スキルマップとは、業務進行において必要なスキルと従業員ごとのスキルレベルを一覧化した表のことです。人員配置や育成の場面だけでなく、ビジネスサイドの業務進行のためにも活用することができます。この記事では「人事に関する知見がないが、ビジネスサイドで必要なスキルをまとめたい」という方を対象に、スキルマップの作成方法、活用の流れを中心にご紹介します。

スキルマップとは|概要をおさらい

冒頭で述べた通りスキルマップとは、業務進行において必要なスキルと従業員ごとのスキルレベルを一覧化した表のことです。企業や業界によっては力量管理表、力量表、スキルマトリックスと呼ばれることもあります。スキルの状況を可視化できることで、人材育成はもちろん業務の振り返りにも利用することができます。

スキルマップのサンプル画像です。
スキルマップのサンプル

スキルマップの目的とメリット

スキルマップは人事評価だけでなく、業務効率化のためにも用いられます。スキルマップを作成・利用する目的は、主に以下です。

必要なスキルを見える化でき、適切な評価が可能になる

例えば社内のPCやシステムを問題なく使えること、部下をマネジメントできること、顧客や社内のメンバーと適切なコミュニケーションを取れることなど、業務を遂行するためには様々なスキルが必要ですが、それらは直接目で見ることはできません。スキルマップという形でスキルを言語化・定量化することで、必要なスキル基準を揃えることができ、適切な評価が可能になります。

業務を標準化する

複数名で作業を担当していると、どうしてもメンバーごとに業務のクオリティに差が生まれしまいます。スキルマップの作成を通してスキル基準を統一し、メンバーごとのスキルの状況を明らかにすることで、業務の標準化に役立てることができます。

人材育成に役立てられる

スキルマップを作成することで、メンバー1人ひとりのスキルレベルが明らかになります。業務に必要なスキルと現在の状況の乖離を個別に把握できることで、より具体的で効果的な育成計画を立てることが可能になります。また、育成の一貫として個人の目標設定に活用することもできます。

人材配置を最適化できる

必要なスキルを身につけることも重要ですが、組織全体の最適化のためには、向き不向きに合わせた人材配置も意識する必要があります。適材適所の采配を行うことで、メンバーのポテンシャルを最大限に引き出すことができ、適切な評価にも繋がるためです。スキルマップを利用することで各部署・業務に必要なスキルが分かるため適切なメンバー配置が可能になります。

スキルマップの作り方|5つのステップ

それでは、具体的なスキルマップの作成方法を、サンプルとして作成したテンプレートの項目と照らし合わせながらご紹介します。今回作成したサンプルはダウンロード可能ですので、そのまま雛形としてご使用いただいても構いません。

スキルマップのサンプル画像です。

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1.スキルマップの目的を確認する

スキルマップを作成する目的によって、記載する内容は大きく変わります。例えば人材育成が目的であれば、マネジメント能力や営業力など長期的にメンバーの成長目標となるようなスキルが適しますが、業務のクオリティを揃えるためであれば、より実作業に近いスキルを細かく確認できるように記載する必要があります。何のためにスキルマップを作成するのか、着手し始める前に確認しておきましょう。

2.骨子を整える

まずは、スキルマップ全体の骨子を整えるため、列に当てはめる要素を定めます。サンプルでは7-8行目、以下の赤枠部分に該当します。

スキルマップの骨子作成に関する画像です。

作業手順書やマニュアルでは業務内容によって必要な項目が大きく異なるため、要素の選定が肝になりますが、スキルマップを作成する際はあまり厳格に検討する必要はありません。最低限、作業名・作業内容の詳細・メンバーの名前・レベルを書き込むことができれば十分です。

3.スキル項目と粒度の設定

スキルマップを作成する上で最も重要となるステップで、スキル項目の設計を行います。サンプルでは以下の赤枠内に該当する部分です。

スキルマップのスキル項目と粒度に関する画像です。

スキル項目を記入するときは、はじめに評価軸となるスキル項目を洗い出してから、粒度を整え体系化していきます。はじめから綺麗にまとめる必要はありませんので、ブレスト感覚で漏れなく洗い出してください。
スキルマップに記入するスキルは実際の作業内容と結びついていることが多いため、業務フローに沿って作業内容を確認し、各作業に必要なスキルを洗い出していくのがおすすめです。マニュアルやチェックリストがある場合はそれらと照らし合わせながら洗い出していく方法もあります。

その他、スキル項目を記入する際のポイントは以下です。

スキルの階層

サンプル上で業務工程・作業名の2段階に分けているように、スキル項目をいくつかの階層に分けることでマップを綺麗にまとめることができます。階層の数や内容に決まりはありませんが、2つから3つに分けるのが一般的です。あまりに階層が多くなってしまう場合には、部署やチームごとに別のシートに分けて作成することをおすすめします。

スキル項目として設定する内容

当然ではありますが、スキルと一言で言っても内容にはかなり幅があります。例えばデザインも、営業で1人で契約獲得できることも、システムの管理ができることもスキルです。スキルマップに記載する内容に決まりはありませんので基本的にはどのようなスキルを記載いただいても構いません。但し、定性的なもの、主観によってしまうものについては、次項を参考に、人によって評価にブレが生じないよう設定するよう心がけてください。

