ペーパーレス化は名前の通り「業務上で用いられる紙の使用を減らすための取り組み」を指します。本記事では業務効率化のための1つの施策として、ペーパーレス化の概要や効果が出やすい業務の特徴、検討時のポイントについてご紹介します。

ペーパーレス化とは|基本をおさらい

言葉の意味

冒頭に述べた通り、ペーパーレス化とは「紙の使用を減らすための取り組み」のことで、ビジネスシーンでは特にファイルの電子化やデジタルデータの使用など、“クラウドサービスを用いることによる”紙の使用を減らすための取り組みを指すことが多いです。

ペーパーレス化の目的

広い視点で見ると、紙資源の無駄使いを減らすことによる環境保全も目的になりますが、ビジネスシーンでのペーパーレス化の目的は「業務の効率化」です。具体的なメリットは後述しますが、ペーパーレス化によって用紙代や印刷・インク代が減り、大幅なコストカットが実現できます。また、クラウドの使用によって業務進行がスムーズになることで、生産性の向上にも繋がります。よくある間違いですが「紙をなくすこと」自体が目的にならないよう注意してください。

国もペーパーレス化を推進している

政府はペーパーレス化を約10年前から提唱しており、2019年から施行されている「働き方改革」でもペーパーレス化について触れられています。ペーパーレス化は国も力を入れて取り組むほど、重要な取り組みの1つです。

ペーパーレス化の5つのメリット

ペーパーレス化は業務効率化のために取り入れられる手法です。以下に、ペーパーレス化しクラウド管理に切り替えた場合の具体的な効果についてご説明します。

コストを削減できる

オフィスの中では用紙代や印刷代、プリンタ使用料、インク代、シュレッダー代、郵送代など、紙に関わる様々な費用が発生しています。ペーパーレス化することでそれらの消耗品代が削減され、大幅にコストを削減することができます。

また金銭的なコストだけでなく、時間的なコストの削減にも繋がります。クラウド上での資料共有や電子印鑑を取り入れることで、押印のためだけに出社したり、資料を渡すためだけに取引先に出向いたりする必要がなくなります。

セキュリティの強化

ITやクラウドに関してセキュリティ面での懸念が述べられることがありますが、物理的な紙の使用でも同様の問題が存在します。紛失の可能性があったり、閲覧権限をかけられないため誰にでも見られてしまったり、持ち出しによる情報漏洩のリスクがあるためです。クラウド管理に切り替えることで権限設定やアクセス制限が可能になり、むしろセキュリティを強化することができます。

複数人が、場所や時間を問わず同じものを閲覧できる

当然ですが紙には物理的な制限があるため、その紙のある場所でしか閲覧できません。また、複数人で共有したい場合には人数分を印刷して配布する必要があります。一方、クラウド上でファイルを共有しておけば、インターネットに接続できる場所であればどこにいてもデータを閲覧でき、ひとつのファイルを複数名で同時に編集することも可能です。

保管が容易になり、検索性が向上

ほとんどのITツールには検索機能がついているので、ファイルのタイトルやドキュメントに書いてある内容を検索すれば、すぐに必要な情報を取り出すことができます。いちいち資料を探して全体に目を通す必要はありません。また、フォルダの移動や削除も容易なので、データの整理整頓も簡単になります。

更新や変更が容易になる

例えば紙のマニュアルを使用している場合、業務の一部を変更したときにはすべてのマニュアルを破棄し印刷し直す手間が発生します。デジタルデータとして保管しておけばいつでも更新でき、即座に変更を反映することができるので、マニュアルの形骸化や業務の属人化を防ぐのにも有効です。

デメリットと思われがちな項目3つ

次に、ペーパーレス化のデメリットとしてよくあげられる項目を3つご紹介します。ただ、一見デメリットと考えられるものでも紙の運用と比較すると効果的なものもありますので、ペーパーレスと比較した際の違いを意識しながらご確認ください。

システム障害の影響をうける

web上のサービスは、システムに問題が生じた場合に利用できなくなることがあります。したがって業務に必要な書類をweb上で保存していた場合、一時的に業務もストップしてしまう可能性があります。

しかし紙を使用している場合でも、見られる場所が限定されていたり紛失リスクがあったりするため、リスクがあることは変わりません。システム障害が発生する確率を考えると、大きなデメリットとは言えません。

