製品、サービス、業務等どの文脈の品質でも、品質を向上することは事業を運営していく上で非常に重要な観点です。本記事では、業務改善の文脈から“業務品質”についてをメインに、概要から向上させるための具体的な方法について解説しています。

そもそも品質とは

そもそも“品質”とは、製品やサービスの有する特性のことを意味しますが、具体的には対象物に合わせて大きく以下の2つに分けることができます。

製品・サービスの品質

自社で製造・提供している製品・サービスの持つ特性のことで、品質というと一般的にはこちらをイメージしやすいかと思います。品質はひとつの要素だけで決まるものではなく、様々な要素の組み合わせによって評価されます。例えば以下のような観点で考えることができます。

  • 安定性…各製品・サービスの供給は安定しているか
  • 迅速性…スピーディな対応ができているか
  • 信頼性…企業の実績や対応から顧客に信頼感を与えられているか
  • 正確性…顧客対応にミスや抜け漏れはないか、不良品は発生していないか

詳細は後述しますが、製品・サービスの品質基準は企業によって大きく異なりますので、自社独自の観点で検討する必要があります。

業務の品質

もう一方は、日々行なっている業務自体の品質です。メンバーそれぞれの業務内容に関わるもので、主に以下のような観点で測られます。

  • 作業にミスや抜け漏れは発生していないか
  • 作業に遅れは発生していないか
  • 業務は標準化されているか(作業手順や業務フロー、チェック項目の統一)
  • 最終的なアウトプットは均一か

個々人の業務品質を指す場合もあれば、チーム全体としての業務品質を表す場合もあります。

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品質を向上できた状態とは

それぞれの品質を向上できた状態は、以下のように考えることができます。

製品・サービスの品質を向上した場合

製品・サービスの提供においては顧客の評価が最重要ですので、品質を十分に担保できている理想的な状態は「サービスの価値を十分に提供できており、顧客が満足している状態」と考えることができます。「利用ユーザーが期待している機能、効用を満たせている状態」とも言い換えられます。
理想状態に向けた品質向上のための取り組みとしては、例えばメーカーでの不良品の発生率を下げること、コールセンターでのお客様への対応内容を改善すること、飲食店で提供している食品の味を改良する、などがイメージしやすいかと思います。

業務品質を向上した場合

業務品質はタスク管理に関わる部分が大きく、「業務にミスや抜け漏れ、遅れがなく、問題なく業務が進行できている状態」が理想的です。
業務品質はミスや遅れの発生有無で判断されるため、問題点が個人のスキルや実力に帰結してしまいがちですが、業務フローや手順の見える化・標準化の度合いも大きく影響します。したがって業務品質向上に向けた取り組みとしては、マニュアルやフロー図の作成、組織体制の変更、チェック項目の変更などが考えられます。

製品・サービスの品質と業務品質は大きく関わっており、業務品質を向上させることが、結果的に製品・サービスの品質向上にも繋がります。重要性に違いはなく、どちらも向上する必要があります。

品質を向上するための方法

品質向上のための取り組みの方法にはいくつかありますが、「5つの化」という考え方で進めることが最もわかりやすいかと思います。経済産業省がサービス産業の生産性向上のための手段として提唱している方法で、「可視化」「定量化」「課題化」「実践化」「定着化」という5つのステップを繰り返していくことで、品質の向上を図ります。

「5つの化」のイメージ画像です。

それぞれのステップについて、具体的に取り組みの方法を解説します。

1.可視化

可視化のステップでは、現在の業務の状況取り組みの目標・ゴールを明らかにします。

業務状況の可視化

当然ではありますが、取り組みの効果を確認するためには、取り組む前の状態を正しく把握しておく必要があります。業務内容の詳細については定量化のステップで特定できれば良いので、この段階では定性的な情報も含めて洗い出します。例えば以下です。

  • 品質向上の対象とする範囲
  • 品質を形成している要素
  • 基準とする業務の状況(手順や業務フロー、ポイント、チーム体制など)

