プロセスマネジメントは特定の業務の流れについて管理し、生産性向上のために継続的な改善に取り組むための手法です。類義語として、BPM「Business Process Management (ビジネスプロセスマネジメント)」と表現される場合もあります。本記事では、プロセスマネジメントの考え方や、事業に取り入れる場合のポイント、メリット・デメリットなどについてご紹介します。

プロセスマネジメントとは?

プロセスマネジメントは業務の管理手法で、特定の業務プロセス全体を管理し継続的な改善を施すことで生産性向上を目指す活動を指します。冒頭で記載したとおり、別の言い換えとしてBPM「Business Process Management (ビジネスプロセスマネジメント)」と表現される場合もあります。基本的には同じ内容として捉えていただいて問題ありません。

プロセスマネジメントの対象となる業務

プロセスマネジメントは一般的に定型業務やルーティン業務に適用されるケースが多いです。具体的な要素としては以下を満たしているほど、プロセスマネジメントによって生産性向上の効果を得られる可能性が高くなります。

  • 作業の手順が決まっている
  • 繰り返し発生する
  • 発生件数が多い/頻度が高い
  • 1業務あたりに要する期間が長い
  • 複数の人や部署が連動しながら業務に取り組んでいる

上記の要素を満たしているものほど「大きな工数がかかっている定型業務」と判断できます。プロセスマネジメントは対象の工数(規模)が大きいほど、適切な管理によって得られる改善効果が見込めます。

逆にプロセスマネジメントに向かない業務としては、プロジェクトのような非定型業務です。一度しか発生しないタスクを中心に構成された業務ではマネジメントしながら改善するという考え方の適用が難しく不向きと判断されます。プロセスマネジメントによる管理対象となる定型業務の例としては以下が挙げられます。

  • 従業員採用時のオンボーディング業務
  • 従業員退職時の手続き
  • 人事関連の申請に関わる処理プロセス
  • 経費申請や出張申請など定期的に発生する申請処理
  • PCやスマートフォンを始めとした備品の手配プロセス
  • ITサポートのリクエスト
  • カスタマーサポートのリクエスト
  • マーケティング部門における広告/販促物の作成プロセス
  • 新規クライアント獲得時のオンボーディング
  • Webメディアや出版における制作プロセス管理

なぜ今、プロセスマネジメントが必要なのか?

プロセスはあらゆる企業の生産活動において存在します。かつては工程管理という考え方で製造業を中心に発展してきましたが、様々なオフィスワークにおいても業務をプロセスに置き換えて考えることができます。プロセスマネジメントが適切の実施されていない企業の場合、以下のような課題が発生しやすいです。

  • 業務が属人化していて他の人が対応できない
  • 新人の教育や業務の引き継ぎに時間がかかる
  • 業務品質が安定しない
  • ミスや抜け漏れが発生している
  • 業務の対応が納期に間に合わないことがある
  • 業務の内容がブラックボックス化していて適切な評価ができない

プロセスマネジメントによって上記のような課題を改善できる可能性があります。

また、よくある誤りとして「本来定型化できる業務にも関わらず、定型化できないと思われている」ことが挙げられます。これは最初から属人的に対応している業務に特に見られやすい傾向で、属人的な対応が常態化していることで定型化できないと判断されている状況です。実際は不要な業務やルールの整備をすることで定型化できることがほとんどなので、ぜひ、この機会にご自身の業務を見直してみてください。

プロセスマネジメントの基本的な考え方

プロセスマネジメントにおいて重要な要素は改善の継続性です。発祥の期限は諸説ありますが、プロセスマネジメントの一つ前の潮流としてBPR「Business Process Re-engineering:ビジネスプロセス・リエンジニアリング」が挙げられます。プロセスマネジメントと同様に業務改善のマネジメント手法ですが、「継続性の有無」が大きな違いとなります。

