ITアウトソーシングとは、社内のIT関連業務を、外部の企業に委託(アウトソース)することです。アウトソースの内容は、システムの設計・開発から情報システム部の対応業務、サーバー監視業務まで様々です。ITに関して専門性のある企業にアウトソースすることで、業務を効率化し、企業の競争力を高めます。
本記事ではITアウトソーシングの概要についてご紹介します。

ITアウトソーシングとは

言葉の定義

ITアウトソーシングは、自社内のIT関連業務を外部の企業に委託することを意味します。ITとアウトソーシング(Outsourcing)の頭文字から、ITOと言うこともあります。そもそもアウトソーシングは自社の業務を他社や外部のリソースに委託することを指しますが、中でもITに関連した業務をアウトソーシングするケースがITアウトソーシングです。ITに限定せず、広くアウトソーシングについて説明している記事も参考にしてください。

ITアウトソーシングを行う目的

アウトソーシングの目的には「コスト削減」や「費用対効果の改善」、「人手不足の解消」などがありますが、ITアウトソーシングでは「専門性の獲得」が主な目的です。ITに関わる業務は専門性が高く、新しいサービスや技術が生まれるスピードも早いです。専門性のある企業にアウトソースすることで、自社だけでは得られない知識や専門技術を取り入れることができ、企業としての競争力の強化や業務の効率化をもたらします。

ITアウトソーシングの種類

ITアウトソーシングと言っても、取り組みの内容によって種類が分かれます。基本的には以下の5つの形式に分けることができますが、委託先の提供サービスによっては形態が異なっていたり、さらに細かく分かれている場合もあります。自社の状況に合わせて、どのような形式でアウトソーシングするのが良いのか検討してみてください。

情報システム部門の代行

情報システム部門が対応する、PCの管理やヘルプデスク業務のアウトソーシングです。社内で使用するPCの番号や端末の設定を管理したり、社内メンバーから寄せられるIT関連のお問合せに対応する部門です。PC管理・ヘルプデスクの業務をアウトソーシングすることで、IT担当が自身のメイン業務に集中できるようになります。特に従業員規模の大きい企業では日に何十件もお問合せが発生するケースもあるため、効率性をもって対応することが可能です。

運用業務

社内に導入したシステムの運用業務の代行です。システムを導入したものの上手く使いこなせていなかったり、使われず形骸化してしまっている場合に、サービスを活用するためのサポート業務を代行します。サービス提供企業の担当者が直接派遣されることもあります。

ハウジング

ハウジングはホスティングと異なり、データセンターを間借りした上でサーバーや回線は自社で用意する方法です。場所を借りた上で、機器の手配やその後の運用・保守業務は自社で行います。準備の手間はありますが、災害対策やセキュリティ対策の行き届いているデータセンターを利用できることが利点です。

ホスティング

ホスティングは、サーバーと合わせて回線・電源などの必要備品を一式借りた上で、サーバーの管理・保守業務も委託することができます。メンテナンスまで一括で任せられるため、管理コストを削減できるだけでなく、セキュリティ面の強化や安定的な運用にも繋がります。

フルアウトソーシング

フルアウトソーシングは、自社内の情報システムとその管理業務全てをアウトソースするケースです。全ての業務を委託できることで、社内のリソースをより重要度の高い業務に割くことができます。IT関連の担当者を採用し体制を構築してもらうよりも、費用も立ち上げコストも抑えることができます。

ITアウトソーシングのメリット

ITアウトソーシングの具体的なメリットは以下です。

システムのガバナンスを強化できる

強固なセキュリティガバナンスを構築することは、自社内だけでなく事業で関わるクライアントにとっても重要な事項ですが、素人目線では適切な体制構築ができないことも多いです。専門知識を持つ企業にアウトソースし力を借りることで、適切なシステムの選定と運用制度の設計ができ、ガバナンスの強化に繋がります。

