PMBOK(ピンボック)とは、プロジェクトマネジメントに関する基礎知識から具体的な取り組みの方法までを体系化してまとめたガイドブックのことを指します。本記事では、PMBOKの概要と内容、取り組む際のポイントについて記載していますので、参考にしてください。

PMBOKとは?基本を解説

言葉の定義と概要

PMBOK(ピンボック)とは、Project Management Body of Knowledgeの頭文字をとった略称です。アメリカに本部を持つプロジェクトマネジメント協会(PMI)が発行している、プロジェクトマネジメントについての知識体系をまとめたガイドブックのことを指します。

詳細は後述しますが、PMBOKはプロジェクト進行に関わるノウハウをプロセスベースにまとめたもので、プロジェクトを成功させるための大まかな流れや意識すべき観点について記載されています。具体的な技術や手法についての記載はないので、プロジェクトマネジメントにおける“教科書”のような位置付けで利用されます。

PMBOKの特徴

国際的な基準がまとめられている

PMBOKはプロジェクトマネジメントにおける唯一の国際的な基準として全世界に浸透しています。英語と日本語の他にもフランス語やアラビア語など様々な言語に翻訳されており、世界中のあらゆる場面で利用されています。

世界で初めてプロジェクトマネジメントを体系化した

PMBOKは、世界で初めてプロジェクトマネジメントについて体系的にまとめたドキュメントです。プロジェクトマネジメントという概念自体はPMBOK誕生以前からも利用されていましたが、指し示す範囲や進行方法は定まっていなかったため、プロジェクトの担当者が各々の方法でバラバラに取り組んでいました。PMBOKが誕生し基準が一つに定まったことで、世界的にプロジェクトマネジメントの取り組みの基礎が確立されました。

内容が更新され続けている

PMBOKは1987年に初めてホワイトペーパーとして出版され、それ以降も約4年おきに内容が更新され続けています。現在は第6版まで書籍化され、第7版の制作が進行しています。
業務の進め方やプロジェクトの在り方は企業や世の中の状況に合わせて日々進化していますが、PMBOKが更新し続けられることで常に最新のスタンダードを知ることができます。

PMBOKに関連する用語

PMI

先述したプロジェクトマネジメント協会(Project Management Institute)です。アメリカに本部があり、日本にも支部が存在します。主にプロジェクトマネジメントの普及・促進活動を行う非営利団体で、PMBOKの資格の認定を行っています。

PMP

PMPはProject Management Professionalの略称で、PMIが認定しているプロジェクトマネジメントに関する国際資格です。プロジェクトマネジメントに関する経験や知識を測ることで、プロジェクトマネジメントのプロとしての認定を行っています。
PMPはプロジェクトマネジメントに関する知識だけでなく、取り組みのステップやポイントなど、実践的な内容も含まれます。資格勉強にありがちな“知識はあるが実際には活かせない”という事態を防ぐことができます。詳細については、一般社団法人 PMI日本支部がまとめているPMPに関する記事をご覧ください。

PMBOKを用いるメリット

プロジェクトマネジメントに関する書籍は多数ありますが、その中でもPMBOKを利用することによる代表的なメリットは以下です。

あらゆるプロジェクトに適用できる

PMBOKには、あらゆるプロジェクトに適用できるよう汎用的な内容が抽象的に記載されているため、該当するプロジェクトの規模や内容に応じて必要な箇所のみ利用したり、自社の状況に落とし込んで適宜解釈をしながら活用することができます。これは、プロジェクトに合わせて方法を仕立て直すという意味で、洋服の仕立て直しを意味する「テーラリング(tailoring)」と呼ばれる方法です。

体系立てて学ぶことができる

PMBOKにはプロジェクトマネジメントに必要な内容が体系立ててまとめられているため、プロジェクトマネジメントに関わる基礎を一から学ぶことができます。プロジェクトの内容や経験に寄らず、プロジェクトマネージャーにとって必要な知識を幅広く理解することができます。

国際基準を知ることができる

先述している通りPMBOKは全世界で幅広く利用されている書籍のため、世界で行われているプロジェクトマネジメントの基準を知ることができることもポイントです。大規模なプロジェクトに参加したことのない場合や、社外の方を含めたプロジェクトを進行する場合には、全体の雰囲気やレベル感を理解することができるため、おすすめです。

PMBOKの目的とゴール

PMBOKのゴールは一般的なプロジェクトと同様、QCDの向上です。「QCD」とは、生産管理の軸となる3つの単語の頭文字をあわせた言葉で、生産管理の観点・指標として用いられています

  • Q: Quality(品質)
  • C: Cost(費用)
  • D: Delivery(納期)
QCDの概要を表した画像です。
QCDの関係性について表した図

「企業が製品を生産し、顧客まで届ける」という一連の生産プロセスの生産性をどのように評価すれば良いか?という場合に、これら3つの観点で要素分解して考えることでその製品・企業が優れているかを把握することができます。QCDについて詳細に説明している記事も参考にしてください。

PMBOKではただQCDの向上を目指すのではなく、“業務プロセスを管理すること”によるQCDの向上を目的としています。PMBOKに記載されたプロセスにしたがってプロジェクトを進行していく中で、無駄なく効率的に業務を進行し、ゴールを達成するということを重視しています。

