業務設計とは業務全体を最適化できるよう、業務フローを作成・修正することです。
この記事では、業務設計の概要から具体的な取り組み方まで記載しています。初心者でも取り組みやすいよう具体的に解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
業務設計とは?
業務設計とは端的に言うと業務全体を最適化できるよう、業務フローを作成・修正することです。業務を作業ではなくフローとして捉え、可視化・最適化することで、業務全体としての無駄をなくし効率的な業務プロセスをつくることができます。
業務設計は何かしらの業務改善施策の一部として取り組まれます。施策に取り組む前段階として業務設計を行うことで、フローが可視化・最適化され、その結果をもとに施策を検討・着手することが可能になります。したがって、既存の業務フローの修正を指す場合もあれば、新規に取り組む業務フローの作成を指す場合もあります。業務が円滑にミスなく進むようにするあためにも、適切な業務設計が不可欠になります。
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業務設計の目的
業務設計は、業務全体として最適化された効率的なフローを構築することが目的となります。
業務は事業やサービスの状況に合わせて少しずつ変化していくはずですが、日頃は目の前の対応に追われ、業務全体の管理に手が回りづらくなりがちです。そのまま業務を整理せずにいると、「3M」と呼ばれる事態に陥る恐れがあります。3Mとはムリ・ムダ・ムラの頭文字をとった言葉で、以下の状況を表します。
- ムリ: 作業量の超過・人員不足、短納期・過剰な品質
- ムダ: 不要な作業・人員を過剰に投下している・設備やツールが活用できていない
- ムラ: 作業量の不安定さ・作業人員の不安定さ
また、3Mに付随して、作業が属人化する、コミュニケーションコストが増大する、品質にばらつきが生じる、などの業務課題も発生しやすくなります。
業務設計に取り組むことで効率的な業務フローを構築することが可能になり、結果として利益の増大や競合優位性の確立にも繋がります。
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業務設計で重要な点
業務設計においてはQCDを意識することが非常に重要です。「QCD」は業務のマネジメントや生産性の管理に活用される指標でQCDそれぞれの文字が「Q: Quality(品質)」「C: Cost(費用)」「D: Delivery(納期)」の頭文字となっています。
また、QCDの考え方において重要なポイントは、これらの3要素はトレードオフ(一つの要素を改善するために別の要素を犠牲にしなければならない)関係にあるということです。
設計の対象となっている業務において、どの要素を最も重視すべきなのか、事前に優先順位を明らかにしておくことで、パフォーマンスを最大化し目標を達成することに繋がります。
QCDの詳細については、QCDを活用した業務改善のポイントをまとめた記事を参考にしてみてください。
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取り組みの流れと手順
次に、業務設計の取り組み方法についてご紹介します。冒頭で「業務設計は新規の業務フロー作成にも既存の業務の改善にも利用可能である」ことを述べましたが、今回は既存の業務を改善するパターンに絞って解説します。
ざっくりまとめると以下の5つのステップで取り組むことができます。
それぞれのステップで取り組む内容について具体的にご紹介します。
1. 現行業務の情報収集
まずは、改善点を見つけるために現行業務に関わる情報を収集します。適切な課題と改善点を見つけるためには業務の正しい理解が必要なので、初歩的ですが非常に重要なステップです。業務設計の対象範囲の中で、主に以下の情報を明らかにしていきます。
- すべての業務とフロー
- 各作業の手順やチェックポイント
- 各作業の担当者
- 各作業の開始タイミングと期限
- 使用しているツールやシステム、フォルダ
既にマニュアルやフロー図などの既存のツールがある場合は、それらを元に情報収集しても構いませんが、業務を具体的に把握するためには作業担当者に直接ヒアリングを行うことをお勧めします。作業者は管理者から見えていない範囲で、細かい作業や小さなエラー、トラブルの処理を行なっており、ツールの確認だけでは細かな作業まで見えないリスクがあるためです。
業務ヒアリングの方法について記載している記事もありますので、参考にしてみてください。
2. 課題点の洗い出し
業務情報が明らかになったら、課題点とその原因の洗い出しを行います。既に課題感がある場合はその課題が発生している原因を深掘りし、課題が明確でない場合は以下のような観点で業務を見つめ直し、非効率な部分を探し出してから原因を明らかにしていきます。
- ミスや遅れが毎度発生している業務はないか
- 業務の開始から終了までに時間がかかりすぎていないか
- 担当者・担当部署は適切か
- 担当者どうしのコミュニケーションは円滑に進められているか
- 業務と業務の隙間に非効率な作業が隠れていないか
日頃取り組んでいる業務では気がつかないだけで実は非効率な作業が隠れているケースも少なくありません。業務全体を俯瞰的に捉え、非効率な箇所はないか確認してみてください。
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3. 改善案の検討
課題点が明確になったら、具体的な改善案を検討します。業務内容も課題も企業によって様々なため、効率化のためのベストプラクティスも異なります。目的とゴールを意識しながら、自社にとって最適なフローを検討してみてください。
業務設計では業務の流れや体制自体の改善にフォーカスされがちですが、業務の見直しを機にペーパーレス化やクラウドサービスの導入を行うケースもあります。業務効率化のための手法やツールについて解説している記事もありますので、合わせて参考にしてください。
ここではなるべく多くの課題を解決できる改善案を立てることがポイントです。一つの課題に対して一つの改善策を立てていくよりもレバレッジが効き、業務設計の取り組み自体を効率化できるためです。各作業や課題を単体で捉えるのではなく、業務全体としてどうしたら良いのか、フローを俯瞰的に捉えて検討することが大切です。
