本記事では、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)に取り組むにあたって、可視化した後の業務プロセスを利用して業務改善に取り組む方法について紹介しています。BPMでの課題点の見つけ方、改善策の検討方法を考える際に参考にしてください。

おさらい|業務プロセスの可視化について

BPMの取り組みの中では、可視化した業務プロセスを用いて継続的に業務の分析・改善を行います。プロセスに則って考えることで、正しい課題点の発見と効果的な改善策の発見に結びつきます。

BPMの流れを図示した画像です。

今回の記事では、可視化した後の課題点の発見・改善策の検討の方法について記載しています。業務プロセスの可視化の方法から知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

改善策を導き出すまでの手順とポイント

今回の取り組みのアウトプットとしては、解決したい課題それに対する対応策がそれぞれ明確になっている状態を目指します。
プロセスベースで業務の改善策を検討する際の手順は以下です。

  1. 課題点を見つける
    • 現場の課題点を明らかにする
    • 理想状態との乖離を見つける
  2. 改善策を検討する
    • ECRSの観点で業務プロセスの改善を行う
    • 業務を効率化する手段を検討する
  3. 改善後のシミュレーションを行う

それぞれの取り組み方法について具体的に解説します。

①課題点を特定する

まずは、可視化の際に作成した作業手順書・フロー図などの業務資料と、実際の業務情報から、業務進行における課題を特定します。業務を非効率にしているボトルネックを明らかにする、とイメージしていただくと良いかと思います。
“そもそも業務に課題感があったからBPMに取り組むことを決めた”というケースが大半だと思いますが、その課題感は具体的にどのようなものなのか、今一度、具体的に見直しを行なってください。

この際、「現場の課題感から洗い出す方法」と「理想状態との乖離から洗い出す方法」の2つの軸で業務を見直すことをおすすめします。

現場の課題から考える

実際の業務で感じていた課題をもとに深掘りをしていく方法です。「業務が属人化している」「作業品質が低下している」などの抽象的な問題がある場合は、その原因を明らかにしていくイメージです。可視化した業務を見返しながら、以下のような観点で課題点を探します。

  • 業務の担当人数は適切か
  • 業務にかかっている時間・工数はかかりすぎていないか
  • ミスや抜け漏れ、遅れが頻発している箇所はないか
  • 部署・担当者間でのやりとりはスムーズか
  • 作業品質は一定に保たれているか
  • 担当者ごとの作業手順は統一されているか
  • そもそも業務フローは標準化されているか

その際、業務をフローとして捉えることが重要です。業務単位で考える場合と比較してよりインパクトのある課題を見つけることができ、また、課題の抜け漏れを防ぐことができるためです。“フロー全体として最適化がされているか”、“業務間に課題はないか”を探りましょう。

また、可能な範囲で現場のメンバーにもヒアリングをしながら進めましょう。現場と管理者では違う観点の課題を持っていることがほとんどであるほか、実際に業務改善の影響を最も受けるのは現場メンバーのため、仔細に把握しておかなければ改善策もフィットしなくなってしまいます。
実際の業務に関わっているメンバー、特に現場の作業を管理しているリーダー層に対してヒアリングをしながら進めると、より広い視点で業務の課題が見えてくるかと思います。

理想状態との乖離から考える

業務や組織における将来的なイメージや目標が明確にある場合は、理想状態と比較して現状の課題を洗い出しましょう。理想と現状の乖離を明らかにしながら、改善すべきポイントがどこにあるのかを探ります。

この際最も重要なのは、理想状態が明確であることです。
例えば「現場メンバーが業務を効率化と感じられる状態」では、人によってイメージする状態が異なるかつ期限が明確でないため、スピード感や改善策の方向性が曖昧になってしまいます。「総務部全体のコストを30%カットする」や「業務のミスの発生率を0.5%に軽減する」などのように、誰もが同じ状態をイメージできるよう、定量的に・具体的に設定しましょう。

QCDの観点から考える

「QCD」とは、生産管理の軸となる3つの単語の頭文字をあわせた言葉で、生産管理の観点・指標として用いられています。管理の対象は形ある”製品”にとどまらず、無形の”サービス”に対しても適応できる考え方です。

  • Q: Quality(品質)
  • C: Cost(費用)
  • D: Delivery(納期)

QCDはトレードオフの関係になっていますが、現在の業務の課題を見つけるうえで特に改善したいポイントや、改善点の優先順位を判断するうえで有用な観点になります。それぞれの項目に立脚した課題があるかを洗い出して比較することで抜けもれない課題の洗い出し及び、チームや部署での優先順位の認識合わせが可能になります。

QCDの概要を表した画像です。
QCDの関係性について表した図

詳細については、QCDの意味とQCDを活用した業務改善のポイントについて解説している記事も参考にしてみてください。

②改善策を検討する

次に、課題点をもとに業務プロセスの改善に取り組みます。改善策は「業務プロセス自体の修正」と「業務プロセスの効率化」の大きく2つのステップに分けて検討します。

業務プロセス自体を修正する

まずは、業務プロセス自体の見直しを行います。見直しの方法に特に決まりはありませんが、業務改善の4原則であるECRSをもとに検討することをおすすめします。
ECRSは業務改善に取り組む際に用いられるフレームワークです。業務を見直すための以下4つの観点の頭文字を合わせたもので、「イーシーアールエス」または「イクルス」と読みます。

