サイロ化とは「あるシステムや部門が、他のシステムや部門との連携・情報共有をせずに単独で進行し、全体の中で孤立してしまう状態」です。特定の条件に該当すれば規模を問わずどの企業・部署でも陥る可能性があります。
この記事ではサイロ化の概要と解決方法について説明しています。

サイロ化とは

意味と由来

サイロ化とはある部署やチームが、適切な情報共有や連携ができていないために社内で孤立している状態を指します。最近では業務改善に関わるワードとして「属人化」がよく用いられますが、属人化が部署やチーム単位で発生していると捉えていただくと分かりやすいと思います。

貯蔵庫のサイロ
参考: 貯蔵庫のサイロ

そもそもサイロとは左図のような「農産物や家畜の飼料を保管する貯蔵庫」のことで、内容物が混ざらないよう内部を仕切って保管することができる設備を指します。そこから派生して、“部署が縦割りになっており、他部署と連携ができない状態”をサイロ化というようになりました。

ビジネスにおけるサイロ化とは

ビジネスシーンにおいては、サイロ化は大きく以下2つの意味に分かれます。

組織における「情報」のサイロ化

組織内で、チーム・部署間の連携が取れなくなっている状態です。実際には1つの部署だけが独立するよりも、複数部署間での情報連携ができていない状態が多く見受けられます。
他部署の動きが見えないために複数部署で同じ業務を重複して進めてしまったり、伝えたはずの情報が伝達されていなかったりといった無駄が発生します。場合によっては情報伝達のミスによって大きなトラブルに繋がってしまうこともあります。

システム間の「データ」のサイロ化

システムにおいてもサイロ化に陥ることがあります。システムやアプリケーション間の連携が不十分なために、データの保存先が様々なツールに分散していたり、そのせいで十分にデータを活用できていないといった状態をもたらします。部署によって別々のフォーマットを使用している・特定のソフトウェアでしか扱えないデータ形式を用いていることなどが原因で発生します。

両方の観点から、自社の業務がサイロ化していないか見直してみてください。今回の記事では、業務改善の観点から「組織内で発生するサイロ化」に重点をおいてご説明します。

サイロ化を解消することの効果

サイロ化が組織にもたらす悪影響と、それを解消することのメリットについて解説します。

無駄な業務を減らし、効率化できる

サイロ化によって情報共有が不足すると「複数名が同時に同じ作業をしてしまう」「いちいち状況確認をしなければいけない」等の細かな無駄が発生します。こうした小さい無駄が積み重なることで、業務プロセス全体の非効率をもたらします。
また、進捗確認や情報共有を一度面倒と思うと情報共有への心理的障壁が高くなり、どんどん共有頻度は落ちていきます。その結果、余計にサイロ化が進み、非効率になっていくという悪循環にも陥りかねません。
サイロ化を解消することで業務におけるムダを減らし、業務を効率化することに繋がります。

サービス品質の安定につながる

サイロ化は社内の業務進行だけの問題ではありません。例えば顧客のニーズや要望は、一般的には顧客と接する機会の多い営業部がもっとも詳しく把握しています。それらの情報がマーケティング部や開発部に共有されなければ、顧客のニーズに合わせた一貫性のあるサービスを提供することが難しくなります。このようにサービスの提供プロセスには複数の部署が関わっているため、サイロ化はサービス品質にも直接的な影響を及ぼします。
サイロ化の解消によって部署やチームを跨いだ情報共有が可能になることで、サービス品質の安定や向上を実現できます。

組織やサービスの発展性・拡張性を向上できる

組織の良さの1つは多様性です。異なる考えや価値観を持つメンバーが意見を交わし合うことで革新的な意見が生まれ、イノベーションが生まれやすくなります。サイロ化を解消することで各部署の連携が可能になり、あらゆる意見や手法の共有によって組織やサービスの発展にもつながりやすくなります。

サイロ化に陥ってしまう要因

なぜサイロ化してしまうのか、主な要因は以下です。

情報保護の観点から共有ハードルが上がっている

昨今ではプライバシー保護や情報漏洩の観点から、資料やデータの閲覧範囲に制限をかけていることがほとんどです。気軽に情報を共有できなくなった結果、本来は共有すべき情報も伝達されづらくなっている現状があります。

情報を共有しない文化が根付いている

日頃から業務の報連相が曖昧になっていたり、社内政治や競争が発生している企業では自部署が不利になる情報を開示しないために、情報を可能な限り隠すような文化が根付いていることがあります。この場合は、部署間の情報共有だけではなく日頃の情報の扱い方そのものから見直す必要があります。

意思決定権が分立している

各部署が自由にツールを導入できる結果、コミュニケーションツールやタスク管理ツールが混在してしまうケースがよく見受けられます。部署単位で導入すること自体は悪いことではありませんが、その場合、合わせて全社での連絡経路や方法を明確にしておく必要があります。

無意識にサイロ化しているため、気づけていない

サイロ化は、組織が拡大していく中で無意識に陥ってしまうことがほとんどです。組織が小さいうちは各部署や事業の状況を把握することができますが、一定以上の規模になると営業、人事、経理など専門性ごとに部署を分割することで情報が遮断されるためです。部署を分けることには“業務を効率的に進められる”というメリットもありますが、各部署が連携できるよう体制を整えていなければ、思うように情報やノウハウが共有されずサイロ化に陥ってしまいます。

サイロ化しているかを確認する方法

最後に、サイロ化を解消するための方法をご紹介します。サイロ化を解消するためには他部署との連携が不可欠です。実施ハードルの低いものから、少しずつ取り組んでいくと良いでしょう。

