ビジネスプロセスとは、業務の開始から終了までの一連の作業工程を指しますが、具体的な活用方法のイメージが湧きづらい方も多いのではないでしょうか。本記事では、弊社や支援先の企業様の業務を参考に、ビジネスプロセスの具体例について記載しています。ぜひ記事を参考に、ご担当業務がどのようなプロセスかを確認してみてください。

ビジネスプロセスとは

そもそもビジネスプロセスとは、顧客に対して製品やサービスを提供するまでに生じる業務全体の流れのことを指し、ざっくりまとめて業務の開始から終了までの一連の工程と捉えていただくと分かりやすいかと思います。「業務プロセス」「業務フロー」「業務工程」などと言い換えられるケースもあります。

基本的には定型業務やルーティン業務といった、作業手順がある程度決まっていて何度も発生する可能性がある業務を中心に活用される考え方です。業務の流れや手順を画一化することで、再現性をもって取り組み納期や品質を安定させることができます。プロジェクトのように進め方が流動的で単発で発生するような業務においてはあまり利用されません。したがって、ビジネスプロセスとして言い表せる業務には以下のような特徴があります。

  • 対象の業務が2つ以上の作業・タスクによって成り立っている
  • タスク同士が関連している(前後関係がある、並列処理がある等)
  • 業務全体の流れや手順が決まっている
  • 複数名・複数部署が関わっている

プロセスの粒度や長さ、関係者の人数などに決まりはありません。定常的に発生し、複数のタスクが必要な業務であれば、ビジネスプロセスに該当すると考えていただいて構いません。

業務をプロセスとして捉えることのメリット

本来ビジネスプロセスとして捉えられるはずが、業務整理ができておらずプロセスとして認識されていないケースも多々あります。業務をプロセスとして把握することには以下のメリットがあります。

継続的な業務改善につながる

業務をプロセスとして捉えることで、タスク同士の関連性が明らかになります。誰がいつ何を行うのか、担当者ごとの作業範囲はどこまでなのか、各作業がどのような役割を担っているのかが分かることで、全体を最適化するためのポイントを見つけやすくなり、業務の改善につながります。また、タスクの可視化・管理→改善点の発見というサイクルを繰り返していくことで、継続的に改善に取り組むことができます。

業務理解が進み、品質が安定する

業務をプロセスとして可視化することで、チーム全体で業務についての正しい共通認識を持てるようになります。作業方法やルールが統一されることで、全体としての作業品質・スピードの安定をもたらします。

業務の拡大が容易になる

対象の業務をプロセスとして捉えた結果の一例として、マニュアルや作業手順書の作成が上げられます。プロセスを正しく認識して可視化・文章化することで新しいメンバーが増えた場合にも早期に業務を装着して活躍いただくことが可能です。そのためプロセスとしての認識を持つことが容易かつ早期に業務の拡大、対応量の増加に繋がります。また、教育者側の指示やマネジメントの負荷も下げられます。

ビジネスプロセスの具体例

ビジネスプロセスの具体的なイメージを持てるよう、実際の業務例をご紹介します。弊社で実際に取り組んでいる業務や過去に支援させていただいた企業様の実例を主に掲載しています。自社の業務にもビジネスプロセスに該当するものがあるか、考えながら読んでみてください。

顧客オンボーディング業務

サービスや製品の受注後に対応する手続き業務です。受注や契約をトリガーとして、納品を完了するまでに必要なサポートや各種手続きを指し、営業サポートチームなど専門の部隊を設けられている企業様が多いです。
例えば以下は、弊社が過去に支援させていただいた、クラウドサービスを提供している企業様の提供プロセスです。

  1. 営業担当者が新規にサービスの利用申し込みを獲得
  2. 営業担当からサポートチームに顧客情報を引き継ぎ、サービス提供準備を依頼
  3. サポートチームがそれぞれ担当業務を履行
    1. 契約手続き
    2. サービスセットアップに必要な情報のヒアリング
    3. システム開発担当によるサービスのセットアップや環境発行
  4. 提供準備の完了をカスタマーサクセスチームへ連絡
  5. カスタマーサクセスチームがユーザー様向けのレクチャーを実施
  6. サービスの利用を開始
  7. 1週間後、利用状況ご確認のためにお打ち合わせを行う

s営業や顧客サポートの担当業務プロセスは、事業や組織体制によって大きく異なります。また、ユーザーと関わったり先方のアクションを待ってから進行したりする業務も多いため、ミスや遅れを発生させないよう、各アクションの担当者、タスクの進行順などの子細な情報も把握しておくことが重要です。

