業務の標準化や効率化を目指すうえで欠かせないマニュアルの作成。業務に必要な情報をマニュアルに落とし込むことで、作業メンバー全員が同じ方法・手順で業務を遂行できるようになり、誰が担当しても同程度の作業品質が担保されます。この記事ではマニュアル作成のコツと作り方、運用時のポイントについてわかりやすく解説します。
マニュアル作成のコツ7選
マニュアル(業務マニュアル)とは、業務全体のフローやノウハウを集約したドキュメントのことです。一つの作業工程について具体的に説明する手順書とは違い、マニュアルでは「業務の全体像」を把握できるようにまとめることがポイントです。
しかし、マニュアルは記載する情報が幅広いために文量も多くなりがちで、要点がわかりにくかったり、必要な情報がどこにあるか探しにくかったりすることがあります。わかりやすいマニュアルを作るにはどのような点に気を付ければよいのか、マニュアル作成のコツを7つご紹介します。
5W1Hを明確にする
5W1Hは、以下の頭文字をとったものです。マニュアル作成時には5W1Hを明確にして文章を組み立てることで、伝えるべき情報を漏れなくまとめることができます。
- When/いつ
- Where/どこで
- Who/誰がWhat/何を
- Why/なぜ
- How/どのように
読み手がマニュアルを読むときに、「いつ?」「なぜ?」などの疑問が生じないよう、要点をしっかりと掴んだマニュアル作りを意識することが大切です。
また、5W1Hが明確を明確にすることで、読み手がスムーズに理解しやすくなり、作業時の迷いやミスを防げることもポイントです。マニュアルに足りない情報があると、先輩社員に聞いたり自分で調べたりする手間が発生し、効率化のために作成したはずのマニュアルが機能しなくなってしまいます。5W1Hを意識し、過不足なく情報を盛り込むようにしましょう。
読み手の理解度に合わせる
マニュアル作成においては、誰に向けて作っているのかを明確にし、読み手の知識・経験レベルに合わせた内容にすることが大切です。
読み手の理解度に合っていない場合、読まれないマニュアル、読んでも理解できないマニュアルになってしまいます。そうなると、作業メンバーがそれぞれ違う手順で業務を進めてしまい、マニュアルが形骸化し、業務の属人化が進行することになりかねません。
業務の全体像をまとめたマニュアルは、基本的には新入社員や中途社員など初めてその業務に取り組む人に向けて作成することが多いため、「専門用語は噛み砕いて記載する」「注釈を付けてわかりやすく説明する」などの配慮が求められます。
また、マニュアルは業務知識のある担当者が作成するため、初心者にとって必要な説明を省いてしまったり、簡単な説明に留めてしまったりすることがあります。読み手の理解レベルを想定し、「説明が足りているか」「わかりづらい箇所はないか」などを確認しながら作成することが重要です。作成後、業務に関わったことのないメンバーに、内容を理解できるかどうか確認を依頼してみることもおすすめです。
必要に応じて画像や動画を差し込む
文章だけでなく必要に応じて画像や動画も挿入することで、視覚的にもわかりやすいマニュアルを作ることができます。文字だけが連なったマニュアルはとっつきにくく、読んでもいまいち理解しきれなかったり、読むのに時間がかかりスムーズに理解が進まなかったりする可能性があります。
箇条書きや表組みなども有効ですが、業務内容が複雑な部分や説明が長くなりそうな部分においては、図やイラスト、動画を用いて説明する方が伝わりやすくなります。文字だらけの読みにくいマニュアルにならないよう、マニュアル作成においては「読みやすさ」「わかりやすさ」にこだわり、なるべくシンプルにまとめることが大切です。
フォーマットを統一する
わかりやすいマニュアルを作るには、フォントの種類や大きさ、デザインなどを統一させることも大切です。業務内容の変更や更新があった際は、既存のマニュアルに新たな情報を追加する作業が必要ですが、既存のものとは違うフォントやデザインで作ってしまうと、情報がばらつき、読み手にとって非常に分かりづらくなってしまうためです。
マニュアルのフォーマットを統一するには、はじめにテンプレートを作成しておくとよいでしょう。テンプレートがあれば、追加情報が発生した際もそのテンプレートに従って作業ができるため、全体のフォーマットが崩れてしまうことはありません。