導入コストがかかる

紙で管理していたものをすべてデジタル化するには、切り替えコストがかかります。紙で蓄積していたデータの移行作業をしたり、ネット接続できる端末を従業員分揃えたり、サービスの使用方法を一から教えたりする必要があるためです。

ただ、これらのコストは一時的なものです。その後の作業進行や管理が楽になることを考えれば費用対効果はかなり高いと言えます。また、今後はあらゆるものがデジタル化されていくため、可能な限り早く切り替えた方が後々のコストを下げることができます。

閲覧するために端末やデバイスが必要

デジタルデータの場合、紙のようにデータを単体で利用することはできず、何かしらのデバイス上で閲覧することになります。したがって、従業員それぞれに端末を配布する必要があります。

こちらも、最近はPCだけでなくスマートフォンやタブレット上で利用できるwebサービスが主流になってきているため、大掛かりな準備は必要なくなってきています。社用スマートフォンを配布していない場合には、BYOD(私用のデバイスをビジネスでも使用すること)も検討してみてください。

ペーパーレス化の取り組み事例

メーカーの稟議・承認プロセス

こちらは弊社が過去に取り組んだ事例です。某メーカーの業務改善のため、稟議書類をペーパーレス化するプロジェクトに取り組みました。紙で行っていた稟議書の申請・承認フローを稟議システムに置き換えてIT化しました。また、ツール導入にあたって必要な承認プロセスの見直しや業務整理も行いました。
結果、保管性が向上しただけでなく、承認プロセス自体がシンプルになったことで、業務の進行スピードが大幅に改善しました。

ペーパーレス化する際はただ紙の利用をストップするのではなく、業務プロセス全体の整理から取り組むのが成功のポイントです。ビジネスプロセスマネジメントの観点から業務改善についてご紹介している記事もありますので、参考にしてみてください。

自治体での会議資料のデータ化

長野県松本市ではペーパーレス化のため電子データの活用に取り組んでいます。これまでは会議で紙の資料を使用していましたが、資料を電子データに切り替え、参加するメンバーに配布したタブレットでそれぞれ確認してもらう体制に切り替えました。
参加メンバーが資料を閲覧しやすくなったというだけではなく、資料印刷前の確認と修正が容易になったことや製本の手間がいらなくなったことから、資料作成の業務も効率化することができました。

地方自治体でのペーパーレス化の取り組みは他にもありますので、参考にしてください。

ペーパーレス化に向いている業務の特徴

今後、あらゆる業務がどんどんペーパーレス化されていくかと思いますが、特に効果の出やすい業務の特徴についてご紹介します。

リアルタイムで更新する必要のあるもの

メリットでお伝えしたように、デジタルデータ化やクラウド管理の良さは、気軽に編集できることと即座に変更を反映できることにあります。業務の進行管理や作業記録のチェックなどリアルタイム性が求められる作業は、ペーパーレスに向いています。

申請・承認業務

稟議書のクラウド化はかなり一般的になっており、申請・承認に特化したwebサービスも多数存在します。したがって自社に合ったツールが選びやすく、また“最後にチェックをするだけ”という使い方からしても切り替えハードルが比較的低いため、ペーパーレス化しやすい業務と言えます。

複数名が他拠点で閲覧する必要があるもの

業務マニュアルや会議で使用する資料など、複数のメンバーが他の場所から閲覧する必要のあるものも、ペーパーレス化の効果が表れやすいです。特に昨今では取引先とオンラインで関わる機会も増えています。先方がいつでも資料を見られる状態にしておくことで、顧客満足度の向上にも繋がります。

複数名で同時編集する必要があるもの

閲覧と合わせて、同時編集が必要な作業にも効果的です。例えば営業チームで使用する顧客情報管理シートや、業務のチェックリストなどです。リアルタイムのタスク管理も可能なので、管理者の負担も減らすことができます。

書類の種類によっては法律や規約の関係上ペーパーレス化できないこともあるかと思いますので、切り替えが可能な業務がないか確認してみてください。

ペーパーレス化の進め方

ペーパーレス化に取り組むことを検討している方を対象に、ペーパーレス化を実現するためのステップの概要をご説明します。以下の4つのステップで進めます。

ペーパーレス化の進め方のイメージ画像です
ペーパーレスを実現するまでの流れ

①現状のムダを把握する

まずはペーパーレス化が可能な箇所を特定するため、業務の現状を把握します。用紙代と合わせて印刷代やインク代なども含め、どの部署でどのくらい費用がかかっているのかを洗い出し、どれくらいムダが隠れているかを確認します。
また、合わせてペーパーレス化の目的も忘れずに確認してください。コストを削減したいのか、場所を空けたいのか、セキュリティを強化したいのかなど、目的によってペーパーレス化すべき業務が変わってくるためです。