IT技術のトレンドに素早く対応できる

IT技術の進歩は早く、企業の健全性を維持するためには技術進歩に合わせてセキュリティやガバナンスの観点でもスピーディな対応が求められます。ITアウトソーシングを通して、ITに専門性のある企業に委託することで、既存のメンバーが情報収集せずとも時代に合わせた柔軟な対応が可能になります。

コア業務にリソースを集中できる

アウトソーシングの一つの考え方として「自社のリソースを競争優位性を生む業務に集中させる」ということがあります。別の言い方では、「コア」「ノンコア」に分類して考えます。

コア業務ノンコア業務
事業の競争優位性を生み出すような主要な業務。事業戦略やサービス生産のプロセスなど。サービス提供にあたって差別化を生み出さない業務。汎用的で、企業ごとの対応方法が画一的なもの。

ノンコア業務にあたるIT関連業務をアウトソーシングすることにより、自社内のコア業務に社内のリソースを集中させ、競争力を強化することができます。例えばヘルプデスクをアウトソーシングすることで、社内のシステム担当が自社サービスのシステム改善に時間を割くことができたり、限られた採用コストの中で、運用・保守の担当者の代わりに事業運営メンバーを優先的に採用できる、などです。

コストを削減し、費用対効果を改善できる

アウトソーシングは請負企業が複数企業の業務をまとめて処理することでコストメリットを実現しています。つまり、自社で独自に対応するよりもアウトソーシングした方がコストが安く済む場合が多いのです。また、アウトソーシングによって得られるコストメリットが特に大きいのが人件費と固定費です。ITアウトソーシングでは、運用・保守をする人員やサーバー等を自社で抱えなくて済むことで、付随して発生する諸経費も削減できます。

ITアウトソーシングのデメリット

ITアウトソーシングも、進め方によってはデメリットが生じてしまう場合があります。取り組む中で起きうることの想定として以下を参考にしてください。

セキュリティの問題が生じる可能性がある

当然ながら、アウトソーシングでは自社の情報を外部の企業に預けることになります。情報の扱い方や公開範囲、用途を正しく定義しておかなければ、情報漏洩やプライバシーに関わる問題が生じるリスクもあります。後半でも記載していますが、アウトソーシングを行う際の責任範囲や権限範囲を明らかにするため、必要に応じて規約や取り決めを交わしましょう。

必ずコストを削減できるわけではない

アウトソーシングでは、業務を安定運用してもらうため、業務を引き継ぐ際の準備や対策が必要となります。自社運用と比べた場合、費用は抑えられても想像以上に準備や調整にコストがかかるケースも多くあります。業務単体のコストだけでなく、トータルで採算が合わない、とならないようご注意ください。

社内にノウハウが溜まらない

アウトソーシングでは業務進行の過程は確認せず、委託先の企業から実施した結果のみを共有されることがほとんどです。細かい指示やチェックが不要な分、委託元の企業には経験やノウハウが溜まらず、本来であれば競争優位性となるポイントを獲得できる機会を逃してしまうことになります。どのようにカバーしてノウハウを獲得するのか、事前に必ず検討するようにしましょう。

対応状況や体制がブラックボックスになる

アウトソーシングによって対象業務の実態がわかりづらくなることがリスクとして挙げられます。具体的には「どのような体制で対応しているのか」「ミス防止の対策は取られているのか」「管理者は機能しているのか」「作業履歴は残っているのか」などが不明瞭になります。通常通り業務が遂行されている場合には問題ありませんが、ミスやトラブルが発生して初めてアウトソーシング先の対応体制が明らかになる場合も少なくありません。

アウトソーシングの良し悪しが判断できない

ITアウトソーシングでは、委託元にはない専門性を委託先企業が有していることがほとんどです。自社に知識がないために、委託先の業務の進め方やスキルの良し悪しの判断ができなかったり、そもそも委託先の企業を選定できないことも考えられます。また、良い選定ができなかった結果、システムやサーバーの質が良くなかったり、トラブルが発生してしまうといった問題にも繋がりかねません。アウトソーシングの状況を完璧に理解する必要はありませんが、丸投げしすぎないよう注意が必要です。

