属人化とは、ある業務を担当している特定の人以外が業務内容を把握しておらず、機能を代替できない状態を言います。属人化は悪いものとして語られることが多いですが、業務内容によっては属人化によって提供価値を向上させ、競合優位性を生む場合もあります。
本記事では、属人化の詳細と解決のための業務標準化の方法、属人化の良いケース・悪いケースについて言及し、悪い場合には属人化をどのように解消したら良いかをご紹介します。

この記事の目次
  1. 属人化とは
    1. 属人化の言葉の意味
    2. 属人化は必ずしも悪いことではない
  2. 属人化がメリットとなる場合
    1. スペシャリスト(専門家)として価値が提供できる
    2. 業務の習得に時間がかかるケース
    3. 個人の能力が競争優位性になる場合
    4. 新たなノウハウの獲得や進化を模索している場合
  3. 属人化のデメリット
    1. ボトルネックを生み出し業務効率を低下させる
    2. 業務品質や作業スピードが安定しない
    3. ブラックボックス化によりミスに気づけない
    4. 改善に取り組めず業務効率が悪化する
    5. メンバーの適切な評価や状態の判断ができない
    6. 急激な業務量の増加に耐えられない
    7. 担当者が休む・辞めると業務が止まってしまう
  4. 属人化してしまう原因
    1. 作業が可視化・見える化されていない
    2. 業務の専門性が高い
    3. 作業者が保身のため意図的に業務を抱え込んでいる
    4. 自分1人で取り組む方が早いと考えている
    5. 標準化に取り組む時間がない
  5. 業務を標準化することによる効果
    1. 業務品質の安定
    2. 業務改善につながる
    3. 引き継ぎやアウトソースが容易になる
  6. 属人化しているかチェックリスト
  7. 属人化を解消して業務を標準化する方法
    1. 1. 属人化の状況について把握する
    2. 2. 担当者の業務量を一時的に抑制し標準化を評価する
    3. 3. 業務を可視化する
    4. 4. 業務フローと作業手順の最適化
    5. 5. マニュアル化の実施
    6. 6. 現場装着と定期更新
  8. おまけ|ツール導入を通した属人化の解消
  9. さいごに

属人化とは

属人化の言葉の意味

「属人化」は特定の業務の担当者以外が業務の内容を把握していない状態を指します。そのため、担当者以外の人が業務を代替することが出来なかったり、当該業務の品質の良し悪しを判断できなかったりという問題が発生します。
属人化の反対語としては「標準化」が挙げられます。これは対象の業務のやり方や流れが明確になっていて、担当者以外も客観的に理解し、作業を代替できる状態を指します。

属人化は必ずしも悪いことではない

詳細は後半でも記載しますが、属人化は組織にとって常に悪であるとは限りません。業務の特性によっては属人化が競争優位性を実現する場合もあります。また、標準化される業務も、業務開始時から完璧に標準化されているケースは少なく、属人化→標準化とうループを回すことで、試行錯誤しながら拡大可能な汎用的な業務に進化させていくことができます。

属人化がメリットとなる場合

まず、属人化がメリットとして機能するのは以下の特徴を持った業務の場合です。

  • 作業内容や業務内容が毎回異なるもの(戦略立案、コンサルティング、など)
  • 業務自体に高い専門性が求められるもの(医療、職人、など)
  • 正解や正攻法が不明瞭な業務(立ち上げ期にある業務、新規サービス、など)

具体的には、経営戦略や営業戦略などの戦略立案や、手作りの伝統工芸品など人手のスキルに依存して生み出される商品やサービス、業務が対象となります。
また、標準化されている業務もよく見ると、属人化と標準化のサイクルを小さく繰り返しているケースがほとんどです。これは標準化されるあらゆる業務も最初は不確実な状態から生まれて徐々に正攻法やベストな形がわかってから標準化される、というアプローチを取るためです。

属人化から標準化への流れ
属人化から標準化への流れ

一度、標準化された業務も顧客や外部環境の変化、より良いものを提供しようとした場合、個人レベルの小さな試行錯誤から取り組まれます。その意味で、標準化されるべき業務も属人化→標準化のサイクルを繰り返し続けています。以下は属人化の具体的なメリットです。

スペシャリスト(専門家)として価値が提供できる

特に専門性が高く、サービスを提供するために習熟が必要な業務が対象になります。例えばコンサルタントは特定の業界や業務、市場に深い理解を持っているからこそ価値提供ができています。このように、事業やサービスの提供価値自体が“人”の場合はネガティブな属人化ではなく、プロフェッショナルといえます。

