SOPは日本語で標準作業手順書と訳され、業務を進行するための手順を統一し、まとめて記載したものを指します。業務品質を安定させるために役立つツールの一つです。この記事ではSOPの概要から作り方まで簡潔に記載していますので、ぜひ参考にして、SOP作成に取り組んでみてください。

SOPの概要

SOPとは

SOPとはStandard Operating Procedureの略称で、ある業務を進行するための作業手順を標準化し、まとめて文書化したものを指します。日本語では「標準作業手順書」や「標準操作手順書」と訳されます。
標準作業手順書の「標準作業」は、ここでは“手順に無駄がなく効率的な作業のやり方”を意味し、SOPを作成することで標準作業の明確化・共有が可能になります。

SOPを作成する目的

SOPを作成する目的は端的に作業や技術レベルを標準化し、再現性を高めることです。
決まったメンバーが同じ作業を担当していると業務は少しずつ属人化していきます。属人化は「担当者が休んだ時に誰も代わりに対応できない」「ミスに気づきづらくなる」「技術力に差が生まれ業務品質がばらつく」など様々なデメリットをもたらします。SOPの作成によって正しい手順が明確になることで、属人化を防ぎ、SOPを見れば誰でも同じクオリティで作業を進められる状態をつくることができます。

SOPの作成に適している業務

SOPは業種や職種を問わず利用できますが、標準作業を記載するツールのため、単発で発生する業務や簡単な作業には適しません。特にSOP作成の効果が出やすい業務は、以下のような特徴があります。

  • 細かなミスの許されない、クリティカルな作業
  • パターン分けや条件分岐が発生するなど、作業内容が複雑
  • 作業の開始から終了までの期間が長い
  • 複数のメンバーで同じ業務に取り組んでいる

上記の特徴から、製造業や医療に関わるような業務が多く該当します。ご自身の業務内容に照らして、SOPの作成が必要かどうか、確認してみてください。

SOPとマニュアルの違い

SOPは「マニュアル」と同義としても用いられますが、重視されるポイントが異なります。

  • SOP: 業務単位で手順をメインに記載する
  • マニュアル: 業務進行に必要な情報を全般的に記載する

SOPは「手順書」のため、業務の工程や手順について具体的に記載することが重視されます。一方で、一般のマニュアルは、業務情報をまとめるというニュアンスが強いため、業務進行に関わる情報全般を記載することが多いです。例えば利用するツールやルール、チェックすべき観点、画像なども含まれるイメージです。一般的なマニュアルの概要と作成方法について記載している記事もありますので、合わせて参考にしてください。

SOP作成におけるベストプラクティと事例紹介

SOPの作成は、企業の効率性、一貫性、品質保証の向上に不可欠です。このセクションでは、業界別の成功事例と共通の落とし穴を紹介し、SOP作成のベストプラクティスについてご紹介します。

業界別SOP作成の成功事例

  • 製造業
    ある自動車部品製造企業では、製造ラインの各ステップに対する詳細なSOPを作成しました。これにより、作業員が一貫した品質の部品を生産し、廃棄率を25%削減することができました。SOPはビジュアルエイドを豊富に使用し、非技術的な作業員でも容易に理解できるようにしました。
  • 医療業界
    一つの病院で導入されたSOPは、患者の入院から退院までのプロセスを標準化しました。これにより、患者の平均入院期間が短縮され、患者満足度が向上しました。SOPの成功の鍵は、全スタッフのフィードバックを集め、継続的な改善を行ったことにあります。
  • ITサービス業界
    ソフトウェア開発会社が開発プロセスのSOPを導入した結果、プロジェクトの納期遵守率が向上しました。彼らは、開発の各フェーズで必要なタスクと成果物を明確に定義し、チーム間のコミュニケーションの効率を高めました。

失敗から学ぶ、SOP作成の落とし穴

SOP作成においてよくある落とし穴の一つは、過度に複雑な手順を設定することです。複雑すぎるSOPは、従業員が守ることを躊躇し、最終的には無視される原因となります。SOPは、実行可能で理解しやすいものでなければなりません。

もう一つの一般的な問題は、SOPの更新と維持の管理を怠ることです。企業のプロセスが変化するにつれて、SOPも進化し続ける必要があります。古い情報に基づいたSOPは、混乱を招き、作業の非効率を引き起こす可能性があります。

最後に、従業員の関与の欠如もSOPの失敗につながります。SOPの作成と実装は、関連するすべてのスタッフの入力と協力を必要とします。従業員がプロセスに貢献し、所有感を持つことで、SOPの受け入れと遵守が促進されます。