プロセスマネジメントは大きく以下のステップで考えます。

プロセスマネジメントの流れを表した図です
プロセスマネジメントの流れ
  1. 設計…プロセスに求められる要件の整理
  2. モデル化…具体的なプロセスの策定
  3. 実行…プロセスに沿って業務を遂行
  4. 監視…業務のパフォーマンスを計測
  5. 最適化…改善を実施してよりよいプロセスに更新

詳細については後述しますが、ここではプロセスの設計から実行、改善が何度も繰り返されながら取り組まれることを抑えてください。

プロセスマネジメントのメリット・デメリット

プロセスマネジメントに取り組むとどのような効果が得られるのか、メリット・デメリットをご紹介します。ご自身の業務で抱えている課題が解決できそうか照らし合わせながら確認してください。

プロセスマネジメントのメリット

業務の属人化が解消される

プロセスマネジメントに取り組む上では業務のモデル化が必要です。モデル化の意味は「標準化」と捉えていただいて問題ありません。標準化は特定の業務プロセスを画一的な方法に統一する活動を指します。この際に、どのように業務を実施するべきか、誰の目に見てもわかるように作業手順書やフローチャートに取りまとめることで、これまでの業務の属人化が解消できます。業務プロセスの可視化について詳細をご紹介した記事もありますので、合わせてご確認ください。

業務のQCDが向上する

「QCD」とは、生産管理の軸となる3つの単語の頭文字をあわせた言葉で、生産管理の観点・指標として用いられています。管理の対象は形ある”製品”にとどまらず、無形の”サービス”に対しても適応できる考え方です。

  • Q: Quality(品質)
  • C: Cost(費用)
  • D: Delivery(納期)
QCDの概要を表した画像です。
QCDの関係性

プロセスマネジメントを活用することで、単純な費用対効果の改善にとどまらず業務全体におけるQCDの改善が可能となります。QCDの詳細についてまとめた記事もありますので、合わせて参考にしてください。

リアルタイムに業務状況が把握しやすくなる

プロセスマネジメント実現のステップでは、業務プロセスの可視化が含まれます。進行している業務が共通認識の手順に従って遂行されてるため、チームや組織のメンバー全体で、現在どれだけの業務がどこまで進んでいるのかが容易に把握できるようになります。

コンプライアンス/セキュリティの向上

プロセスマネジメントによって業務の対応手順・方法が標準化されることで多面的かつ客観的なリスク評価が可能となります。反対に業務がブラックボックス化している状態では業務内容を担当者が把握しておらず不正等に気づけ無い可能性があります。また担当者に悪意が無い場合でも、主観では適切なリスク評価が難しく知らず識らずのうちに、コンプライアンスやセキュリティの脆弱性を孕んだ対応方法となってしまっている可能性があります。プロセスマネジメントによってこれらのリスクを軽減することが可能です。

プロセスマネジメントのデメリット

実行までに工数と時間がかかる

プロセスマネジメントを実現する流れにおいて、実際に業務に取り組むまでに「設計」と「モデル化」が必要となります。これらは、その業務の成果を定義した上で、理想的な標準プロセスを検討・決定する作業です。個々人が属人的に業務を遂行している状態とは異なり、チームや組織全体でコンセンサスを取りながらプロセスを決定する以上、実際に標準的な内容が決まるまでに時間を要します。

継続的な改善が必要となる

冒頭も述べたとおりプロセスマネジメントの根幹を支える要素の一つに「継続的な改善」が挙げられます。つまり、一度、標準的なプロセスを策定して満足してしまってはプロセスマネジメントが正しく実施されていない状態となります。継続的な改善は組織として仕組み化・習慣化されれば理想的ですが、最初のうちは意識的に取り組む必要があります。

プロセスマネジメントに取り組む流れ

プロセスマネジメントの流れを表した図です
プロセスマネジメントの流れ

プロセスマネジメントにはいくつかの考え方がありますが、基本的には上記の流れに沿って実施していきます。これは既に属人的に対応している業務に対しても、これから新規に業務プロセスを設計する業務でも適用することが可能です。要素を順番にご説明しますのでご確認ください。