スキル項目の粒度

記入するスキルの粒度は、分かりやすいスキルマップを作成する上で非常に重要です。
粗く記載しすぎると、評価は簡単なものの、メンバーごとの差や変化の度合いが把握しづらくなったり、人による解釈の差が生まれやすくなります。反対に詳細に記載しすぎると、スキルを理解しやすくなりますが、評価や管理が難しくなります。
“評価者が誰であっても同じ状態をイメージできること”、また、被評価者も“何を評価されたのかが理解できること”を意識して、を適切な粒度で設定することがポイントです。

例えばライターとしてのスキルを評価したい場合、①だと抽象的すぎて評価がしづらく、③は細かすぎてチェックが面倒になります。②のように、細かすぎない程度に具体的なレベルでスキルを記載すると、的確な評価につながります。

①抽象的すぎる例・ライターとして活躍している
②ちょうど良い例・論理的でわかりやすい文書である
・表やグラフを用いて情報をわかりやすくまとめられている
③詳細すぎる例・尊敬語、丁寧語、謙譲語を正しく使うことができる
・記事作成ツールの起動、保存ができる
・表のレイアウトが調整できる
スキルの粒度サンプル

4.達成レベルの検討

項目が定まったら、スキルの達成レベルを検討します。以下のサンプルのように階層を何段階かに分ける場合もあれば、◯×で簡易的に評価する場合もあります。

スキルマップの達成レベルに関する画像です。

こちらも粒度と同様、階層が少なければ評価は簡単ですが、従業員ごとの差を把握しづらく、評価後の改善もしづらくなります。一方で階層を細かくしすぎると、管理や評価が難しくなります。階層の数に正解はありませんが、一般的には3〜5段階に分けることが多いです。業務の内容や運用方法に合わせて検討してください。

5.メンバーからフィードバックを回収

スキルマップが完成したら、評価への納得感を持ってもらうため、被評価者となるメンバーに内容を確認してもらいましょう。1回で完璧なスキルマップを作成することは難しいので、フィードバックの回収、修正を何度か繰り返して作成するのがおすすめです。

スキルマップ活用のためのポイント

スキルマップ作成時・運用時に意識してほしいポイントを3つご紹介します。

適宜メンバーにヒアリングをする

スキルマップの作成は作業担当者ではなく管理者やリーダーが実施することが一般的ですが、適宜メンバーにもヒアリングをしながら作成すると良いです。管理者は業務全体を俯瞰的に把握しているため、抜け漏れやミスなく適切なスキル設定ができますが、反対に、現場で必要なスキルの具体的なイメージがつかない場合もあるためです。業務ヒアリングの概要や実践方法に関しては別の記事でまとめているので、参考にしてください。

誰が評価者となるかを明確にする

メンバーのスキルを記入する際は、上司が記入する場合もあれば、担当者であるメンバーが記入したものを上司が確認する場合もあります。それぞれ、以下のようなメリット・デメリットがありますので、社内の状況に合わせて検討してください。

メリットデメリット
上司が記入する場合客観的な評価を一元的に行うことができる担当者の抱える課題や小さい変化が見えない
担当者が自分で記入する場合作業の理解度が高く詳細に振り返ることができる全体感を把握していないため主観的な評価になる
スキルマップの使用者によるメリット、デメリット

運用・管理の方法を決める

スキルマップは、継続的に利用することでスキルの変化を確認できるため、1度利用するだけでは効果を十分に得ることはできません。作成後、いつ、どのように活用するのかを事前に決めておきましょう。例えば毎月末の振り返りの際に記入してもらう、育成計画を立てるため半期に一度全メンバーに記入を依頼する、などです。
また、業務内容や社内の組織構造の変化に合わせて、必要なスキルも変化していくため、スキルマップの定期的な更新も重要です。半年ごと、もしくは人員配置が変わったタイミングなど、定期的な見直しのタイミングもあらかじめ確認しておきましょう。

評価後のアクションを決める

当然ではありますが、どんなツールも作成するだけでは効果がありません。スキルマップで評価した後は、基準に満たなかったスキルレベルを上げるための取り組みが必要です。複数名が同じスキルに課題を抱えている場合はセミナーや勉強会を開催する、個別に足らないスキルは目標管理をするなど、評価の結果に合わせて適切な施策を検討してください。

スキルマップサンプルのダウンロード

今回ご紹介したexcelのスキルマップは、以下のボタンよりダウンロードしていただけます。そのまま雛形としてお使いください。

スキルマップのサンプル画像です。
スキルマップ サンプル

プロセスマネジメントツールなら「octpath」がおすすめ。

おわりに

スキルマップは、手順さえ分かれば手軽に、あらゆる業務に取り入れることができます。スキルは一朝一夕で伸びるものではありませんが、スキルマップを繰り返し利用していけば確実に効果が実感できるはずです。少しでもメンバーのスキルに課題がある場合は、まずは小さい範囲から、スキルマップを作成してみてください。

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