この記事では、業務改善、特にBPMに取り組む中で、改善後の新しい業務フローを現場に定着させるための流れとポイントについて解説しています。細かい話に思えますが、スムーズに業務の効率化に取り組むために重要なステップです。ぜひ記事を参考にしてください。

おさらい|BPMの実践の流れ

BPMの取り組みの中では、可視化した業務プロセスを用いて継続的に業務の分析・改善を行います。プロセスに則って考えることで、正しい課題点の発見と効果的な改善策の発見に結びつきます。

BPMの流れを図示した画像です。

今回の記事では、業務プロセスを改善した後で現場に装着するための方法について記載しています。前の工程である課題の見つけ方や改善策の検討の方法についての記事を読んでから取り組んでください。

業務改善活動における現場装着ステップの重要性

業務改善の取り組みの中ではフォーカスされづらいものの、現場装着は非常に重要なステップです。

現場装着のステップでは、既存の業務フローに慣れ親しんでいるメンバーに対して新しいフローを一から説明していく必要があります。現行のフローとの差分が大きいほど浸透しづらく、結果として作業品質が低下や、ミスが発生するケースもあります。
また、メンバーのスキルやリテラシーにも違いがある上、作業者は既存の業務と並行して対応する必要があります。

弊社が業務効率化に関わるプロジェクト支援やSaaSの提供を行っている中でも、業務設計から新しい業務の装着までに関わることがあります。新しい業務フローを構築できたものの、現場にうまく定着せずに頓挫してしまった、というケースもしばしばあります。
現場装着に絞ってもいくつもコツとポイントがありますので、業務をスムーズに乗せ替えられるよう、記事を参考に検討してみてください。

現場装着のために必要なアクション

新しい業務フローを現場に装着するためにはいくつかの準備が必要です。以下の点を順に検討・実行していきます。

  • 関係者への計画共有
  • コンチプランの検討
  • 並行運用期間の設置

■ 関係者への計画共有

まずは、新しいフローについて関係者全員に共有していきます。共有先によってとるべき対応が少しずつ変わりますので、注意してください。

管理者への事前説明

メンバー全員に話をする前に、まずは管理者に対して話を通し、疑問点や業務上の問題がないかを確認します。影響範囲にもよりますが、上層から段階的に話を展開し、実作業を管理するリーダーまで話を共有していくことをおすすめします。
役職や立場ごとに意識している点が異なります。スムーズに共有するため、情報の粒度や観点を適宜調整しながら共有を進めてください。

メンバーへの説明

管理者への説明が済んだら、実際に業務を進行するメンバーに対して計画を共有します。業務内容の変更による影響を最も受けるのはメンバーです。変更差分だけでなく、取り組みの概要や背景についてもはじめから共有しておくことで、取り組みへの理解を得やすくなります。

社外メンバー・ステークホルダーへの事前共有

社外のメンバーが関係している場合は最も注意が必要です。業務や契約の内容にもよりますが、トラブルや準備不足を避けるためにも前もって詳細を説明をしておきましょう。準備や社内調整にかかる工数から逆算し、前もって頭出しをしておきます。小さいプロジェクトであっても目安として2-3ヶ月前には伝えておくことがベターです。
また当然ではありますが、ステークホルダーが関わる場合には情報の伝え方や共有する範囲についても精査が必要です。スムーズに調整を進めるために、戦略を立てながらコミュニケーションしていきます。

■ コンティンジェンシープランを検討する

コンティンジェンシープラン(Contingency Plan)は、予期せぬ事態が発生した際の対応方法について事前にまとめた計画書のことです。コンティンジェンシー(Contingency)とは「不測の事態」を意味する英単語で、例えば災害やテロ、大規模な事故、トラブルなど、事前に予測したり防いだりすることのできない出来事を指します。
コンティンジェンシープランについて説明している記事も参考にしてください。

コンティンジェンシープランの内容については、大きく以下の3つに分けることができます。

1.新しい方法・手順における改善策を検討しておく

考えられるトラブルを洗い出し、それぞれの対応策を事前に計画しておきます。あらかじめトラブルを予測し対応を明らかにしておくことで、実際にトラブルが発生した際のスムーズな対応が可能になります。
課題管理表のような専用のシートを作成し、課題と対応策を一覧化しておくと、後から見返したり、いざというときに対応策を探しやすくなるためおすすめです。