SOP作成の際は、これらのベストプラクティスと落とし穴を念頭に置き、企業特有のニーズに合わせてカスタマイズすることが成功の鍵です。

SOPを作成するステップ

SOPは、大きく以下の5つのステップで作成できます。各ステップの実施事項とポイントについてご説明します。

  1. SOP作成の目的の明確化
  2. 作業内容の洗い出し
  3. 骨子・執筆ルールの整理
  4. 作業内容の記入
  5. 現場メンバーの確認と修正

1. SOP作成の目的を明らかにする

当然のことですが、まずはなぜSOPを作成するのか、目的を明確にしましょう。SOPを作成するにあたって、現場の属人化を解消すること、業務品質を安定させること、業務品質を向上すること等、何を目的とするかによって記載内容や作成方法が変わってくるためです。複数名で作成する場合には全員で共通認識を持っておくこともポイントです。

2. 作業内容を洗い出す

SOPの構成や記載内容を決めるため、まずは作業に関わる情報を洗い出して全体像を把握します。基本の手順のほか、利用するシステムや対応のパターンなども合わせて確認しましょう。作業の洗い出しは作成ステップの中で最も時間のかかる工程ですが、完成度の高いSOPを作成するために非常に重要な部分です。
洗い出しの際には、作業内容の抜け漏れがないよう時系列に洗い出すことがおすすめです。また、初めから綺麗にまとめようとせず、まずはメモ程度に洗い出しましょう。

また、担当者が異なる場合は、各作業者に対して業務ヒアリングを行う必要があります。ヒアリングの方法やポイントについて記載している記事を参考に取り組んでみてください。

3. SOPの骨子と執筆ルールを整える

作業内容を記載するための媒体を決め、骨子を作成します。一般的にマニュアルや手順書はパワーポイントやドキュメント、excelなどにまとめることが多いかと思います。決まりはありませんが、画像が多い場合はパワーポイントやドキュメント、作業項目やチェック観点が多い場合はexcelと言ったように、作業内容とSOP作成の目的に合わせて適切なツールを選びましょう。
その上で、誰にでも読みやすいSOPを作成するために執筆時のルールを決めておきます。見出しの設け方、文字色、強調ポイントの書き方など、ある程度決まりを設けるだけでも十分わかりやすい手順書を作成することができます。特に複数名で分担して作成する場合に注意が必要です。

4. 作業内容を記入する

2.で洗い出した作業内容を、3.の骨子・執筆ルールに従って記入していきます。
骨子作成時の注意点でもありますが、ここでは作業の粒度設定がポイントになります。例えばシステムを操作する場合でも、ひとつの作業を「システム上でXXの操作をする」のように業務のまとまりで記載するか、「この画面のこのボタンをクリックする」のようにアクション単位で記載するかによって手順書の具体度が大きく変わります。抽象的すぎると読者による判断が必要になりズレが生じやすくなりますが、具体的すぎても細かすぎて読みづらくなってしまいます。作業内容の特性に合わせて、適切なレベルで記載するよう意識しましょう。

またSOP(標準作業手順書)の作成にはoctpathもおすすめです。

5. 現場メンバーに確認を依頼する

一通り手順の記入を終えたら、実際に作業を担当しているメンバーに内容の確認を依頼します。管理者と現場の作業担当者とでは見えている範囲や視点にギャップがあります。現場メンバーの立場から見て齟齬はないか、意識すべきポイントは間違っていないかなど、細かい部分まで確認してもらうようにしましょう。

もし修正点があれば一度内容を修正してから再度確認を依頼し、問題なく記入ができたらSOPの完成です。

SOPを作成する際のポイント

以下のポイントに留意して、SOPの作成を進めて見てください。

読者の視点に立って記載する

SOPは現在の担当者以外のメンバーも読者になりえます。例えば新しく入社・異動してきたメンバーや、アウトソーシング先の作業者などです。SOPは作業内容をまったく知らないメンバーでも理解でき、同じように作業ができるよう、正確に分かりやすく手順を書き記す必要があります。SOPを読みながら作業をするメンバーの立場に立ち、丁寧に記載するように心がけましょう。

定期的に内容を更新する

常に正確な内容を記載しておくため、定期的に内容を更新することがポイントです。内容が古くなりSOP自体が形骸化することのないよう、細かな変更であっても都度反映することが理想的です。また、更新忘れを防ぐため、振り返りのタイミングを予め決めておくことをおすすめします。業務次第ですが、最低でも半年に1度は見直しの機会を設定しておくと安心です。

更新しやすい形態を整える

上記の項目と関連しますが、業務の変更があった際に気軽に対応できるよう、そもそも更新しやすい形態を整えておくことが重要です。例えば、エクセルやパワーポイントを利用する場合はメンバーが簡単に編集できるよう共有フォルダに保管しておくこと、手順書の管理が可能なクラウドサービスを利用すること、などです。