業務の習得に時間がかかるケース

業務に携わるまでに多くの経験や学習が必要となるもので、標準化が機能しないと表現することができます。前項のスペシャリストとも重なりますが、例えば弁護士や会計士、医者など、そもそもの業務に従事できるようになるまでに時間がかかるような場合が該当します。

個人の能力が競争優位性になる場合

例えば、高単価且つ複雑な商材の営業などが対応します。法人向けにオーダーメイドでシステム開発を提案するような場合、顧客のニーズや状況などに対して深い理解と洞察が必要になります。当然、顧客ごとに状況はバラバラのため求められる最適解が変わります。このような業務においては、営業を担当するメンバーの得意領域や特定のスキルに依存して価値が提供されることになり、その人自身のスキルや能力が企業・組織の競争優位性に直結します。

新たなノウハウの獲得や進化を模索している場合

冒頭でも記載しましたが、標準化されている業務であっても初期は属人的に取り組まれていることがほとんどです。また、一度標準化された業務でもさらなる進化のための試行錯誤はやはり個人の考えや工夫、想像に依存して生み出されます。このように標準化されている業務の中でもさらなる改善のために、小さな工夫や試行錯誤が一時的に属人化していることは好ましい状態と言えます。

属人化のデメリット

次に属人化のデメリットについてご紹介します。以下に該当する業務は、属人化がデメリットとなることが多いです。

  • 業務の複雑性がそれほど高くない
  • 作業の内容が決まった定型的な業務である
  • 対象の業務の発生頻度や発生量が一定ではない
  • 独自性よりも安定した品質やスピードが求められる

属人化のデメリットを端的に述べると事業におけるQCDの低下、拡大の阻害、変化への脆弱性を生み出す原因となります。詳細は以下の通りです。

ボトルネックを生み出し業務効率を低下させる

属人化した業務は担当しているメンバーが代替出来ないことにより、業務量が増えた場合にボトルネックを生み出します。事業全体の推進スピードや対応量を向上したい場合にも課題となってしまいます。

属人化によってボトルネックが発生
属人化によるボトルネック

業務品質や作業スピードが安定しない

特定の業務を複数人で担当している場合で、やり方が個々人に属人化しているケースです。同じ業務内容なのに担当者によってやり方が異なる結果、業務の品質にもばらつきが生まれます。また、品質だけなく対応スピードにも差異が発生する場合が多く、顧客満足度の低下にも繋がってしまいます。

ブラックボックス化によりミスに気づけない

業務が属人化することで、その業務の結果が良いのか悪いのかを客観的に判断することが難しくなります。その場合、現場でミスやトラブルが発生していても担当者が検知できず、最悪、隠蔽や改ざんが発生します。

改善に取り組めず業務効率が悪化する

業務に携わっていないメンバーが、属人化している業務の内容や対応を理解できない結果、客観的な評価やアドバイスが難しくなります。それにより業務の対応方法が硬直的になり改善が進まなくなってしまいます。また、実際に業務に携わっている人自身が改善活動に取り組みたいと考えた場合にも、その人以外が業務を担当できないことで業務負荷が高くなり、そもそも改善活動に取り組む時間がない、という状況に陥ります。

メンバーの適切な評価や状態の判断ができない

上司が部下の評価を行う際に、その業務が属人化していて上司が理解できない場合、適切な評価ができません。また、作業の担当者から「業務が大変だからメンバーを増やすか業務を減らしてほしい」と言われた場合にも、メンバーや体制についての適切な意思決定ができません。

急激な業務量の増加に耐えられない

業務の属人化により、業務量が急激に増えた場合にサポートできる人がいない状態が発生します。そこで、いざ人を増やす際にも、作業担当者の経験値しかノウハウが存在しないため、引き継ぎや教育に時間がかかってしまったり、そもそも作業者がその時間を捻出することが困難となったりする場合も少なくありません。

担当者が休む・辞めると業務が止まってしまう

「担当のXXさんが退職したら業務が止まってしまう」「XXさんが休んでしまうと誰も対応できない」という状況も属人化によって発生する問題です。特に業務プロセスの中で主要な作業を担うメンバーの退職や不在は業務全体の流れが止めてしまいかねません。また、これは具体的な作業だけでなく、特定の知見やノウハウなど目に見えない情報が個人に依存している場合も含まれます。

属人化してしまう原因

属人化は様々な要因によって発生します。もちろん複合的な理由で発生する場合もありますが、主に以下のような状況が背景となる場合が多いです。

作業が可視化・見える化されていない

作業の手順書やマニュアルが存在せず、日々業務を担当している本人しか手順を知らないケースです。この場合は同時に業務の引き継ぎもうまく進まないことが多く、業務を経験していく過程で覚えていったり、都度メンバーが手元でメモを取ったりする必要が出てきてしまい、さらに属人化を引き起こしてしまいかねません。