2.変更前の方法・手順への切り戻し

切り戻しは、変更後の業務プロセスがうまく運用に乗らなかった場合にもともと運用していた業務プロセスに戻すことを言います。業務上の問題が発生してしまった、業務が以前より非効率になってしまった、という場合に切り戻しを行います。
組織や人員的な原因で業務変更が必要な場合など、切り戻しが難しいケースもありますので注意してください。例えば該当部署自体が解体されてしまった、もしくは対応していたメンバーが退職・異動してしまった場合などです。

3.トラブルや問題が発生した時点で対応方法を検討する

事前に対応方法を検討せず、トラブルやエラーが発生したタイミングで対応内容を検討するパターンです。事前検討が不要な分、素早くアクションに移せることが利点と言えます。
基本的にこの対応を取ることはおすすめしませんが、変更対象となっているプロセスの規模が小さい場合や、トラブル発生時の影響が小さい場合などは、許容する場合はスピードを優先して選択するがあります。注意点として、「事前に対策は検討せず、実際に問題が発生したら都度対応する」という方針を事前に必ずステークホルダーに共有しておきましょう。「特になにも考えていなかった結果、事後対応を取る」とならないようにしてください。

■ 並行運用期間の設置

変更後の業務プロセスで問題なく業務を進行できるようになるまでの一定期間、現行の業務プロセスと変更後の業務プロセスを同時進行する方法もあります。しばらくの間は二重にコストが発生してしまいますが、一度で切り替える場合と比べてミスやトラブルを防ぎやすいことがメリットです。特にミスやトラブルが許されないクリティカルな業務の場合は、一度に業務を変更することのリスクが大きいため、並行運用することをおすすめします。

新しいフローを現場に装着する際のポイント

現場視点に立って考える

前述している通り、業務変更の影響をもっとも受けるのは作業をしているメンバーです。もともとの業務との変更差分だけでなく取り組みの背景をきちんと伝えたり、それぞれの部署に合わせて文言や説明内容の粒度を調整しながら、丁寧に伝えましょう。
また、メンバーへの説明をリーダーなど他のメンバーに依頼する際は、分かりやすく伝えやすいよう工夫することがポイントです。例えばリーダーへの説明資料をそのままメンバーにも展開できるよう整理しておくなどです。

現場の余力を考慮する

メンバーは、通常の業務と同時並行で業務の変更に対応する必要があります。通常業務の逼迫度合いを考慮しながら取り組みを進めるよう注意が必要です。想定よりも時間がかかってしまう場合でも、現場の受け入れやすさを優先しましょう。

トラブルやミスが起きた場合の影響度を明らかにしておく

ミスやトラブルはそれぞれ影響度が異なり、担当者が数分で対処できるようなものから、事業自体がストップしかねないものまで様々です。影響範囲、緊急度、重要度から影響度をそれぞれ明らかにしておきましょう。影響度の高いものについては、事前に発生しないよう備えるほか、発生後すぐに解決できるよう対応策を明らかにしておく必要があります。
トラブルの洗い出しをする際に項目のひとつとして影響度も記入できると良いかと思います。

フォローアップの体制を用意しておく

業務変更後は、トラブルやメンバーからの質問が発生しやすくなります。現場で問題が生じた場合にスピーディに対応できるよう、期間を決めて、いつでもサポートができる体制を築いておきましょう。弊社が過去に支援させていただいた企業では、業務が落ち着くまでの一定期間はフォローにあたる人員を増やし、一時的に体制増強をおこなっていました。

問題が起きた時に誰が意思決定するのか

現場で何かしらの問題が発生した場合に誰が最終判断を行うのか、報告経路と合わせて事前に決めておきます。意思決定者が曖昧になることで問題が宙に浮いてしまい、対応が遅れてしまうことのないよう注意してください。例えば判断は現場リーダーに任せ事後報告をしてもらう、判断に迷ったらまずは管理部長に連絡をする、などです。

トラブルは必ず起こるものとして想定しておく

記事の内容とは矛盾してしまいますが、業務変更に取り組む中で何かしらの問題は必ず発生します。コンチプランの検討やフォローアップ体制の増強などでトラブルに備えることはもちろん重要ですが、すべてが想定通りに進むことはない、と心得ておきましょう。

おわりに

規模が大きい場合は特に、現場装着のステップにもかなりのコストがかかります。また、冒頭で述べた通り、現場に定着しなかったことが原因で頓挫してしまうケースもあります。
時間をかけても構いませんので、スムーズに業務の切り替えができるよう、丁寧に取り組んでみてください。

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