デジタルツールを活用したSOPの管理と共有

デジタル時代の現在、SOPの管理と共有はデジタルツールを活用することで、より効率的かつ効果的に行うことが可能です。このセクションでは、推奨されるSOP管理ツールを比較し、デジタル化がSOP管理にどのような利点をもたらすかを探ります。

推奨されるSOP管理ツールの比較

  • Confluence(コンフルエンス)
    ドキュメント管理とチームコラボレーションに優れたツールで、SOPの作成、共有、更新を簡単に行うことができます。テンプレート機能を活用して一貫したSOPフォーマットを維持し、検索機能で必要な情報を迅速に見つけることができます。
  • Google Docs(グーグルドキュメント)
    シンプルで直感的なインターフェイスを持ち、リアルタイムでの共同作業が可能です。Googleドライブとの連携により、ドキュメントの管理とアクセス制御が容易になります。
  • Microsoft SharePoint(マイクロソフト シェアポイント)
    大規模な組織に適した強力なドキュメント管理システムです。高度なセキュリティ機能とカスタマイズ可能なテンプレートを提供し、SOPの管理を企業のニーズに合わせて細かく調整することができます。

各ツールは特定のニーズに合わせて設計されており、選択する際は、使用環境、利用可能なリソース、そして求める機能性を考慮することが重要です。

SOPのデジタル化がもたらす利点

SOPをデジタル化することで、以下のような多くの利点があります。

  • アクセス性の向上
    従業員がいつでもどこでもSOPにアクセスできるようになります。これにより、作業場所や時間に制限されることなく、正確な手順に従った作業が可能になります。
  • 更新と共有の容易さ
    デジタルツールを使用すると、SOPの更新と共有が容易になり、常に最新の情報が全関係者に届けられます。
  • エラーの減少
    一貫したフォーマットとテンプレートを使用することで、人為的ミスを減少させ、作業の標準化を促進します。
  • トレーニングとオンボーディングの改善
    新しい従業員が必要なSOPを迅速に学べるようになり、トレーニングプロセスが効率化されます。
  • 文書管理の強化
    バージョン管理、アクセス権限設定、監査証跡の保持など、デジタルツールのセキュリティ機能により、SOPの文書管理が強化されます。

SOPのデジタル化は、組織の運用効率を大幅に向上させることができるため、適切なツールの選定と導入が企業の成功に不可欠です。

おまけ|SOPをクラウドで管理

弊社で提供しているプロセスマネジメントツール「octpath」は、SOPに記載する業務手順をフロー形式で登録し、そのまま進捗管理まで行うことのできるサービスです。手順と合わせて期限や担当者、チェックリストも登録できるためミスや作業漏れを防止でき、進行管理を効率化できるだけでなく、教育や引き継ぎもスムーズに進行できます。ぜひご検討ください。
サービスサイト: https://octpath.com/

octpathのサービス納品プロセスに関わるイメージ画像です

おわりに

SOPの概要と作成手順は理解いただけましたでしょうか。完成までには少し工数ががかかりますが、一度作成できれば様々な場面で役立ちますので、ぜひ記事を参考に作成してみてください。また、業務の規模が大きければ大きいほど、メンバーの協力が必須です。分かりやすく役立つSOPを作成するため、全員で協力しながら作成に取り組んでみてください。

オススメの記事
架電とは?ビジネスでの正しい使い方6選|業務内容や手順も解説
もっと見る

架電とは?ビジネスでの正しい使い方6選|業務内容や手順も解説

架電(かでん)とは「電話をかけること」です。架電はビジネスの場面で使う用語で日常生活で架電という言葉を使う機会は、あまりありません。意味や使い方を正確に知っておきたい一方で、別のわかりやすい言葉に言い換えをしている企業も…
組織図テンプレート|無料で使えるサイトと簡単な作成方法を紹介
もっと見る

組織図テンプレート|無料で使えるサイトと簡単な作成方法を紹介

組織図テンプレート|無料で使えるサイトと簡単な作成方法を紹介 組織図とは組織の内部構造を図式化したもので、組織体制を視覚的に把握できます。手間をかけずに組織図を作るには、ウェブ上で公開されているテンプレートを利用するか、…
マインドマップツール5選|ビジネスで使えるおすすめツールを紹介
もっと見る

マインドマップツール5選|ビジネスで使えるおすすめツールを紹介

マインドマップは自分の思考を整理したいときに役立つもので、ビジネスで活用する際にはチームメンバーと共同編集できるマインドマップツールを使うのがおすすめです。 ツールに搭載されている機能は多種多様で、タスクやプロジェクトの…