4. 業務の再設計
改善案をもとに、既存の業務フローを作り変えていきます。どんな業務も複数の作業の繋ぎ合わせで進行しているため、一部の業務や体制の変更がほかの業務に影響しないか、影響度やリスクを明らかにしながら検討する必要があります。また、システムやベンダーの切り替えが必要な場合には、情報の移行方法やタイミングも検討しておきます。
また、業務設計後のアウトプットは作業手順書やフローチャートにまとめることが一般的です。これらは記録として残せるだけでなく、作業者へ新しいフローを伝える際にも利用できます。作業手順まで細かく管理したい場合は手順書、流れをわかりやすくまとめたい場合にはフローチャートが適していますので、業務の特徴と目的に合わせて検討してみてください。
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5. 実行
業務設計が完了したら、計画に沿って新しい業務を実行していきます。
このフェーズでは通常の業務に影響が出ないよう、関係するメンバーの巻き込み方と業務切り替えのタイミングに注意する必要があります。例えば以下のように準備をしていくことで、スムーズに実行に移すことができます。
- 課題や改善案の検討段階から、業務変更の可能性があることをメンバーに伝えておく
- 一時的に既存の進行方法と改善案を同時進行し、問題がなければ順次切り替える
- 一部の部署やチームに限定して運用し、問題がないと判断できたら範囲を拡大する
3つ目に関しては弊社が業務改善のサポートしている企業様やBPMツールのご提供先企業でもよく取り入れられる方法です。ツール導入や施策の実施をいくつかの段階に分け、小さい範囲で問題がないことが分かってから規模を拡大していくことで、スムーズに運用の切り替えを行うことができます。
また、変更箇所が多い場合には優先順位をつけ、実行しやすいもの・効果の出やすいものから取り組んでいくことをお勧めします。難易度の低いものから実施し、ある程度肌感を掴んでから他の課題へ展開していきます。
おまけ|分析と修正
もし必要な場合には、業務修正後の実行結果をもとに業務の修正を行います。期待していた効果が得られなかった場合は「改善策の検討」に戻り、別の手法で課題解決に取り組みます。
業務改善の取り組みに慣れていたり余程緻密に設計ができていない限り、一度で完璧な業務フローを構築することは難しいものです。また、企業によって最適な手法は異なるため、他社事例の見よう見真似で取り組むだけではうまくいかないことも多くあります。自社にとって最適な方法は何かを考え、根気強く取り組み続けることが大切です。
番外編|外部のツールやコンサルタントに依頼する方法
上の項目では自社で業務設計を行う際の流れをご紹介しましたが、実際には外部のツールを利用したり、コンサルタントに依頼したりするケースも多くあります。特に、以下のように自社で取り組むことが難しい場合です。
- スキル不足: 自社に業務設計ができる人材がいない
- リソース不足: 業務に追われており、業務設計に時間を割くことができない
- メンバーの指向性: 保守的な人材が多いため、外部から客観的な意見を取り入れたい
それぞれにメリットデメリットがありますので、自社のスキルやリソース、予算から無理なく進められる手法を検討してみてください。
ツールを利用する場合
業務設計でも、クラウドサービスを利用できます。大きくは、業種業界に特化したシステムを導入することでオペレーションを整えるパターンと、業務設計後の情報管理の部分でフローチャートやマニュアルの管理ツールを利用するパターンの大きく二つです。
最近ではツールの提供企業が導入サポートを行なっているケースもほとんどです。ツールの目星が付いたら、お問い合わせをしてみることをお勧めします。
コンサルタントに依頼する場合
コンサルティング業務の中でも、業務改善の取り組みの一環として業務設計を請け負っているケースも多くあります。業務設計のプロフェッショナルに依頼できるため、自社で行う場合と比較して失敗が少なく、より効率的な業務の構築に繋がりやすい点がメリットです。
コンサルティングは企業によって得意としている分野やサポート範囲が異なります。現場へのヒアリングや手順書の作成など具体的に手を動かすケースもあれば、業務情報を提供した上で提案のみを行うケースもあります。依頼したい内容を明確にした上で、各企業に問い合わせをし、複数社を比較検討してから依頼先を決めることをお勧めします。
業務設計のポイント
業務設計を行う際、以下の点に注意をしながら進めてください。
ゼロから最適解を考える
既に手順やフローが決まっている業務は、慣れもあり、どうしても既存の運用方法が取り組みやすく感じてしまいます。慣れによって対応がしやすいことと、業務が効率的なためにスムーズに進行できることは異なりますので、現状の進め方に引っ張られ過ぎずゼロからフローを考えるようにしましょう。
前後の業務の繋がりを意識する
当然ではありますが、業務設計では業務単位ではなくフロー全体を通して改善案を検討する必要があります。業務をそれぞれ単独で捉えるのではなく、前後の業務や全体の流れを意識して、チームや部署を跨いで改善点を探すことがポイントになります。
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目的とゴールを明確にしてから取り組む
何事にも言えることですが、業務設計においても、取り組みの目的とゴールを確認してから実行に移しましょう。目指すべきポイントが明確になっていないと施策自体が曖昧になり、十分な効果が得られないためです。特に冒頭で記載したQCDの関係性を意識して、どの要素を最重要視するのか認識をあわせておきましょう。また、達成状況を的確に判断するため、ゴールは可能な限り定量的に設定することをお勧めします。例えばコストの削減率や、利益率、ミスや遅れの発生数などです。
終わりに
業務設計は少し取り組むハードルが高く感じますが、円滑な業務進行をするには欠かせないアクションです。自社で無理に取り組む必要もなくプロフェッショナルに依頼する方法もありますので、ぜひ、ご検討ください。