できれば社内にあるマニュアルはフォーマットをすべて統一化させることが理想です。WordやExcel、PowerPointなどのドキュメントツールで作成している場合は個人の作業に依存してしまう可能性が高いです。可能であれば、マニュアル作成ツールの導入を検討することをおすすめします。専用のツールであれば、ツールの仕様に合わせて作成することで誰でも同じようにマニュアルを作成することができます。
マニュアル作成ツールについて紹介している記事も参考にしてみてください。
情報の探しやすさを意識する
マニュアルは業務の全体像をまとめる必要があるため、記載する情報が多くなりがちです。マニュアルの読み手は作業進行にあたって必要な情報をすぐに確認する必要があるため、情報を見つけるのに時間がかかると、マニュアルを読まなくなってしまう原因にもなります。マニュアル作成時には、読み手が検索しやすい設計も意識してください。
例えばExcelでマニュアルを作る場合であれば、シート内のリンクをクリックするとExcelブック内に指定した別シートに飛べるリンク機能を設定すれば、読み手が情報を探し出す手間を省いてあげることができます。クラウドサービスの検討時には、検索機能の充実性を確認してから導入することも重要です。
また、マニュアルには必ず「目次」と「見出し」を設定し、必要な情報がどこに記載されているか誰が見てもすぐにわかるようにするなど、中身の執筆方法の工夫も必要です。
イレギュラー時の対応方法を記載する
マニュアルには業務の流れや取り組み方のみならず、イレギュラーな問題が発生した場合の対応方法についても記載しましょう。マニュアルを読むシーンとしては、メンバーが業務内容を確認する場面だけでなく、想定外の問題が起きて解決方法を探している場面も考えられます。
マニュアルに記載できる情報はあくまで想定される範囲のイレギュラーに限られるものの、どのようなミスやトラブルが起きやすいのか、実際に発生したときにどう対応してきたかなどを記載しておくとよいでしょう。「困ったときの対応」「過去のトラブル事例」「よくある質問」などの見出しでマニュアルにまとめておけば、業務を遂行するうえで起こり得る問題をメンバー全員で共有し、事前に心構えができるようになることもメリットと言えます。
はじめから完璧な内容を目指さない
ここまでマニュアル作成のコツをお伝えしてきましたが、マニュアルを作る際の考え方としては「はじめから完璧な内容を目指さない」ことも重要です。読み手の知識レベルや理解度、価値観は個々で異なるため、どの人にとっても過不足のない完璧なマニュアルを作るのは非常に難しいことです。
また、新しいツールやシステムの導入で業務フローが変化した場合、マニュアルに記載すべき内容も当然変わってきます。完璧なマニュアル作りを目指すよりも、必要に応じて内容を見直し、常に最新の情報に更新しておくことが大切です。
わかりやすいマニュアルを作成する方法・手順
わかりやすいマニュアルを作るには、情報を落とし込む前の下準備が重要となります。ここでは、マニュアル作成の方法と流れをご紹介します。今回は概要だけ抜粋していますので、より詳細な手順について知りたい方は以下の記事をご覧ください。
参考: マニュアル作成の方法とポイント|おすすめツールと無料テンプレート
1. 目的を明確にする
まずはマニュアル作成の目的を明確にすることから始めます。目的がきちんと定まっていないままマニュアル作りを始めても、どの情報が必要になるのかわからず、無駄な手間と時間がかかってしまいます。そのマニュアルは誰に向けたものなのか、何をするために作るものなのかをはじめに整理しておくと、最初から最後まで一貫性のあるマニュアルに仕上がります。
2. スケジュールを決める
マニュアル作成に必要な工数を洗い出し、いつから取り掛かればよいか、いつまでに完成すればよいかなどのスケジュールを決めておくことも大切です。マニュアル作成は通常業務とは別作業として取り組むことも多いため、必要なタイミングまでに完成できなかったということがないよう、スケジュール管理をしっかりと行いましょう。企業規模が大きい場合は特にマニュアルの作成やツールの検討にも時間がかかるため、必ず実施してください。
3. 情報を収集・整理する
