どんな企業でも確実に発生し、且つ削減しづらいのが人件費ですが、反対に一度削減できると大きなインパクトをもたらす費用でもあります。本記事では主にビジネスシーンでの人件費の削減方法とポイントについて解説しています。

人件費を削減することの重要性

営利目的で経営される企業にとって、人件費の削減は言うまでもなく重要な事項です。その上で、なぜ人件費を削減すべきなのかをおさらいします。

他の諸費用よりも削減できた際のインパクトが大きい

人件費は半永久的に発生する固定費ですが、オフィスの利用料などその他の固定費と比べコントロールがしやすい費用でもあります。一度人員を増やすと削減するのが難しいものの、反対に、一時的に発生する諸経費や細かい雑費と比べ削減できた際のインパクトも絶大です。

先送りにしていた事項に充当できる

人件費をカットすることで、その他の関連経費も同時に削減することができます。例えば従業員が使用するコピー紙代や電気・光熱費、教育やセミナー参加費用などです。出費を抑えることができれば、これまで手が回せなかった重要事項に費用を割けるようになり、先送りにしていた施策や企画に着手できるようになります。

人件費を削減するまでの流れ

人件費を削減するには、大まかに以下のステップで見直しと施策の検討を行ってください。

人件費を削減するまでの流れをまとめた図です。

1. 現状の人件費を確認する

まずは、どれほどの人件費を削減すべきかを確認するため現状のコストを把握しましょう。人件費には給与はもちろん、その他福利厚生費、役員報酬、退職金などが含まれます。
適切な人件費のボリュームはビジネスモデルや事業の戦略によって左右されるため、一概には言えませんが、売上に対する人件費の割合を示す「人件費率」の目安は、飲食業界では35~40%、IT業界では50%前後、その他サービス業であれば60%以上、とされています。以下の式で計算できますので、自社の人件費を計算した後に一度確認してみてください。

  • 人件費率=(人件費÷売上)×100

2. 人件費の発生理由を明確にする

次に、現状の人件費が高額になっている理由を明らかにします。給与水準や制度が不適当な場合もあれば、業務が非効率なために残業が発生している場合もあり、状況によってとるべき施策が異なるためです。人件費に関わる各種制度や業務状況を詳細に確認しましょう。もし実態が分からない場合には、担当者にヒアリングをしながら進めるのがおすすめです。

3. 施策を検討する

理由が明らかになったら、その要因を解決するための施策を検討します。解雇やリストラ、給与カットなどの直接的な施策ももちろん検討すべきですが、人件費を削減するための方法はそれだけではありません。特に業務が非効率である場合は、業務に余計な労力と時間がかかってしまい、残業や休日出勤の発生にも繋がり、人件費がかさんでしまう原因となります。
以下では例として、業務の非効率性を改善するための施策をご紹介します。

業務が属人化している: マニュアルを作成・整備する

属人化によって人件費が圧迫されているケースもあります。一部のメンバーを専任担当として高給で雇用している場合や、反対に業務を知らないメンバーが予定以上に時間とコストをかけて取り組んでいる場合、研修やチェックで上司の時間が使われている場合などです。属人化を解消できれば、業務にかける時間もクオリティも一定に保つことができます。
属人化を解消するための方法としては、業務手順書の作成がおすすめです。業務手順書の作成方法を記載している記事を参考にしてみてください。

作業手順書のサンプル画像です。

手作業による手間: クラウドサービスやツールを利用する

人が手作業で行なっていた業務を、クラウドサービスに置き換える方法です。理想的には自動化によって人員が一切いらない状況をつくることが最も人件費削減につながりますが、自動化の前段階として、デジタル化を用いて業務の進行・管理を効率化する方法もあります。例えば紙のチェックリストや稟議書をクラウド上に置き換えることで、わざわざコミュニケーションをとったり出社する手間を減らすことができます。チームで利用できるタスク管理ツールを紹介している記事や、ペーパーレスについて説明している記事も参考にしてください。

時間の使い方に課題がある: 営業時間や取り組みの方法を見直す

例えば打ち合わせやチームでのミーティングが日中に詰まっていると、その他の作業を進行するために残業せざるを得なくなってしまいます。本来は必要のない会議を減らす、議論が必要な内容のみに限定しミーティング時間を半分に短縮するなどして、時間の使い方を工夫することもひとつの方法です。
また、本メディアで取り上げているポモドーロテクニックを含め、時間の使い方については個人で取り組める方法もいくつかあります。個々の生産性を向上できるよう、改善策を紹介してみるのもおすすめです。

定常業務に時間を割いている: 業務をアウトソーシングする

アウトソーシングは請負企業が複数企業の業務をまとめて処理することでコストメリットを実現しています。自社で独自に対応するよりもアウトソーシングした方がコストが安く済む場合が多く、対応するメンバーを自社で抱えなくて済むことで、付随して発生する設備や諸経費も削減できます。本来取り組むべき重要な業務が、手順の決まっている簡単な業務に圧迫されているようであれば、アウトソーシングも検討してみてください。

4.実行し、振り返りを行う

施策に実際に取り組み、定期的に費用が削減できているかを確認してください。振り返りのタイミングは、削減したい人件費のボリュームや施策の内容に合わせて調整してください。
また、人件費は採用や退職によっても変動するため、継続的に見直すことが必要です。

人件費削減を成功させるためのポイント

解雇やコストカットなどの安易な方法に逃げない

解雇やリストラ、給与カットなどのような直接的な施策は、取り組みの内容が分かりやすく結果も明確ではあるものの、無思考に取り組むと大きなリスクが生じます。給与の削減によって離職の可能性を高めたり、解雇やリストラにより属人化していた業務が停滞してしまったり、個人がクライアントを抱えている場合には顧客の離脱に繋がったりするためです。簡単だからと実行せず、他の施策に取り組んだ上での最終手段として捉えておきましょう。

収支が見合うかを事前に確認する

言うまでもありませんが、人件費を削減するために実施した施策によって、削減できた金額よりもコストが上回ってしまうことのないよう注意してください。例えば業務効率を上げるために一部の社員を解雇し自動化ツールを導入する場合、ツールの開発費や導入コスト、利用料、メンテナンス料がかかってしまい結果的にプラマイゼロになってしまう、などです。削減費用と施策の実行にかかる費用を事前に必ず確認しましょう。

定期的に見直し続ける

先述している通り、人件費は採用や離職により変動していきます。企業規模が大きく業務委託やアルバイトのメンバーがいる場合には特に、短期間でも雇用状況が変わります。予算管理や締めの時期以外でも、定期的に確認しましょう。その際、費用のみを見て判断するのではなく、業務の状況も合わせて確認するようにしてください。

おわりに

人件費の削減というと従業員の視点ではマイナスなイメージを持たれがちですが、今回ご紹介したように、業務を効率化することで実現する方法もあります。ぜひ自社の人件費を見直し、効率化に取り組んでみてください。

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