動画やコンテンツなどの「制作業務」

動画やイラスト、記事、その他コンテンツの制作業務です。案件の受注から計画、最終的な納品・検修までの一通りのプロセスを指します。納品までの期間やプロセスは受注の形式やコンテンツの内容によってさまざまです。また、取り組みの流れや手順についても、毎度共通している場合とプロジェクト形式で都度計画する場合の2種類があります。
以下は弊社と関わりのある映像制作会社にて、映像を利用したイベントを開催する際の事例です。

  1. お客様からのお問い合わせをいただく
  2. ご要望に合わせてお見積もりを作成し、提出
  3. 同意いただき、受注が決定する
  4. 当日のイベント実施に向けてそれぞれが準備作業を行う
    1. 契約手続きの履行
    2. イベントで利用する動画やコンテンツの制作
    3. 会場の確保
    4. 当日運営スタッフとの打ち合わせ
    5. お客様との適宜調整やご相談
  5. リハーサルの実施
  6. 当日運営
  7. 開催報告の作成
  8. ご請求書の発行・送付
  9. 振り込み確認

制作系の業務は企画や構想が必要なため非定型的な業務に思えますが、上記のように全体のプロセス自体はおおかた決まっているケースも多くあります。きちんと全体の流れを整理することでスムーズな管理・運営が可能になります。

不動産業界での各種契約手続き

弊社がご支援している不動産業界の企業様のご対応業務でもビジネスプロセスが存在しています。以下の例は、新規に賃貸契約が確定してから入居が完了するまでの業務です。

  1. 新規入居が確定する
  2. 入居者に契約書を送付する
  3. 契約説明を実施する
  4. 入居にあたっての準備作業を実施する
    1. 鍵交換の依頼
    2. クリーニング依頼
    3. 入居者情報の確認
    4. オーナー様への各種連絡
  5. 受け渡し日に向けての準備をする
    1. 鍵受け渡し日の日程調整
    2. 新規入居のギフトセットの用意
    3. 物件の最終確認
  6. 受け渡し

家賃の交渉や物件の備品交換等が必要であれば、さらにオペレーションが追加されます。オーナー、居住者、その他清掃会社など複数の企業が関わる必要があるため、全体の動きの管理が重要です。物件契約のほか、駐車場の契約手続きや退去時の申入れから解約までの流れなども、不動産業界で発生するプロセスです。

出荷・配送手続き業務

一つ目にご紹介した顧客オンボーディング業務と類似しますが、ECサイト運営会社や製造系の企業様で対応される納品業務です。商品の受注が決定してから出荷が完了するまでにも、以下のようなさまざまなオペレーションが発生します。

  1. 商品を受注
  2. 受注内容を確認(個数、品名、配送先など)
  3. 指定の商品を規定の方法で梱包
    1. ギフト包装が必要であればラッピング
  4. 注文書を指定のフォーマットで印刷し、ファイリング
  5. 出荷手続き
  6. 発送完了連絡

近頃では複数の販売サイトに出品をしているケースも多く、また配達量自体も増加しているため、どの企業でもミスや漏れなく製品をスピーディに出荷することの重要性が高まっています。

入社手続き業務

ビジネスプロセスの例として最もよく取り上げられるのが「入社手続き業務」です。複数の部署が関わりながら進行し、採用活動を続ける限り繰り返し発生する業務のため、プロセスとして把握・管理することが非常に重要な業務です。例えば、以下のような流れがあります。

  1. 採用担当者が、入社者の情報をフォームで回収する
  2. 情報システム部がPCの手配やアカウントの初期設定を行う
  3. 総務部が社員証を準備する
  4. 人事部が労務関係の書類を回収する
  5. 労務関係書類が回収できたら、配属先事業部で研修を実施する

さらに細かく分解すると、例えば「4.労務関係書類の回収」の中でも書類の準備→記入依頼→記入待ち→回収→確認→提出など複数のステップに分けられ、それらも粒度の細かいビジネスプロセスと言えます。
その他、人事部の対応業務では、例えば以下のようなビジネスプロセスがあります。