次に、マニュアル化する業務の関係者を交え、マニュアル作成に必要な情報を収集・整理していきます。作成者一人で業務を担当している場合でも、そのフローに関わる部署のメンバーからも情報を収集することで、業務の全体像がより具体化されます。集めた情報を俯瞰的に見てみると、不要なプロセスや非効率となっている部分が見つかることもあるため、改善が必要な箇所があればこの時点で整理しておきましょう。
参考: 業務ヒアリングの基本|業務改善のための5つのステップとポイント
ヒアリングの際は音声を自動で文字起こしする『Texta』がおすすめです。
4. 構成とフォーマットを決める
情報が整理できたら、マニュアルの構成や見出し、フォーマットを決定します。マニュアル全体のデザインは「読みやすさ」「わかりやすさ」を大きく左右するため、集めた情報をすぐにマニュアル化するのではなく、先に構成と見出しを設定しマニュアル全体に一貫性を持たせること、フォーマットを決めて文字の書体や大きさがズレないようにすることが大切です。
5. 必要な情報を落とし込む
文章だけでなく、画像や動画も交えながら必要な情報を落とし込み、マニュアルを完成させます。マニュアル作成のコツとしてもお伝えしたように、はじめから完璧なマニュアルを目指す必要はありません。細かく情報を落とし込もうとするとキリがないため、構成に沿って作業方法や手順をある程度整理できた段階で、その業務の関係者にレビューしてもらうことをおすすめします。
6. フィードバックを反映する
完成したマニュアルは業務の担当者や関係者の間で仮運用し、わかりにくい表記や修正が必要な箇所についてフィードバックをもらいましょう。マニュアル作成を一人で行うと主観的な表現になることがあるため、本運用の前に自分以外の第三者に読んでもらい、客観的な意見を聞くことが大切です。集めたフィードバックはマニュアルに反映させ、本運用に向けて仕上げていきましょう。
マニュアル運用のポイント
マニュアル作成を終えた後、効果的に運用するためのポイントを以下にまとめました。
社員の意見をもとに定期的な見直しを行う
マニュアルは作って終わりではなく、必要に応じてどんどん更新していくものです。業務の変更によりマニュアルの更新が必要になることもあれば、マニュアル通りに作業を進めるなかで改善点が見つかることもあります。実際に作業を行う現場の社員の意見をもとに定期的な見直しを行い、内容をブラッシュアップしていくことが大切です。
マニュアルの更新にあたっては、あらかじめルールを決めておくことでスムーズに作業できます。誰が更新するのか、どのタイミングで更新するのか、誰が更新内容をチェックするのかなど、本運用の前に決めておくとよいでしょう。
適切な更新タイミングは事業のフェーズや業務の規模によっても変わりますが、分かりやすいでタイミングとしては例えば以下があります。
- 大元となる事業戦略の変更や、商品の入れ替えが発生したとき
- ベテラン社員の離職や休職が決まったとき
- 人事異動や採用によって、新しいメンバーが加入したとき
上記に該当しない場合でも、少なくとも半年に一度は見直しを行うことをおすすめします。
クラウドツールで一元管理する
WordやExcelなどのドキュメントツールを用いたマニュアル運用では、いつ誰が更新したのかわかりづらかったり、更新する度に作業メンバーに通知する必要があったりと、更新作業に手間がかかってしまいます。
こうした問題点は、マニュアル管理に特化したクラウドツールを用いることで解消できます。ツール導入には一定のコストがかかるものの、マニュアル作成・運用がスムーズに進めば担当者の手間や時間の負担を軽減でき、空いたリソースを他のコア業務にあてられるようになります。結果的に業務効率化や生産性の向上にもつながるため、ツール導入による費用対効果は十分に期待できるでしょう。
マニュアル管理ツールを紹介している記事を参考に、導入を検討してみてください。
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おわりに
マニュアル作成のコツを掴んでいないと、時間をかけて作っても「読まれないマニュアル」や「読んでも理解できないマニュアル」になってしまいます。今回ご紹介した7つのコツや作成手順を参考に、属人化の解消や業務の効率化につながる効果的なマニュアル作りに取り組んでみてください。