業務の専門性が高い

業務の専門性が高く、作業内容をうまく共有できないこともあります。例えばプログラミングや労務、経理など専門知識や一定の業務経験が必要な業務の場合で、属人化を解消するためには周囲のメンバーに向けた丁寧な説明や教育が必要になります。ただ、前述の通りこのケースは優位性にもなりうるため、適切な判断が必要です。

作業者が保身のため意図的に業務を抱え込んでいる

一部の作業者が意図的に業務を抱え込み、属人化を引き起こしていることがあります。組織が一定の規模を超えると発生しやすく、自分の仕事を他のメンバーに取られないこと、人事評価の際に個人の評価を向上させることが目的です。

自分1人で取り組む方が早いと考えている

こちらも上の項目と同様に、作業者自身が意識的に属人化させているパターンです。複数のメンバーで作業を分担したり初心者に業務を引き継いだりするよりも、慣れている作業者が1人で担当する方がスピーディ且つ無駄がないと考え、業務の開示を拒みます。

標準化に取り組む時間がない

属人化の解消・標準化の必要性は理解しているものの、通常業務が忙しく標準化に取り組むための時間を割けない場合で、最も多く見られるパターンです。企業規模の拡大を検討している場合には今後さらなる属人化の加速が見込めるため、通常業務をストップしてでも、属人化解消のプロジェクトを立ち上げ、対処することをおすすめします。

業務を標準化することによる効果

属人化を解消し、業務を標準化できた場合のメリットについてはざっくり以下です。

業務品質の安定

一番の効果は業務品質の安定です。メンバーごとの手順を統一することで常に一定の品質を提供できるようになります。また、担当者が欠席したり辞職したりした場合でも別の担当者が補填することができるため、業務が停滞してしまう心配もなくなります。

業務改善につながる

こちらは属人化を解消し業務を標準化する過程で副次的に発生するメリットです。業務を標準化するために業務フロー図やマニュアルを作成することで、業務全体が可視化され、改善すべきポイントが見えやすくなります。また、継続的に更新していくことで過去の変更点やノウハウも蓄積されていき、業務改善のPDCAを回すことにも繋がります。

引き継ぎやアウトソースが容易になる

業務が標準化されている状態は、“誰でも同じ手順で、同じ品質で作業ができる状態”とも考えることができます。したがって、担当者以外のメンバーへの業務の共有が容易になります。
例えば、作業担当者以外でも統一されたプロセスに従えば同様に作業ができることから、退職時の引き継ぎや新入社員が入った際の教育の負荷を下げることができます。
また、業務が標準化されていればアウトソースも検討することができます。アウトソースは決まった作業を一定のボリュームで委託することで効果を得られるため、該当業務は既に整理され標準化されている必要があるためです。詳細はアウトソースに関する記事もご覧ください。

属人化しているかチェックリスト

ご自身の組織やチームが属人化しているかどうか、以下の項目に照らし合わせてみてください。もし、該当しているものが4つ以上存在する場合は業務が属人化している可能性が高いです。

  1. 詳細を把握している人が1人しかいない業務が存在する
  2. 定形業務だがマニュアルが存在しない、または古い
  3. いつ、誰が休んでも大丈夫な状態になっていない
  4. 引き継ぎに1ヶ月以上必要な業務が存在する
  5. 新人を教育する方法がOJTまたは口頭伝達のみ
  6. 作業負荷が集中しているメンバーがいて、他の人が作業を代われない
  7. 直近6ヶ月以上、改善に取り組めていない業務がある

属人化を解消して業務を標準化する方法

属人化を解消する具体的なアプローチ方法をご紹介します。基本的にはステップの順番に合わせて取り組んでいただけますが、状況に合わせて取捨選択いただいて問題ありません。

1. 属人化の状況について把握する

作業を実施しているメンバーにヒアリングをして、本当に業務が属人化しているかどうか、解消に取り組むべきかどうかについて判断してください。
可能であれば、業務を担当しているメンバーに30分〜1時間ほどヒアリングをして前項で列挙したチェックリストについて所感を確認してください。また合わせて担当している業務について以下の項目を確認してください。

  • どのような業務に取り組んでいるか
  • もし新人に引き継ぐ場合にどのくらいの時間がかかるか(難易度の評価)
  • 部署の機能においてどの部分を担っているか
  • 自分の業務の品質を適切に評価できる人がいるか
  • 急遽、明日から1週間休むことになったらチームにどれだけ影響があるか

