この記事では見える化についておさらいをするとともに、実際の企業様での参考事例を5つご紹介します。自社の企業活動において見える化を積極的に進めていきたいものの、具体的なイメージがついていない方は、ぜひ参考にしてください。

おさらい|見える化とは?

見える化とは、企業活動の現状やフロー、進捗状況、実績等などの情報を、グラフ、数値、表、図などのわかりやすい形で表現する取り組みを指します。抽象的なワードのため対象物はさまざまで、目的に合わせて様々な場面で利用されます。
見える化の目的や具体的な取り組み方など概要について解説している記事もありますので、詳細を知りたい方はぜひご覧ください。

最も古い事例はトヨタ自動車株式会社によるものです。1998年2月、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が発行した「プラントエンジニア」という月刊誌において、トヨタ自動車株式会社に所属する岡本渉氏の「生産保全活動の実態の見える化」という論文が掲載され、その中で初めて提唱されました。
具体的には「アンドン」という生産状態の報告システムを設置することで見える化を行いました。緑色のランプを正常な生産が行われている状態、黄色のランプを何らかの生産異常が発生した状態、赤色のランプは生産を中止しなければならない状態として、誰もが今の生産の状態を瞬時に把握できるようにしました。

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見える化の事例紹介

見える化の参考事例を、方法・対象物の異なるケースで5つご紹介します。

マニュアル作成による業務の見える化事例

無印良品は、2001年に38億円の赤字を計上、その後2002年には増益、2005年~2007年には過去最高益というV字回復を実現しました。この業績回復の際に行なった取り組みが、見える化のための「業務マニュアルの作成」です。

見える化前の課題

店舗・本部ともに業務内容の整理が行われておらず、業務が属人化していました。属人化は各担当者が経験をもとに作業をすることで、教育や引き継ぎにコストがかかるだけでなく、クオリティのばらつき、進捗状況の遅れ、ミスや抜け漏れの発生などの課題の発生につながります。

取り組みの概要

当時の代表取締役社長であった松井忠三氏は、業績回復のため業務の見える化と標準化を行いました。具体的には、店舗の従業員が利用する2,000ページの「MUJIGRAM」と、本部で利用する6,608ページの「業務基準書」の2種類のマニュアルを作成し、作業の流れと手順を可視化しました。

見える化による効果

「MUJIGRAM」と「業務基準書」を作成した結果、以下を実現しました。

  • メンバー間での知識の蓄積と共有が容易になった
  • 業務の方法やそもそもの目的を見直すきっかけとなった
  • 業務を標準化したことで、現場から日々問題点と改善点が報告されるようになった

業績不振を見える化によって解決した好例として、「MUJIGRAM」は今でも有名なマニュアルの一つです。作業手順が整っておらずメンバーが経験に従って作業をしている、作業品質がメンバーによってばらついているという場合は、まずは業務マニュアルの作成に取り組んでみるのもおすすめです。作業手順書の作成方法について解説している記事もありますので、参考にしてください。

フロー図の作成による業務の見える化事例

弊社が過去に支援させていただいていた、某不動産会社様での事例です。不動産会社では新規に物件の契約が決定した後、契約手続きからオーナーへの連絡、鍵交換、清掃、必要があれば駐車場の契約などの様々な対応が発生します。それらの管理のため、見える化に取り組まれました。

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見える化前の課題

対応すべき事項が多い上、五月雨で案件が進行していたため、本来やるべき作業の停滞や手違いの発生などの課題が発生していました。また、担当者の作業のミスや漏れを防ぐために管理者のリマインドやチェックの手間もかさみ、余計にコストが発生していました。

取り組みの概要

そこで、業務の煩雑さの解消と、そもそも業務フロー自体を改善するため、フローチャートの作成による業務の見える化を行いました。一部の業務を記載した紙ベースのチェックリストしかなかったため、フローチャートを利用し、業務全体の流れと担当者の整理を行いました。

見える化による効果

フローチャートの作成によって、以下が実現されました。

  • 自分の前後の作業が明確になり、業務タイミングが把握できるようになった
  • 業務の担当者や分岐条件が明らかになり、作業ミスが減少した
  • 見える化に取り組む過程で業務の非効率な箇所が分かり、効率的なフローへ修正できた