ITアウトソーシングに適している業務の特徴

至極当然ではありますが、ITアウトソーシングはITに関連した業務を対象しています。その上で、以下の特徴に当てはまる業務がアウトソーシングに適しています。

専門性が高く自社で対応することが難しい

“ITに関連する業務”と一口に言っても難易度は様々です。例えばシステムの開発やサーバーの管理・保守は専門知識が必要ですが、PCのセットアップやアカウント管理等は比較的難易度が低いため、ある程度調べれば誰でも対応が可能かと思います。費用対効果に見合う範囲でアウトソーシングすべき業務の範囲を正しく定めましょう。

定型業務または単純作業で安定して発生する

業務のフローや手順が固定化されている業務がアウトソーシングに適しています。冒頭に記載した5種類のITアウトソーシングの形式も、基本的にはすべて定型的かつ定期発生する業務です。また、あまり知られていませんが、アウトソーシングする業務はオーダーメイドで設計できることがほとんどなので、複数の受け入れ先に相談して比較してみることがおすすめです。

対応する体制を社内で確保することが難しい

例えば組織を拡大する際に急遽情報システム担当を設置したい場合や、サーバー監視を24時間行う必要のある場合です。自社にて人員を新規に採用し体制を立ち上げることも考えられますが、対象業務について知見を持った企業にアウトソーシングできる場合は、力を借りることで早期のリソース確保が可能となります。

ITアウトソーシングを成功させるためのコツ

ITアウトソーシングを検討する際は、以下の観点を確認してみてください。

コストだけで選定しない

アウトソーシング先の比較を行う際にコストだけで比較して、もっとも見積もりが安い企業に依頼した結果、品質もコミュニケーションも正しく機能しないことがあります。特にITアウトソーシングでは、委託先の業務やセキュリティ対策の内容を細かく理解できないために、分かりやすい指標であるコストが主軸になりがちです。QCDを含めた多角的な要素から判断し、コスト削減度が低くても業務品質が担保できる企業に依頼しましょう。

責任範囲を明確にする

ITアウトソーシングでは自社内の情報を多数やりとりするために、SLA(Service Level Agreement:サービスレベルアグリーメント)という取り決めを交わすことが一般的です。SLAはサービス提供者と利用者の間で締結されるもので、サービス内容や基準について両者間で合意をとることで品質保証をするための文書です。ITアウトソーシングでは、トラブルや事故発生時の対応、データ利用・閲覧権限について記載し、責任範囲を明確にしましょう。

再度の内製化は難しいことを理解する

一度アウトソーシングした業務を再度内製化することはかなり難易度が高いです。ITアウトソーシングする業務について、もし将来的に内製化する場合があれば以下に留意してください。

  • 作業に利用しているツールはそのまま貰い受けられるようにする
  • 作業手順書やマニュアルなどのドキュメントの所有権が自社になるようにする
  • 必要に応じて内製化のための引き継ぎやレクチャーに協力いただけるようにする

SLA同様、これらの取り決めはアウトソーシング開始前に合意するようにしてください。内製化はアウトソーシングを受けている会社にとってメリットが無いため、契約時点で取り決めをしておくことでゆくゆくのトラブルを回避することができます。

長期的に依頼できるパートナーを探す

ITアウトソーシングは安定的な運用が第一に求められるため、期限や目標を明確に置かず長期的に委託し続けるケースが多いです。判断が難しい部分はありますが、ITアウトソーシングでは“長期的に信頼して委託できる企業”を探すよう心がけてください。また、一度誤った判断をしてしまうと後からの修正・変更に多くの時間とコストが必要になります。目安として5〜10社を目安に比較検討を行うことを推奨します。

おわりに

ITアウトソーシングはプロフェッショナルに業務を委託することで安定的な運用を可能にします。IT化が進むにつれて、どの企業でもITの運用は必須になりつつありますので、アウトソーシングできる業務がないか、一度検討してみてはいかがでしょうか。

オススメの記事