  • 採用業務(候補者からの応募、一次面接、二次面接、最終面接、合否連絡)
  • 退社手続き(退社申請から各種書類手続きの完了まで)
  • 人事評価の実施(評価の依頼、実施、回収と分析、賞与や異動先の決定)

備品の購買・発注業務

総務部の担当業務にも、多くのビジネスプロセスがあります。例えば、社内のお問合せ対応、経費精算、郵便や宅配便の受け渡しなどです。以下は、過去に支援させていただいた企業様の総務部で実施されていた、備品の購買・発注業務の例です。

  1. 従業員が総務部へ備品の発注を依頼する
    • iPhone、PC(Mac)、PC(Windows)、ペン、マーカー、用紙などの中から選択
    • 個数を指定
  2. 依頼内容を総務部の担当者が確認する
  3. 社内倉庫に行き、備品の在庫を確認する
    • 在庫があれば、そのまま依頼者へ送付する
    • 在庫がなければ発注し、届き次第依頼者へ送付する
    • PCの場合は、初期設定や必要なアプリのインストールを行ってから送付する
  4. 購入内容と領収書を社内システムに記録する

実際の業務では、上記のように、内容によって条件分岐が発生するケースも多くあります。分岐が発生することで関係部署や対応内容が変わり、業務が複雑化してしまう要因となるため、プロセスとして整理することの効果が現れやすい業務です。

ビジネスプロセスの管理方法

ビジネスプロセスのイメージは掴めましたでしょうか。参考として、ビジネスプロセスを活用するための管理方法についてざっくりとご説明します。より詳細な手順については、ビジネスプロセスの管理方法について記載している記事を参考にしてください。

活用のステップ

業務をプロセス単位で活用していくためには、大きく「ビジネスプロセスの可視化」→「管理」→「効率化」の3つのステップで進めていく必要があります。

1.ビジネスプロセスの可視化
まずは、今回ご紹介したようにビジネスプロセス全体を可視化します。簡単な作業であれば業務の開始から終わりまでの流れを箇条書きで洗い出してもらえれば事足りるかと思いますが、複数名、複数部署が関わる場合には作業手順書や業務フロー図を用いてアウトプットとしてまとめておくことが一般的です。

2.業務の管理を徹底
可視化した後は、ビジネスプロセスに合わせて業務が問題なく進行されているかを判断するための管理を行います。タスク管理ツールやexcelなどを利用し、進捗状況や担当者を確認しながら、通常通りに業務を進行していきます。

3.課題に合わせて業務を改善
ビジネスプロセスの管理を行う中で、プロセス上の課題が明らかになります。例えば、作業のミスや遅れが毎回発生している箇所、コミュニケーションに齟齬が発生しやすい部分、などです。改善すべきポイントが見えてきたら、それに合わせてプロセスの改善案を検討します。

このように、課題の発見と改善のサイクルを繰り返していくことで、継続的に業務効率化に取り組むことが可能になります。

(番外編)プロセスマネジメントツールを利用する

弊社が提供している「octpath」は、ビジネスプロセスの管理ができるサービスで、作業手順を流れに沿って登録し、そのまま業務管理ができます。

octpathのサービス納品プロセスに関わるイメージ画像です

マニュアルをステップごとに登録し、そのまま進行管理ができます。流れに沿って担当者のアサインや期限設定ができるだけでなく、チェックリストの挿入や条件分岐の処理も可能で、ミスや漏れの発生を未然に防ぎ、教育や引き継ぎにかかるコストも削減できます。
業務の属人化や煩雑な管理に課題を感じられている方は、ぜひ詳細をご確認ください。
サービスサイト: https://octpath.com/
また、その他のプロセスマネジメントツールについては、BPMツール6選をご紹介している記事も参考にご覧ください。

おわりに

ビジネスプロセスのイメージは湧きましたでしょうか。ビジネスプロセスを理解し、自身の業務をひとつのプロセスとして捉えることで、タスク管理や業務改善サイクルの向上に繋がります。ビジネスプロセスについて理解いただけた方は、ぜひビジネスプロセスの管理方法をまとめた記事を参考に、業務改善に取り組んでみてください。

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