1. 設計

設計フェーズでは「業務の要件」について整理します。洗い出すべき主な要素は以下の通りです。

  • 業務のゴール: 何を達成するための作業なのか
  • 作業のKGI/KPI: 作業の質や結果を評価する指標は何か
  • メンバー: 作業者・管理者と大まかな役割分担
  • 納期: 求められる処理・対応のスピードや期間
  • 品質: 求められるアウトプットの品質
  • 想定されるリスク: 業務において発生しうるリスクとリカバリープラン

上記の要素を定義することで、業務の目的やリソース、成約条件が明らかになります。

2. モデル化

具体的な標準化された業務プロセスを策定するフェーズです。ここでは見える化、標準化を実現します。参考となるアウトプットとして3種類をご紹介します。それぞれの特徴から、必要に応じて組み合わせてご活用ください。

フローチャート

フローチャート(業務フロー図/業務プロセス図)のサンプル画像です。
フローチャートのサンプル画像

フローチャートは業務全体の流れを俯瞰的に表現することを得意としています。抽象度はやや高いですが、比較的短期間で作成が可能で、業務に精通していないメンバーでも業務全体を理解することが可能です。フローチャートを活用することで以下の要素をビジュアルに表現できます。

  • 特定の業務フローを構成する作業やステップの要素
  • 各ステップで実施される作業内容の簡易な説明
  • 作業の前後関係および、どのような流れでプロセスが進むか
  • 作業ごとの担当部署、担当者

フローチャートの作成方法や詳細について解説した記事を合わせてご参考ください。

作業手順書

作業手順書のサンプル画像です
作業手順書のサンプル

作業手順書とは、社内における特定の業務の手順を具体的に書き表したものです。フローチャートよりも詳細な表現が可能ですが、作成の難易度はやや高く、完成までに時間を要します。しかし作成することで業務について手順ごとの作業詳細がわかるため、業務プロセスの認識合わせだけなく、簡易なマニュアルとしても活用することが可能です。作業手順書の作成方法や詳細について解説した記事も合わせてご参照ください。

マニュアル

作業マニュアルのサンプル画像です。
マニュアル サンプル

作業マニュアルは作業手順、作業内容を最も細かい粒度で表したドキュメントです。業務経験が浅いメンバーや、新人でもミスなく作業ができるように解説されています。作業手順書で代替されるケースもありますが、マニュアルは図や画像などを用いてよりビジュアルに表現することが一般的です。もっともわかりやすいドキュメントである反面、作成に時間がかかるかつ、作成するためには当然、業務に対する深い理解が必要です。事務作業に特化した具体的なマニュアルの作成方法や詳細について解説した記事も合わせてご参考ください。

3.実行

実行フェーズでは設計した業務フロー、業務プロセスに従って実際に作業を進めていきます。もし、新規に立ち上げた業務プロセスでメンバーに経験が無い業務は、勉強会やレクチャー、模擬演習・デモンストレーションなどを通じて業務に慣れることをおすすめします。特にプロセスを変更した直後は手順の誤りや疑問点が発生しやすいので、業務量を抑える・フォロー体制を分厚くするなどのリカバリーの準備を怠らないようにしましょう。

4. 監視

監視ではリアルタイムでの業務の進行状況の把握とパフォーマンスの管理を行います。作業手順が多いものや並行して複数件発生するような業務の場合は進行管理表を作成することをおすすめします。既に業務プロセスは全体で標準化されているため、ぞれぞれの業務がどこまで進んでいるのか認識を合わせる作業は容易に行えるはずです。

また、もう一歩踏み込む場合は担当者ごとに各作業にどれくらいの時間がかかっているか記録してもらいましょう。これは作業毎に実施する必要はなく、何回かプロセスを運用した後に感覚値での記載で問題ありません。