業務の可視化に取り組んでみる

まずは、サイロ化している部署を把握するため、業務全体の可視化に取り組みます。問題がある部署が分かったら、その部署と原因に合わせて必要な施策に取り組んでください。可視化の基本的な概要について説明している記事も、参考にしてみてください。

業務ヒアリングを行う

部長や課長が業務改善に取り組む場合は特に、現場の状況を詳しく知っておかなければ適切な解決策に取り組むことはできません。業務を詳細に把握するためにも、業務関係者へのヒアリングがおすすめです。業務ヒアリングの方法を説明した記事を見て取り組んでみてください。

情報共有の方法を見直す

部署やチーム間での情報連携に限らず、報連相そのもののルールや情報伝達の方法を見直してみてください。まずはチーム内や小規模なチーム同士など、身近で小さい組織でのやり方から着手するのが取り組みやすいと思います。以下のような観点で見直してみてください。

  • 業務報告が一方的になっていないか
  • 報連相の基準に共通認識をとれているか
  • 他部署に依頼した業務の進捗管理はできているか
  • 部署やチームを跨いだ連絡手段が設けられているか

サイロ化を脱するための方法

社内の情報共有ルールを設ける

こちらが最も一般的です。サイロ化が発生している原因に合わせて社内の情報共有の方法、使用するツール、共有のタイミングや基準を見直してルール化します。一部の社員のみが実践してもサイロ化を防ぐことはできないので、社員全員に周知し、常に意識し続けてもらうことが重要です。

社内施策を設置する

気軽なものから始めたい場合は、まずはコミュニケーションのハードルを下げるため以下のような施策に取り組んでみてください。

  • 部門を跨いでセミナーやトレーニングを行い、役立つ知識を共有する
  • ウェルカムランチなどの社内イベントを実施し情報交換する
  • 社内プロジェクト開始時、意図的に他部署のメンバーを巻き込む

ただ、企業規模が大きい場合は全員のコミュニケーションを促進することは難しいため、別の施策と合わせて実施した方が効果が見込めます。

業務プロセスに変更を加える

サイロ化を根本から解決するためには、仕組みを整えていく必要があります。社内の状況と予算から判断して、適切なものを選んでください。特にツールを導入する場合には他部署と連携が取りやすいよう、共通見解を取りながら検討しましょう。

  • 業務プロセスを横割りに変更する
  • 業務プロセス内に関係部署への情報共有作業を明示的に追加する
  • 各種データ管理ツールを導入する(顧客管理システム、マーケティングオートメーションツール、採用情報管理ツールなど)
  • 情報共有用のデータベースを整える

また、サイロ化は他部署の業務が見えていない状態のため、共同で業務の可視化に取り組むことが大切です。特に、3や4の施策でツールを導入する場合には、関係部署の利用を前提として設計・構築しましょう。

ツールを用いて業務を管理する

今日では様々な業務管理ツールがありますので、既存のツールを用いて部署を跨いだ業務を管理するのもおすすめです。以下にいくつか例を記載しますので、費用や機能を比較して検討してみてください。

マニュアルの共有ツール

社内のマニュアルやドキュメントをナレッジとして保管しておくことで、同様の手順を誰でもいつでも確認できます。また業務の効率化だけでなく、ミスや作業の抜け漏れを防止することもメリットの一つです。具体的なツールとしては、toaster teamprocess streetconfluenceなどです。

ビジネスプロセスの可視化ツール

日本ではまだまだビジネスプロセスの管理は浸透していませんが、海外ではpipefynintexを代表とするプロセスマネジメントツールが複数存在しています。タスク単体ではなく業務プロセス単位で業務を管理できること、業務の見える化ができることがポイントです。

弊社で提供している「octpath」もプロセスマネジメントツールの1つで、流れのある業務をフロー形式で管理できます。また、自動サポート機能によりミスや遅れを未然に防ぎ、業務管理コスト自体を削減できます。詳細はサービスサイトを確認してみてください。

octpathのサービス納品プロセスに関わるイメージ画像です
octpathのサービス画像

データの管理と共有ツール

クラウド上でデータ管理ができるツールも複数あり、代表的なものではDropboxboxGoogleドライブなどがあります。社内サーバーを飛び出してどんな場所でもファイルを編集・閲覧できるため、社外のユーザーへの情報共有や外出先でのデータ閲覧が可能になります。

おわりに

サイロ化について理解できましたでしょうか。サイロ化を解消するためには、まずご自身の部署がサイロ化していると気付くことが重要です。周囲の部署と比較しながら、コミュニケーションや情報の活用方法について見直してみてください。

オススメの記事
もっと見る

日報の書き方|基本の構成と作成時のポイント

日々の業務内容や進捗状況を記録する「日報」。今日1日何を行ったのか、どのような成果があったのかなど、その日の業務について上司や先輩に伝える役割を持ちます。日報は原則として毎日書くものだからこそ、効率的に作成するために書き…
フローチャートの作り方 – 完全ガイド
もっと見る

フローチャートの作り方 – 完全ガイド

フローチャートは、複雑なプロセスやシステムを視覚的に表現するためのツールです。この記事では、フローチャートの基本から、その作成方法、さまざまな種類、そして実際の作成ツールに至るまで、フローチャートに関するあらゆる側面を網…
社内SNSツール5選
もっと見る

社内SNSツール5選|導入するメリットと選定ポイント

コミュニケーションの円滑化やスピーディーな情報共有を目的に、社内SNSを導入する企業が増えています。この記事では社内SNSのおすすめツール5選とともに、取り入れるメリットや選び方のポイント、導入時の注意点を解説します。 …