その後、デジタル化への取り組みとして弊社のフロー管理ツール「octpath」を導入いただき、フローの継続的な更新とともに業務の進捗管理も行うことが可能になりました。
同様の課題を抱えているかたは、フローチャートの作成方法を紹介している記事もご覧ください。

octpathのフロー図について表した画像です。

RPA導入に向けた見える化事例

業務の自動化ツールであるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入するための取り組みで、過去に弊社が支援させていただいていた企業様での事例になります。

見える化前の課題

RPAは人手による作業をシステムに理解させて自動化を行う取り組みです。作業工数削減のためRPAの導入を試みましたが、そもそも業務の流れや手順が明らかになっていなかったため、「どの作業をRPAに置き換えれば良いのか」「そもそもどんな業務があるのか」が分からない状況となっていました。

取り組みの概要

RPA推進を行うチームの中で、各作業者にヒアリングを行いながらフローチャートと手順書を作成し、業務フローの見える化を行いました。また、業務の見える化に取り組む過程で整理も行い、業務フロー自体を最適な形に変更しました。

Excelで作成したフローチャートのイメージ画像です
フローチャート

見える化による効果

RPAの導入に向けて見える化に取り組んだことで、無事にRPAの導入が完了したほか、以下のような効果が得られました。

  • 各作業者の業務が明らかになり、人員配置も最適化することができた
  • 業務が整えられていたため、RPAの構築チームが無駄なく作業を進められた
  • 各業務の特性が分かったことで、より業務に適したRPAを導入できた

見える化のためにシステムを利用することもありますが、今回の事例のように何某かのシステムを導入するために見える化を行う例もあります。特に、RPAやその他自動化に取り組む場合には業務フローの見える化が不可欠になります。

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作業工数の見える化事例

こちらも弊社と関わりのある企業様の事例です。ある特定の作業を複数の担当者で分担しながら消化していく、という運用方法を行なっていました。

見える化前の課題

業務が発生するたびに担当者に割り当てを行なっていましたが、各担当者の作業工数が分からず手の空いているメンバーに作業を依頼していった結果、特定の担当者に業務が偏ってしまうケースがありました。また、同じ作業でもかかる時間がバラバラであったものの、具体的にどのくらい差があるのか、効率性が計測できない状況でした。

取り組みの概要

作業者ごとの工数を把握するため工数記録ツールを導入しました。また、作業内容のばらつきを防ぐため業務管理ツールを導入し、フロー・手順の標準化を行いました。

見える化による効果

  • 各作業者の抱えているタスク量が明らかになり、平等な割り当てが可能になった
  • 見える化の過程で作業を標準化できたため、作業のミスや抜け漏れが軽減した
  • 管理者によるフォローやチェックの手間を減らすことができた

当然ではありますが、業務ボリュームが大きく、作業人数が多いほど、業務のばらつきや確認の手間が増加しやすくなります。業務全体を効率化するためにも、各担当者の負担を減らすためにも、業務・工数の見える化は大いに役立ちます。

システム導入による経営状況の見える化事例

こちらは、システムの導入によって見える化の方法を変更した事例です。日本化成株式会社では、グループ経営体制への移行に伴い経営管理の変更が必要となったため、より最適な形で経営状況を可視化するため、システムの導入による経営の見える化に着手しました。

見える化前の課題

もともと社内には経営状況の見える化が可能な基幹システムが存在していましたが、グループ化により“組織単位で状況を可視化できること”、”データをより柔軟な形で出力できること”など、システムに必要となる要件が変化したため、従来のシステムでは適応しきれないという状況に陥りました。

取り組みの概要

組織変更に合わせてシステムの導入が急務であったため、様々な経営管理システムを検討し、最も要件に合うツールの導入を決定しました。

見える化による効果

経営システムの入れ替えによる見える化によって得られた効果は以下です。

  • 組織体制に合わせて理想的な形で経営状況を見える化できるようになったため、企業ごとに個別化した対応が可能になった
  • データの出力やレポートの作成が容易になったことから、経営判断のためのデータの加工等の準備作業が不要になった
  • UI/UXがより使いやすくなった

組織体制の変更をきっかけに基幹システムを刷新することで、より適切な見える化が可能となった事例です。企業規模や体制によって適切な方法・システムは大きく異なるため、自社の状況に合わせた見える化を行うことが大切です。
参考:ビジネスエンジニアリング株式会社「mc frame公式ホームページ」

まとめ

冒頭で述べた通り「見える化」は抽象的なワードであるため、対象となるものや取り組み方は状況に応じて大きく異なります。また、見える化は手段でありゴールではありません。何のために見える化に取り組むかをまず考え、自社に適した形で取り組んでみてください。

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