業務改善や効率化に向けて取り組む際には、事前に業務フローの可視化を行う必要があります。この記事では“業務改善、特にBPM(ビジネスプロセスマネジメント)に役立てるための業務の可視化”について、取り組みの意義から方法まで具体的に解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
また、BPMの概要についての記事もありますので、BPMのイメージがつかない方は以下の記事を先にご確認ください。
おさらい|業務フローの可視化とは
そもそも業務フローの可視化は、作業全体の流れを整理した上で誰にでもわかりやすいよう何某かのアウトプットを作成する取り組みです。BPMを含む現行業務の効率化に向けた取り組みの中で、適切な課題と解決策を見つけるための大切なステップのひとつです。
以下のような状態であれば「業務フローの可視化ができている」理想的な状態といえます。
- 業務の流れが、何某かのアウトプットにまとまっている
- 業務進行のために必要な情報(手順や目的、管理方法等)が明らかになっている
- その上で、業務に関わるメンバー全員が業務について正しく理解している
反対に、属人化しており業務に関する詳細がわからない、作業内容がアウトプットにまとめられていない、という場合はうまく可視化がされていない状態です。
また、業務の可視化の対象業務は、基本的には業務の流れや手順が決まっていて繰り返し取り組まれる「定型業務」になります。定型業務のイメージがつかない場合は、定型業務について解説している記事を参考にしてみてください。
業務フローを可視化することの重要性とメリット
業務フローの可視化は、BPMに取り組む間だけでなくその後にも繋がるメリットが多くあります。可視化が重要な理由は主に以下です。
業務全体の流れを理解することで適切な施策の設計ができる
効率化に向けて取り組む上では、業務全体を俯瞰的に把握した上で解決策を検討することが重要です。業務フローを可視化することで、各作業で実施している内容が明らかになり、正しい課題の抽出や原因分析、解決策の立案に結びつきます。また、業務フロー全体におけるボトルネックの把握や、ミスが多い箇所の特定にも役立ちます。
属人化によるミスや遅れの発生を防ぎ、作業品質を安定させる
業務フロー全体の流れや手順を可視化することで、業務改善に取り組んだ後も業務の属人化を防ぐことができます。作業者の業務理解を促進するだけでなく、管理者が進捗状況を確認しやすくなることで、ミスや遅れの発生を防ぎ作業品質を一定に保てるようになります。
メンバー同士の業務理解が深まる
目の前の作業に集中していると業務全体に目が行きづらくなります。特に業務を複数名で分担している場合には、自分の担当業務以外が見えなくなりがちです。
BPMを通して業務をフロー形式で可視化することで、作業者同士、作業者・管理者間での業務に対する理解が進み、業務進行やコミュニケーションの煩雑さを解消することができます。
ミスやトラブルに即座に気づくことができる
担当者に任せているタスクの中で発生したミスやトラブルを、管理者が後から発見するケースも少なくありません。問題を大きくしないためには発見と解決のスピードが命です。業務を可視化しておけばリアルタイムに進行状況を確認できるうえ、他のメンバーも素早くフォローに入ることができるのでスピーディな対応に繋がります。
業務フローを可視化する方法
業務フローの可視化には、アウトプットとして「作業手順書」と「フローチャート」を作成することが一般的です。それぞれに得手不得手がありますので、以下を確認し自社に合う方を選んで作成してみてください。
作業手順書
特徴
作業手順書は名前の通り、作業手順を記載する資料です。作業手順をまとめるために業務工程や流れを整理する中で、業務フローが可視化されます。
また、手順と合わせて担当者やチェックすべき観点、使用するツールなど、業務に関わる情報を網羅的に記載することができます。簡潔にまとめることができればそのまま業務マニュアルとしても活用できます。
適している業務
上記の特徴から、主に以下の要素に当てはまる業務に適しています。
- 作業手順が複雑、細かい
- 作業ミスが許されない、クリティカルである
- チェックすべき観点が多い
- 使用しているツールが多い
- 業務に分岐が発生せず、基本的に一直線に進行する
反対に業務フロー自体が複雑である場合には適していません。作業手順書では工程を一列でしか記入できず、条件分岐や並行処理などの条件を綺麗に並べることができないためです。
作業手順書の具体的な作成方法やポイントについて紹介している記事もありますので、作成時にはご確認ください。
フローチャート
特徴
フローチャートは、業務の流れを記号で表した資料です。フローチャートのみを作成するケースもあれば、上の例のように業務情報を併記するケースもあります。