PMBOKの知識体系

第6版のPMBOKでは、プロジェクト進行の方法について5個のプロセス群と10個の知識エリア、3つのパートに分けて記載されています。
これらの知識体系は第7版では削除されるとされていますが、プロジェクトマネジメントの基礎の考え方であることに変わりはありませんので、イメージをしながら確認してみてください。

プロセス

PMBOKでは、プロジェクトマネジメントの取り組みを以下の5つのステップに分けており、1から5まで以下のステップの順で進めていくことを推奨しています。

PMBOKのプロセスの図です。
  1. 立ち上げ: プロジェクトを実行するために、目標の設定や予算の策定、各種関係者との調整を行う
  2. 計画: プロジェクトを進行するための計画立てを行う
  3. 実行: 計画した通りにプロジェクトを実行していく
  4. 監視・コントロール: 実行していく中で進捗状況やパフォーマンスの管理を行い、計画の修正や立て直しを行う
  5. 終結: プロジェクト終了に向け、情報整理や振り返り、次回への申し送りを行う

大まかな流れや考え方は一般的なプロジェクト管理の方法とほぼ同じですので、イメージしやすいかと思います。PMBOKでは大規模なプロジェクト(関係者が多い、社外のメンバーも含む等)での利用が想定されているため、「立ち上げプロセス」「終結プロセス」のようにプロジェクトの開始・終了のタイミングで行う社内調整部分についてもプロセスに含まれているのが特徴です。小規模なプロジェクトの場合には省略しても構いません。

知識エリア

知識エリアは、マネジメントの観点と考えていただくとわかりやすいと思います。プロジェクトマネジメントを行うために必要な知識がまとまっています。

PMBOKの知識エリアについての図です
  1. 統合管理: プロジェクトの指揮・管理に関わる全般的な業務の管理
  2. スコープ管理: プロジェクトの範囲を定義し、必要なアクションを管理
  3. スケジュール管理: プロジェクト終了までの期間内で計画を完了するための管理
  4. コスト管理: 予算内でプロジェクトを進行するための見積り、財源確保、コントロール
  5. 品質管理: 品質要求事項を満たすための計画立てと、品質管理
  6. 資源管理: プロジェクト進行において必要な資源の特定と確保、マネジメント
  7. コミュニケーション管理: 円滑に進行するための情報収集、共有、調整
  8. リスク管理: リスクの特定と対応策の洗い出し、発生時の対応
  9. 調達管理: 外部から資源を調達するための計画立てと管理
  10. ステークホルダー管理: ステークホルダー間での調整、意思決定プロセスの確定。

プロセスと同様、10個の項目の中にそこまで目新しいものはなく、これまでにプロジェクトマネジメントを行ったことのある方であれば大方のイメージはつくかと思います。
プロセスそれぞれで10個全ての知識エリアを利用するわけではなく、各プロセスの中で必要な知識エリアを適宜利用しながら進行していきます。各知識エリアを使用するタイミングや実行内容についてはガイドに記載されています。

パート

パートは、各知識エリアを活用する際の手法です。知識エリアごとに、以下の3つの形式に分けて活用します。

  1. インプット(入力): 設計書、計画書
  2. ツールと技法: 利用するシートやツール、それらを活用する方法
  3. エクスポート(出力): 成果物。ドキュメントや、製品など

例えば統合管理の中でのインプットとして「計画書」を作成する、スケジュール管理のツールとしてガントチャートを作成し週次で更新する、などです。こちらも全てのプロセス・知識エリアの中で3つの手法を取り入れる訳ではなく、決まった場面でそれぞれを活用します。

PMBOKでは、ここまでにご紹介したプロセス、知識エリア、パートを掛け合わせながら、プロジェクトを進行していきます。

PMBOKに取り組む際のポイント

プロジェクトに具体的に落とし込んで使用する

先述している通り、PMBOKには汎用的な内容が抽象的に記載されており、具体的な手法や技術などの実践的な内容についてはほぼ記載がありません。PMBOKはあくまでも基礎を固めるための材料として活用し、プロジェクト進行時には状況に合わせて具体的に落とし込むこと、自ら判断することを心がけましょう。

「メンバーの役割」には言及されていない点に注意する

当然ですが、プロジェクト進行時には「プロジェクトマネージャー」や「プロジェクトリーダー」などの役職が必要になります。しかし、PMBOKにはメンバーの役割やスキルなど、プロジェクトに関わる人材にについてはほとんど言及されていません。チームの編成や役割については自社で検討する必要がありますので、注意してください。

最新版をキャッチアップするよう心がける

冒頭で述べたように、PMBOKは複数回内容が更新されています。特に第7版では、第6版以前と比較して大幅に変更が加えられる予定です。内容が更新されたからと言って以前までの内容が一切利用できなくなるわけではありませんが、プロジェクトの時流に合わせてPMBOKも更新されているので、最新版を利用するよう意識してください。

おわりに

PMBOKはプロジェクトマネジメントの基礎を体系的に学ぶことのできるいわば教材です。これから大規模なプロジェクトマネジメントに関わる方はぜひ一度手にとってみてください。
また、PMBOKはプロジェクトに関わる人材の教育にも利用することができます。社内メンバーのスキルアップのために取り入れてみることをおすすめします。

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