企画書を書くときに意識すべきは、相手からの理解や共感を得られる内容にすることです。必要な情報を網羅しつつ、読みやすさ・わかりやすさも意識しながら文章を組み立てると、相手に伝わる魅力的な企画書を作成できます。この記事では、企画書の基本的な書き方と押さえておきたいポイントを紹介します。
企画書とは
企画書とは、新しいプロジェクトの立ち上げに際して作成される書類です。新規製品の開発やイベントの開催といった新たな試みを始める際に、それを実現するための具体的なアクションプランをわかりやすくまとめたものです。
企画書を作成する目的は「関係者からの賛同を得ること」にあります。企画内容そのものが重要であることは言うまでもありませんが、企画書全体を通して読みやすく、相手に理解してもらえる内容でなければなりません。そのためには、企画書に必要な要素を過不足なく盛り込み、具体的なアクションやスケジュールを実務レベルまで落とし込んだ納得感のある書類に仕上げることが重要です。自分のアイデアを主張するだけの企画書にならないよう注意しましょう。
企画書の書き方|6つの構成要素とステップ
企画書を構成する基本の要素として以下の6つが挙げられます。
- 現状分析
- 目的・ゴール
- 企画内容
- 得られる成果
- 実施期間
- 収支計画
企画書を作成する際は、まずこれらの要素を書き出して内容を整理しておくとスムーズです。社内に企画書のフォーマットがない場合は、上記をそのまま企画書の構成とし、上から順にまとめていくとよいでしょう。
以下では企画書の書き方をステップごとに詳しく解説します。
【STEP1】現状分析
新たな企画を提言する際は、まず自社の現状と課題を説明する必要があります。社内の問題だけでなく、世の中の流れや市場、競争相手など、会社を取り巻く外部環境の問題点も示すことが重要です。現状抱えている課題を内部・外部の両方から示すことで、企画書の内容に対する説得力が増していきます。
現状分析を行う際は、この後の「企画書作成に役立つフレームワーク」で取り上げている「3C分析」「SWOT分析」が役立ちます。
【STEP2】目的・ゴール
次に、目的とゴールを含めた企画の全体像を示します。
現状分析の結果をもとに、以下の内容を簡潔にまとめます。
- どのような問題を改善するのか
- なぜ改善が必要なのか
- どうやって取り組むのか
- どのような状態を目指すのか
詳細な企画内容についてはこの後のステップでまとめるため、ここでは企画の全体像を把握できる程度で問題ありません。
【STEP3】企画内容
企画の具体的な内容を記載します。
課題解決への大まかな方向性を示す提案書とは異なり、企画書では具体的にどう取り組んでいくのか、詳細なアクションプランを提示する必要があります。ここでは「誰に対して何を行うのか」「どのようなプロセスで行うのか」を明確に示し、企画を実践するイメージを読み手に持ってもらうことが大切です。
企画内容をまとめる際は、この後の「企画書作成に役立つフレームワーク」で取り上げている「6W2H」「MECE」が役立ちます。
【STEP4】得られる成果
自社が得られる成果やメリットを提示します。
読み手に共感・納得してもらうには客観的な成果を示すことが重要で、なるべく数値を用いて表現するのが望ましいでしょう。
【STEP5】実施期間
企画を実施するための全体的なスケジュールを記載します。
あらかじめ実施期間を明確に定めておくことは、企画の実現性を高めるうえでも有効です。社内の環境やリソース、予期せぬトラブルなども考慮し、納期から逆算して余裕を持ったスケジュールを設定しましょう。
【STEP6】収支計画
企画の実施による収支計画を記載します。
実施にあたってどのくらいの予算が必要となるのか、また実施後にどのくらい回収できるのかを明確に示します。最初にかかる費用が大きい場合は、企画の実施によって自社が得られる成果を論理的に説明するとよいでしょう。相手の理解を得るために、費用対効果の高い取り組みであることを強調しましょう。
企画書作成に役立つフレームワーク
企画書を書くときに役立つのがビジネスフレームワークです。フレームワークとは簡単に言うと「思考の枠組み」のことで、分析や意思決定を行うときに活用されています。企画書作成においてもフレームワークを用いることで思考や情報が整理され、抜け漏れのない正確な企画書に仕上げられます。
ここでは、企画書作成におすすめのフレームワークを4つ紹介します。
3C分析
3C分析とは、自社を取り巻くビジネス環境を分析するためのフレームワークです。
企画書の書き方における1つ目のステップ「現状分析」を行う際に活用できます。
- Customer(市場)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
3C分析では上記の「C」について分析します。自社が勝負する市場のニーズや競合他社の特徴を分析し理解を深めることで、自社が持つ強みや弱み、差別化できる要素をあらためて認識できるようになります。