②ペーパーレス化の対象業務を選定する

一度に全業務を変更すると従業員が対応できずトラブルやミスの発生に繋がりやすいため、まずは小さく試験的に実行し、適切な進め方を確認しながら実践するのがおすすめです。したがって、①で洗い出した業務の中から、まずは取り組みやすい業務・早急に改善すべき業務をいくつか選びます。

③紙の削減方法を検討する

一口にペーパーレスと言っても、取り組みには種類があります。②で選んだ業務をどのようにペーパーレス化するのか、業務の特性に合わせて検討してみてください。
例えば申請承認業務の場合はクラウド管理ツールを導入する、マニュアルが分散している作業では複数枚の紙を1枚にまとめ使用量を減らす、などです。

クラウドサービスを導入してペーパーレス化する場合には、複数のサービスを比較検討するのがおすすめです。サービスの細かな仕様も現場メンバーの使いやすさに影響するため、うまくペーパーレスを実現するために最適なツールを探してみてください。

④実践して効果を振り返る

実際に対象業務のペーパーレス化に取り組み、結果を振り返ります。業務を変更しただけでは意味がないので、当初立てたペーパーレスの目的がきちんと果たされているのかを確認してください。
ペーパーレス化してから1ヶ月ほど経てば、効果を実感できるかと思います。問題なく実行できていたら、同様の手法で他の業務にも拡大してください。

ペーパーレス化におすすめのツール

最後に、ペーパーレス化に取り組むためにおすすめのクラウドサービスをご紹介します。

SmartHR|人事労務手続き

サービスサイト: https://smarthr.jp/

smartHRのサービス画像です

弊社でも活用しているツールです。TVCMも放映しているのでご存知の方が多いと思いますが、SmartHRは人事・労務に関する手続きをクラウド上で行うことで、業務の生産性向上を実現するツールです。紙よりもスムーズに各種申請が済むだけでなく、従業員が各々のデバイスで同時に手続きを進められることで人事担当者の業務も効率化できます。

octpath|フロー形式で業務を管理できるツール

サービスサイト: https://octpath.com/

octpathのサービス納品プロセスに関わるイメージ画像です
octpathのサービス画像

業務をフロー形式で管理できるサービスです。手順やチェック項目もまとめて管理できるため、octpathに従うことで誰でも同じように業務を進行することができます。また、作業漏れがあった場合のアラートや期限遅れのリマインド、自動条件分岐などにより、ダブルチェックや確認連絡、修正依頼などの管理コスト自体を削減できます。

Dropbox|ファイルや資料の保存・共有

サービスサイト: https://www.dropbox.com/ja

dropboxのサービス画像です。

業務に必要なファイルやドキュメントをクラウド上に保存できるサービスで、チーム内で簡単に共有でき、検索して必要なファイルをすぐに取り出すことができます。権限設定やデータ容量の管理も簡単なので、社内サーバーに保管するより効率的にデータ管理できます。

クラウドサイン|契約書の電子署名・保管

サービスサイト: https://www.cloudsign.jp/

クラウドサインのイメージ画像です

既に合意済みの契約書に電子署名を施し、それらの書類の保管と管理ができるクラウドサービスです。本人確認やファイルの暗号化も可能なので、機密情報の保護にも役立ちます。

Money Forward|請求書の作成・管理

サービスサイト: https://biz.moneyforward.com/invoice

moneyforwardのサービス画像です

請求書の作成・郵送・管理が可能なクラウドサービスです。請求書そのもののペーパーレス化だけではなく、請求管理そのものをクラウド化できるのがおすすめポイントです。紙の請求書とExcelなどの表計算ソフトでの管理をしている場合は大幅なコスト削減が見込めます。

おわりに

デジタル化の現代においては、今後さらにペーパーレス化の必要性が高まっていきます。DXと言われるように、今後はビジネスサイドのプロセスごとデジタル化するための流れも高まっていきます。ぜひ記事を参考にペーパーレス化を検討してください。

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