業務をフロー形式で可視化できるため、業務全体の流れを直感的に理解しやすいことが一番のポイントです。また、フローチャートに利用する記号がある程度決められているため、誰にでも綺麗に図式化できます。
適している業務
業務フローの可視化に特化しているので、当前ではありますが以下のような業務に適しています。
- 業務の流れが複雑(条件分岐が発生する、複数名が同時に作業する等)
- フローの開始から終了までのタスク量が多い
- 複数の部署やメンバーが関わりながら進行する
反対に作業内容の仔細な管理はできかねるため、細かな作業が必要な場合には適しません。また、タスク数が少なく簡潔な業務の場合にも、フローチャートではオーバースペックになってしまうためメリットを得づらくなります。
フローチャートについても作成手順を詳細に解説している記事がありますので、参考にしてみてください。
また、フローチャートの作成に特化したツールも複数提供されています。ツールを利用することで、より綺麗に・簡単にフローチャートを作成することができます。フローチャート作成ツールについて紹介している記事もありますので、よろしければ参考にしてください。
業務フローを可視化する際のポイント
BPMのための可視化では、以下の点を意識することが重要です。
QCDの観点を意識する
BPMに取り組む中で正しい業務フローが構築できているかどうかを判断するためには、パフォーマンスの管理が重要です。作業工数や品質について細かくモニタリングができるよう、QCDの観点に根ざして可視化に取り組みましょう。
「QCD」は業務のマネジメントや生産性の管理に活用される指標で、「Q: Quality(品質)」「C: Cost(費用)」「D: Delivery(納期)」の頭文字をとった言葉です。フローを可視化する際にも発生している費用、作業工数、品質、担当者ごとのパフォーマンスなどを捉えられるよう意識することが重要です。
また、QCDの考え方において重要なポイントは、これらの3要素はトレードオフ(一つの要素を改善するために別の要素を犠牲にしなければならない)関係にあることです。BPMに取り組むにあたってどの要素の改善を最も重視すべきなのか、事前に優先順位を明らかにしておくことでパフォーマンスを最大化し目標を達成することに繋がります。
QCDの詳細については、QCDを活用した業務改善のポイントをまとめた記事を参考にしてみてください。
適切な粒度でアウトプットを作成する
BPMに取り組む中で、業務を可視化した後は改善案の策定や進行管理表の作成を行いますが、その際に今回作成した業務フロー図や作業手順書を使用します。したがってアウトプット作成時は、後続の作業でも活用しやすいように粒度を設定することがポイントです。
例えば記載する業務の粒度が荒すぎると、業務実態が見えてこず現実的な改善案が立てづらくなったり、現場に装着する際の計画立てがうまく進められないことがあります。反対に細かすぎてしまうと、そもそも資料として読み取りづらくなってしまいます。
担当者や担当部署、期限に注意しながら、適切な粒度で作成できるよう心がけてください。
外部の専門家の力を借りることも検討する
業務に課題を感じているが自社のみで取り組むのが難しい場合には、外部のコンサルタントに依頼することもおすすめです。例えば、以下のようなケースです。
- 自社のリソースが不足していて着手できない
- 社内に適するスキルを持った人材がおらず、業務改善の推進役がいない
- そもそも何から始めたら良いのか検討もつかない
例えばBPMに取り組む中で、業務の可視化やヒアリングの部分だけを請け負ってくれる企業もあります。費用と効果を加味して、検討してみてください。業務改善コンサルティングの依頼の流れや事業者選定の方法についてまとめている記事も参考にしてください。
ヒアリングの際は音声を自動で文字起こしする『Texta』がおすすめです。
計画立てを丁寧に行う
業務フローの可視化は意外と難易度の高い取り組みです。実際に取り組み始めてから、関係者が多く正しい業務フローを誰も把握できていない、業務情報が集まっても綺麗にまとめることができない、などの課題が生じてしまい、想定よりも期間もコストもかかってしまうケースが多々あります。
取り組みに関して現場メンバーに頭出しをしておく、誰がどのように整理を行うのかを想定しておくなど、あらかじめ可視化の取り組みに関する計画を丁寧に立てておきましょう。
おわりに
業務の可視化を問題なく進めるためには、いくつかのコツを押さえる必要があります。ぜひ本記事を参考に、業務改善の第一歩として取り組んでみてください。
また、弊社では、業務プロセスを可視化した上でタスク管理も可能なBPM(ビジネスプロセスマネジメント)ツールを提供しています。フローと手順を可視化した上で、そのまま進捗状況の管理にも利用でき、業務の継続的な改善にも結びつけることができます。サービスサイトをご覧の上、可視化のためのひとつの手段としてご検討ください。