  1. Eliminate(排除): 業務やプロセスをなくす
  2. Combine(結合): 別々の作業を同時に処理する、ひとつにまとめる
  3. Rearrange(再配置): プロセスや担当者を入れ替える
  4. Simplify(簡素化): 手順やプロセスを簡単なものに変える

また、並び順にも意味があり、E→C→R→Sは改善効果の大きい順に並んでいます。この流れで業務の見直しを行うことで、効率的に業務改善に取り組むことができます。
BPMでは例えばプロセス内の一部の業務を排除する、業務の並びを変更する、業務間の連携やコミュニケーションの方法を変更する、などが考えられます。

ecrsの解説画像です

このとき、特にEliminate(排除)を意識することがポイントです。業務プロセスの中には、慣習として行なっているが実際には不必要な業務が隠れているケースもあるためです。本当に必要な業務かどうか?を意識しながら、検討するようにしてください。
ECRSの詳細について説明している記事の中で業務例も記載していますので、参考にしてください。

業務を効率化する

ECRSによって業務プロセス自体の見直しをおこなった後は、作業・進行の効率化に取り組みます。BPMにおいては、以下のような手段を取り入れるケースが一般的です。

  • 紙やexcelでの管理をクラウドサービスに置き換える
  • タスクやプロジェクト管理ツールからフロー・定型業務の管理ツールに切り替える
  • ツール導入によって業務の一部を自動化する
  • 業務の標準化を行う(手順やフローを統一し最適化する)

現行業務で感じている課題や業務プロセスによって最適な方法は異なります。自社の課題に対して最も効果的な手段は何か、検討してみてください。弊社にご連絡いただくお客様のケースでは、自社の課題感に合うツールがあるか、ある程度情報収集をしてから対応策を決めることも多いです。

また、改善策を検討する際には以下のポイントも合わせて考慮するようにしましょう。

  • メンバーのリソース、忙しさ
  • メンバーのスキル
  • 業務や組織の特性
  • 予算
  • 社内のセキュリティなどに関する規定

そもそも社内に改善策の検討や実践に関わるスキルを持った人材がいない場合は、外部のコンサルタントに業務改善活動自体を依頼することも可能です。弊社でもご紹介が可能ですので、もしご興味をお持ちいただけましたら以下までご連絡ください。
info@kaizen-penguin.com

③改善後のシミュレーションを行う

業務プロセスの修正・効率化の後は、いきなり業務を変更するのではなく、改善後の業務プロセスで問題なく業務を進められるかを確認することをお勧めします。実際の業務との乖離があった場合のトラブルやミスの発生を防ぐためです。

実際に新しい業務プロセスで何回か業務を進行してみることが理想的ですが、ミニマムな形であれば、実際に作業を行うメンバーで集まって、計画時に利用した資料の読み合わせを行うだけでも構いません。もしフィットしない箇所があれば適宜修正していきます。
関係者全員の認識を合わせるためにも、管理者やリーダー層だけでなく、実際に作業しているメンバー全員を集めて解説・実践をすることが好ましいです。

確認の際、問題なく業務を進めることができれば改善策の検討は終了とし、実際に実行に移していきます。実行時の流れやポイントについては別の記事で紹介します。

取り組みにおけるポイント

行動がイメージできるレベルまで具体化する

課題を洗い出す場合にも、改善策の計画を立てる場合にも、具体的なアクションを想像できるレベルまで、具体的に考えるように意識してください。抽象的なイメージのまま進めてしまうと、アウトプットが机上の空論になってしまい、現場の状況や本来やりたいことにフィットしなくなってしまう可能性があるためです。

業務をフローとして捉える

前述している且つ言わずもがなですが、BPMは業務をフロー形式で改善していく取り組みです。フローとして捉えることで業務全体に働きかけることができ、よりインパクトの大きい取り組みに繋がります。各作業や部署・チーム単位ではなく、フロー全体を俯瞰的に捉えることを意識してください。

本質的に考えることを意識する

十分な改善効果を得るためには、正しい課題発見と解決が必要があります。表層的な課題や安易な改善策に満足しないよう注意してください。
例えば業務が逼迫している場合に、人手が足らないからと採用を行うのはナンセンスです。業務が逼迫している理由を細かく分析した上で、自動化やフローの最適化など複数の改善策を洗い出し、根本的な課題解決につながる手段を選択することが大切です。

おわりに

弊社がBPMツール「octpath」を提供していく中で支援させていただいている中では、業務プロセスの可視化だけで終わってしまっているケースもよく見受けられます。業務を効率化するためには今回取り上げたように、可視化した後の業務プロセスをもとに課題を発見し、改善策を実行していくことが必要です。
ぜひ記事を参考に取り組んでみてください。

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