メンバーにも共有できるよう、また、情報が多い場合に整理がしやすいよう、エクセルやドキュメントを利用してまとめることをおすすめします。

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取り組みの目標とゴールの可視化

品質を向上できた場合の「理想的な状態」を明らかにします。例えば、1ヶ月間でのミスの発生件数0件に抑える、お客様にリピートしてもらう、などです。目標設定の方法について紹介している記事も参考にしながら取り組んでみてください。この段階で定量的に設定することが難しい場合は後半のステップで定量化することとして、定性的な状態について整理しましょう。

2.定量化

次に、可視化した情報をさらに細かく把握するための定量化を行います。このステップで定量化した結果に合わせて品質改良の計画立てを行いますので、可能な限り具体的に把握できるよう心がけましょう。項目は事業や業務の内容に合わせて異なりますが、一般的な項目としては以下があります。

  • 1ヶ月で発生している案件数
  • 業務1件の処理にかかる対応期間
  • 業務1件に関わるメンバーの人数
  • 発生しているミスや遅れの件数

定量的に業務情報を把握することができたら、合わせて目標も定量化します。最終的なゴールだけでなく中間地点の目標値も設定することをおすすめします。

3.課題化

1,2のステップで明らかにした内容をもとに、今回の取り組みで解決すべき課題を整理し、解決策を検討します。課題の確定から解決策の決定までの全体像は、ざっくり図式化すると以下のようにまとめられます。

問題解決のフレームワークです。

まずは設定した目標と現状の差分を確認し、課題を明確にします。その後、課題を解決するための解決策を複数検討し、実行に移していきます。具体的な内容については問題解決のアプローチについて紹介している記事で紹介していますので、もしイメージがつかない場合には参考にご覧ください。また、解決策が浮かばない場合には業務効率化の方法について紹介している記事も参考にしてみてください。

解決策については、具体的にタスクに落としておくことで計画が精緻になり、スムーズに実行に移せるようになります。メンバー個々人に割り振ることができるくらいまで細分化するよう心がけましょう。

4.実践化

立てた計画に従って実践していきます。
プロジェクト進行においては何においても同様ですが、はじめに立てた計画通りに全てが進行していくことはあり得ず、必ずどこかでズレが発生します。定期的に目標値・計画との差分を見直し、適宜計画を修正しながら取り組んでみて下さい。

当初設定した品質基準まで向上することができたら、プロジェクトは成功です。想定していた解決策によって品質を向上できなかった場合には、そもそも設定した課題が間違っている場合もありますので、3.課題化から見直しを行うことをおすすめします。

5.定着化

品質は一時的に取り組んだだけで向上するものではありません。一度品質を向上できた後も、組織や事業、サービスの状況によって最適な方法は少しずつ変わっていきます。実践によって品質向上の最適解が分かったら、それらを定着するための方法を検討しましょう。例えば、オペレーションが変わった場合には業務フロー・マニュアルの更新を行う、メンバーへの情報共有を行う、必要に応じて使いやすいツールを導入し直す、などです。

品質向上に取り組む場合のポイント

品質について自社独自の考え方を明らかにする

サービスの内容や提供方法は、企業ごとに大きく異なり、また、製品・サービスの品質はそれ自体が優位性に繋がります。今回ご紹介した内容はあくまでも例として、自社サービス独自の品質について考えて取り組みましょう。

品質向上の目的とゴールを確認する

先述している通り、一言で品質向上と言っても業務全体の品質を向上するのか、標準化するのか、個人のレベルを上げるのか、など様々な文脈が考えられます。何のために取り組むのか、品質を向上した後にどんな状態が理想的か、取り組み始める前に確認しましょう。進行がスムーズになるよう、関係するメンバー全員に共有できるとベストです。

継続的に品質を見直す

現在の品質を安定的に維持することももちろん重要ですが、最も良い状態は継続的に品質を向上できていることです。常に最良の品質を目指せるよう、定期的に見直しの機会を設けましょう。事業の状況にもよりますが、半年〜最低でも年に1度のペースで繰り返すことができると良いかと思います。

おわりに

品質向上の方法についてご理解いただけましたでしょうか。日々安定して業務を進行していると、改善に目が向きづらくなります。現在の業務・サービスの品質はどうなのかを改めて見直し、向上に向けて取り組んでみてください。

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