SWOT分析
SWOT分析とは、自社の内部環境と外部環境をプラス要因・マイナス要因に分けて分析する手法です。企画書の書き方における1つ目のステップ「現状分析」を行う際に活用できるフレームワークで、3C分析で導き出した結果をより深めることができます。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
SWOT分析の「SWOT」は上記の頭文字をとったものです。内部環境におけるプラス・マイナス要因が「強み」と「弱み」、外部環境におけるプラス・マイナス要因が「機会」と「脅威」です。これらを分析すると、既存事業の課題や改善点を見つけられるとともに、新規事業の将来的なリスクまで把握できるようになります。
6W2H
6W2Hとは、以下に示した6つの「W」と2つの「H」から成るフレームワークです。
- What(なに)
- Why(なぜ)
- Whom(だれに)
- Who(だれが)
- When(いつ)
- Where(どこで)
- How(どのように)
- How much(いくらで)
これらを意識して文章を組み立てると、必要な情報を過不足なく、読み手に正確に伝えられます。企画書の書き方における3つ目のステップ「企画内容」を書く際に役立つフレームワークですが、企画書作成に限らずビジネスのあらゆるシーンで活用できます。実際に書き出す前に、まずは情報を6W2Hに当てはめて整理することから始めるとよいでしょう。
MECE
MECE(ミーシー)とは「モレなく、ダブりなく」を意味する言葉です。
「MECE」という名称は「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字をとっており、それぞれが持つ単語の意味は以下のとおりです。
- Mutually(互いに)
- Exclusive(重複せず)
- Collectively(全体に)
- Exhaustive(漏れがない)
MECEはロジカルシンキング(論理的思考力)の基本となる概念です。企画書を書くうえでも倫理的かつ客観的な思考が不可欠であり、MECEを意識することで説得力のある高品質な企画書を作成できます。
企画書の書き方で押さえておくべきポイント
企画書を書くときに押さえておきたいポイントを以下にまとめました。
フレームワークを活用する
上記で取り上げたフレームワークはすべて企画書を書くときに役立つものです。
現状分析を行うときは「3C分析」と「SWOT分析」、具体的な企画内容をまとめるときは「6W2H」を活用できます。また、全体を通して「MECE」(モレなく、ダブりなく)を意識しながら情報をまとめていくと、企画書に対する読み手からの信頼を得やすくなります。
これらのフレームワークを積極的に活用し、相手に伝わる企画書を作りましょう。
図やグラフを挿入する
企画書に図やグラフを用いると視覚的にわかりやすくなり、読み手の理解を効果的に促すことができます。これらを使うときはデザインを揃えることも重要で、例えば複数のグラフを挿入するなら文字のフォントや色、サイズ、配置場所を統一します。企画書に挿入するスペースがない場合は参考資料として添付するとよいでしょう。
具体的な数値を示す
伝わる企画書を作成するためには、抽象的な表現を使わないことが重要です。
例えば「これまでよりも大幅に向上する」という表現には具体性がなく、いつの時点と比べているのか、実際にどのくらい向上するのか読み取れません。ここでは「これまで」「大幅に」を具体的な数値に直し、「2022年3月末時点の成績と比べて25%向上する」などの表現に変えたほうがよいでしょう。企画書を書くときは、自分の主観が入っていないか、客観的な表現になっているか確認することをおすすめします。
会社にもたらすメリットを提示する
企画書とは企画内容を説明するだけの書類ではありません。関係者からの賛同を得るためには、企画を実行することで自社にどのようなメリットがあるのかを具体的に示すことが重要です。会社にもたらす成果が示されていると、成功のイメージが湧きやすくなり、企画に対してポジティブな印象を持ってもらえます。
シンプルにまとめる
企画書では具体的なアクションプランを提示しますが、情報量が多ければ多いほど良いというわけではありません。ポイントは、必要な情報を漏れなく記載しつつ、なるべくシンプルにまとめることです。あれもこれもと情報を盛り込みすぎず、軽く目を通すだけでも企画の要点がわかるようにするのが理想です。
おわりに
企画書とは、新規プロジェクトの実現に向けたアクションプランを提示し、関係者からの賛同を得るための書類です。基本的な書き方を知っておくと、企画内容の要点が読み手に伝わりやすくなり、企画の実現性を高めることにつながります。現状分析や文章作成に役立つフレームワークも活用しながら、相手に伝わる企画書を作成しましょう。