5. 最適化

監視フェーズで計測したパフォーマンスやメンバーの所感などから再度、プロセスにおける改善点を探します。意識して探すべきはボトルネックとなる部分です。ボトルネックとは業務全体の流れの中で、もっとも遅れや停滞をもたらす部分を指した言葉です。

ボトルネックのイメージ画像です。
ボトルネック イメージ

ボトルネックを解消することで、そのプロセス全体の生産性を向上させることができます。ボトルネックの詳細について解説した記事も合わせてご参考ください。

プロセスマネジメントを成功させるポイント

「モデル化」における業務標準化を重点的に

プロセスマネジメントに取り組むうえで一つの難関となる部分が2番目のステップ「モデル化」、つまり業務の標準化です。既存の業務をプロセスマネジメントに乗せて管理するために、標準化・見える化は避けては通れません。この部分をおろそかにしてしまうと後続のフェーズで実施するパフォーマンスの計測や評価が実施できなくなってしまいます。まずは、組織全体の基準となるモデルプロセスを確立させることを意識してみてください。

メンバーの理解を得てからプロセスマネジメントに取り組む

プロセスマネジメントは現場の業務プロセスを管理する活動です。そのため、実際に業務に取り組むメンバーの協力が必要不可欠となります。よくある失敗の原因として、トップダウンでプロセスマネジメントに取り組もうとしたものの、現場メンバーの理解と協力を十分に得ることができず、途中で頓挫してしまうことが挙げらます。マネージャーやリーダーは、メンバーに対してプロセスマネジメントの効果や重要性、取り組む目的を明確に説明し、理解を得てから着手するようにしましょう。また、作業メンバーは当然既存の作業を対応するなかでプロセスマネジメントに取り組むため、プロセスマネジメントの施策が業務時間を圧迫するリスクがあることも念頭に置きましょう。

最初から完璧を意識しすぎない

業務のモデル化において、完璧を目指す必要はありません。最初にあまりに完璧なプロセス構築を目指してしまうあまり、なかなか標準的なプロセスが決まらないことがあります。既に述べたようにプロセスマネジメントは何度も改善のプロセスを回していきますので、その過程の中で改善がされていけば問題ありません。まあり神経質になりすぎず、クリティカルな失敗を生まない範囲でチャンレンジしてみてください。

継続性が肝であることを理解する

プロセスマネジメントは改善を継続しなければプロセスマネジメントと呼ぶことはできません。なかなか最初は難しいかもしれませんが、定期的に現行のプロセスを見直し、改善点がないかを確認してください。プロセスの改善についてもあまり大げさに取り組む必要はありません。もちろん業務内容にもよりますが、例えば、2週間に1回メンバー全員で業務パフォーマンスをチェックして、改善点をディスカッションし、1つだけ改善項目を決めて次の2週間で取り組む等、小さく改善のサイクルを回すことも可能です。どんなに小さい形でも、まずは繰り返すことを意識して、取り組んでみてください。

プロセスマネジメントツール

プロセスマネジメントをクラウドサービスで実施することも可能です。弊社が提供しているサツール「octpath」は、業務プロセス単位で手順や進行状況の管理が可能なサービスです。
サービスサイト: https://octpath.com/

octpathのサービス納品プロセスに関わるイメージ画像です
プロセスマネジメントツール 『octpath』

octpathに沿って作業することで誰でも同じように業務を進行できるため、業務の標準化により教育や引き継ぎのコストを削減できます。また、ミスや漏れを未然に防止できるため、ダブルチェックや作業確認などの進捗管理にかかるコストも削減できます。
octpathを活用いただくことで、今回ご紹介したプロセスマネジメントの一連の流れを簡単に実践できます。ぜひ、チェックしてみてください。

さいごに

プロセスマネジメントについて、ご理解いただけましたでしょうか。ぜひ、ご自身の業務でも生産性向上のために取り組んでみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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