然と目標に近づくことができます。

振り返りの実施にあたっての注意点

改善策は必ず実行する

様々なフレームワークでも言及されている点ですが、振り返りで見つけた反省点や改善点は実際の行動に繋げていかないと意味がありません。
ぜひ、「改善策を考える」ところまでだけで満足せずに、実行に移せるよう意識してみてください。

悪い点や失敗も歓迎する

振り返りを実施していると悪い点や上手くいかなかった点が必ず見つかります。特にチームや複数人で振り返りを実施する場合には、ネガティブな事実を歓迎するようにしましょう。特に管理者やリーダーの方がこの意識を持つことが重要です。現場のメンバーが、失敗を共有してくれたら感謝し、個人を叱責するのではなく、どのようにして組織の知見として活かし、改善していくのかという方向に意識を向けてください。

原因が分からない場合があることを理解する

あらゆる物事は結果があるところに原因があります。しかし、実際のビジネスシーンでは、特定の結果に対する原因を究明することが非常に難しい場合が少なくありません。
特に組織的な活動の中で引き起こされる結果は、様々な複合的な事象によって発生している可能性が高く、1つの原因に特定するということが不可能な場合があります。
振り返りの際にこのような壁にぶつかっても、悲観しすぎないようにしてください。重要なのは「結果に対して原因を考えようとし続けること」です。また、「原因は間違いなくXXである」と決めつけず、常に「もしかしたら認識できていない原因が存在するかもしれない」という意識を持つことで、より深く・広く可能性を考慮できるようになります。

改善策を講じる必要がないミスや失敗も

「あらゆるミスや失敗に改善策を講じるべきだ」という考えに陥らないように注意しましょう。もちろん、事故や人命に関わるようなクリティカルな失敗は許されないため、万全の対策、改善を行う必要があります。
ただし、対策を講じない方が良い、許容すべきミスが存在することも認識しましょう。例えば、新規事業の失敗や、精度よりも速度を優先した結果発生する(想定の範囲内の)ミスは、意識的に許容することで全体としてはより最適な結果を得られる可能性があります。「失敗・ミス = 悪いもの => 対策を講じてゼロにすべき」という短絡的な考えに陥らないように注意してください。

まとめ

振り返りについて理解を深めることはできましたでしょうか。これから初めて取り組もうとしている方は、ぜひ難易度が低く、状況に合ったものを試してみてください。また、繰り返しになりますが、振り返りは次のアクションに活かすことと、継続することが重要です。まずは無理のない範囲でチャンレンジしてみましょう。

オススメの記事