ここで詳細なヒアリングを実施したい場合は業務ヒアリングの方法とポイントについてまとめた記事がありますので、合わせて確認してください。

2. 担当者の業務量を一時的に抑制し標準化を評価する

これは、作業担当者の業務負荷が常時高く、そもそも標準化に取り組む時間がない場合に有効です。現場担当者は業務の標準化に取り組みたいと考えていても、忙しすぎてそれどころではないという状況が多く存在します。また、標準化の活動自体が評価に繋がりづらく、わざわざ業務を止めるくらいなら、自分で少しでも多くの業務をこなしたほうが良いと考えている場合もあります。
この状況を打破するためには、管理者やマネージャーが業務量を一時的にコントロールし、標準化の活動に取り組むように推奨してください。また、その活動を必ず評価してください。そうすることで空いた時間で標準化に取り組み、中長期的に可用性の高い体制を構築できます。

3. 業務を可視化する

属人化している業務の全体像を把握し、メンバーに共有できる状態をつくるため、ツールを使って業務を可視化します。今回は例として業務フロー図と作業手順書を用いた方法について記載しています。必要に応じて作成してみてください。

業務フロー図を作成する

業務フロー図は業務の大まかな流れを図解したものです。もし、管理者やメンバー間における業務の理解度が高い場合は割愛いただいても問題ありません。著しく業務の理解度が低い場合は、概要を俯瞰的に把握するために業務フロー図を作成することが有効です。

業務フロー図のサンプル画像です
業務フロー図のサンプル

業務フロー図は管理者やマネージャーが現場メンバーにヒアリングしながら作成しましょう。業務フロー図の具体的な作成方法についてまとめた記事がありますので、合わせて参考にしてください。

作業手順書を作成する

作業手順書を作成することで詳細な業務内容を可視化することができます。フロー図よりも、各業務について詳細な作業説明を記載したものです。

作業手順書のサンプルです
作業手順書のサンプル

こちらもフロー図と同様に業務のヒアリングをした結果をもとに作成しますが、かなり詳細に踏み込んだ内容となるため、現場担当者に作成を依頼することをおすすめします。また、業務が属人化している場合、同じ作業を担うメンバー同士でも手順が異なることが多いため、最初にメンバーごとに作業手順書を作成してもらい、後から最適な業務手順を模索すると良いです。作業手順書の作り方についてもまとめた記事がありますので、参考にしてください。

4. 業務フローと作業手順の最適化

このステップは属人化した業務をただ標準化するだけでなく、もう一歩踏み込んで業務改善に繋げたい場合に実施してください。
上記までの作業で全体の業務の流れとメンバーごとの作業内容が明らかになります。ここで、再度、可視化された業務内容をメンバー同士で共有しながら改善点や理想的な業務プロセスについて検討してください。担当しているメンバーの人数にもよりますが、整理したフロー図、手順書をみんなで読み合わせながら改善点をブレストすると良いです。指摘を反映したものは理想形のフローとして整理しておきます。

5. マニュアル化の実施

もし、今後新しいメンバーを増やしたり、担当者の入れ替えの発生が想定される場合は、業務手順書をさらにわかり易い形に落としてマニュアル化すると効果的です。特定のツールや機械を利用した業務の場合は、マニュアル化しておくことで業務の引き継ぎや教育も簡単になります。

6. 現場装着と定期更新

標準化した業務を現場に装着していきます。必要に応じて勉強会やレクチャーを実施することで変更直後の業務品質を保ちやすくなります。また業務によって段階的な切り替えが可能であれば、いきなり変更するのではなく徐々に移行していく方がおすすめです。
現場装着が完了した後も、定期的に業務手順の見直しを行うようにしてください。冒頭で述べた通り、標準化された業務も徐々に変化することがほとんどです。業務内容や規模にもよりますが、半年〜1年に1回程度の頻度で現場のメンバーにフロー図、手順書、マニュアルを確認してもらい変更点があるかどうかチェックしましょう。

おまけ|ツール導入を通した属人化の解消

タスク管理ツールの導入を通して業務フローや手順を見える化することで、属人化を解消する方法もあります。弊社が提供している「octpath」は、業務プロセスと合わせて各タスクで参照すべき手順やチェック項目を管理することができ、サービス画面を見れば誰でも同じように作業できる状態を実現します。詳細はoctpathのサービスサイトをご確認ください。

octpathのサービス画像です
octpathのサービス画像

さいごに

属人化は常に悪いことだとは限りませんので、業務内容や特性から判断するようにしてください。また、属人化を解消するプロセスは非常に大変ですが、正しく標準化することでメンバーの負荷が下がり業務の品質が向上するだけでなく、事業の拡大にも適応しやすくなります。ぜひ、ご自身のチームの持つ強みやノウハウを可視化、標準化してより良い事業づくりに繋げてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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