「心理的安全性」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?心理的安全性は組織の維持・発展のために重要なポイントとして述べられることが多いですが、業務改善に取り組むための第一歩として重要な要素です。今回の記事では、心理的安全性の概要と、心理的安全性を高めるための基本的な方法についてご紹介します。

そもそも「心理的安全性」とは

心理的安全性はあちこちで用いられていますが、概要をどの程度理解できていますか?まずは言葉の意味から、細かくご説明します。

基本的な言葉の意味

心理的安全性(phychological safety: サイコロジカルセーフティー)は「チームメンバーが、自分がどう思われるのかを気にすることなく、チーム内で自由に発言・行動できるかどうか」を表すものです。

チーム内で、役職や年齢に縛られたり関係性が薄かったりするために、発言や行動を躊躇してしまう場面はないでしょうか。例えば、業務で分からないことがあっても馬鹿だと思われるのが嫌で言えない、部下が上司と反対の考えを持っていたときに対立が怖くて意見を場に出せない、などです。年功序列の制度や、遠慮・気遣いが文化として残る日本企業では、特にそうした傾向が顕著です。
そのような、チームの目標達成と関係のない部分での不安や心配が生じることなく、メンバーが自由に発言・行動できる状態が、心理的安全性が高い状態と言えます。

【注意】勘違いしやすいポイント3つ

心理的安全性は最近になって注目され始めた言葉であることもあり、言葉の意味が誤解されていることがしばしばあります。今回はよく勘違いされがちなポイントを3つご紹介します。

1.「チーム」の中で生じるものである

心理的安全性は3名以上のメンバーがいるチーム・組織の中で、それぞれの関係性が作用しあうことで生じるもので、1対1の関係性での安心感や信頼とは別物です。したがって、チーム内のメンバーがそれぞれ1対1で良い関係性を築けていたとしても、チームとしての心理的安全性が高いとは言えません。

2.「仲が良い」だけでは意味がない

心理的安全性が高いことと、チームの仲が良いことは異なります。もちろんメンバー同士の親睦を深めることは、不安を感じたり遠慮をしたりすることを防ぐひとつの要素にはなりますが、それだけでは心理的安全性が高いとは言えません。
チームメンバーの作業にミスがあったときやメンバー同士で意見が食い違ったとき、躊躇なく指摘することができるでしょうか。心理的安全性はあくまでも、チームの目標達成のために必要な要素です。目標達成のために必要であればきちんと指摘し合うことができ、どれだけ言い合っても信頼が揺るがない状態こそ、心理的安全性が高いと言えます。

3.言いたい放題・やりたい放題ではない

当然ですが、ただ言いたい放題・やりたい放題にして良いわけではありません。正直に物事を伝え合うだけでは、良いチームとは言えません。チームメンバー同士がリスペクトし合えていることが大前提として重要なので、適切な配慮や気遣いがある方が望ましいです。

なぜ心理的安全性が重要なのか

心理的安全性は、なぜここまで重要視されているのでしょうか?心理的安全性を高めることのメリットをご紹介します。

1.情報共有がスムーズになる

心理的安全性が高まると、気軽に意見を交わせることから自然と情報が共有されやすくなります。情報共有のスムーズさには、コミュニケーションコストが下がることだけでなく、業務改善に取り組みやすくなるというメリットがあります。例えば、どんな業務でミスが多いのか・なぜ遅れが発生するのかなどの業務上の問題を把握できることから、業務の改善点が明らかになる場合や、新しいツールについて会話したことで導入が決まる場合など、があります。

2.チームの学習効率が向上する

日々の業務効率だけでなく、チームの学習効率が上がることも重要なポイントです。組織を動かす上では、より多くのPDCAを回し組織としての知見をためていくことが重要ですが、そのためには気軽に挑戦できる環境と、それに付随してメンバーの失敗やミスを許容できる文化が必要です。心理的安全性を高めることはチームメンバーの失敗への恐怖心を和らげ、気軽に挑戦できる文化の醸成に繋がります。結果、チーム内でのPDCAサイクルが促進されチームの学習効率が向上します。

3.メンバーの仕事への意識を上げる

心理的安全性は、メンバーの仕事に対する意識にも繋がっています。目の前の作業の意義を理解したり仕事への貢献感を持つことは、人が働き続ける上で重要な要素であり、心理的安全性はそれらの土台として機能しています。Googleが心理的安全性についてまとめた以下の図からも読み取ることができます。

チームの効果性に影響する因子
引用: Google re:Work「効果的なチームとは何か」を知る」

マズローの欲求5段階説にも共通しますが、まずは自分の身の回りの環境に最低限の安全を感じられなければ「チームで目標達成したい」「そのためにスキルアップしたい」といったことへのモチベーションや、業務改善にあたって必要な「より良い仕事をしたい」という向上的な意識も生まれません。チームメンバーの意識を高めるために、心理的安全性は不可欠なのです。

【参考】Googleチームの成功と心理的安全性
チームの成功において心理的安全性が重要であることが証明された例として、Googleを取り上げます。
心理的安全性はGoogleの効果的なチーム運営においても重要視されている要素のひとつです。Googleの人事部は日頃から、アナリティクスチームの分析結果をもとに人事政策を行うことをモットーにしており、適切な人員配置を検討するため「成功するチームの特徴」についても細かく分析しました。
チームメンバーの性格、食事の回数や趣味の共通性などの細かい要素も含めて調査しましたが、それらの要素から成功しているチームの特徴を見つけ出すことはできず、最終的に心理的安全性に関する調査をした結果、それが優れたチームワークの要因を最も裏付けることが分かりました。

心理的安全性を高めると効果が出やすいチームの特徴

心理的安全性はどのチームでも最低限必要ではありますが、心理的安全性を高めた場合に特に効果を実感しやすいチームにはいくつかの特徴があります。ご自身のチームがあてはまるか、確認してみてください。

仕事での相互依存性が高い

仕事を進める上での協働の必要度合いが高いほど、改善できる業務が多く、心理的安全性を高める効果が大きいと言えます。例えば、1人でアポから契約までを行う営業部よりも、複数名で1つのプロジェクトを動かしているチームの方が、心理的安全性の影響を受けやすいと言えます。

役職や経験値がバラバラのメンバーが集まっている

一般的に若手や経験値の浅いメンバーは立場が弱いため、発言や行動が遠慮がちになる傾向にあります。具体的には、分からないことがあっても聞けない、自分で判断するのが怖くなり言われたことしかできなくなる、などです。心理的安全性を高めることでチーム内の圧力を抑えられるので、立場の弱いメンバーを救済する策となります。
よくある業務改善の施策として、マニュアルや作業手順書を作成してノウハウや基準を共有する、ということも可能ですが、業務がそれほど定型化されていなかったり、本人が声をあげられる環境を作りたいという場合には、心理的安全性を高めることが有効です。

別の場所で作業をしている

オンラインでのコミュニケーションが多いと、ちょっとした情報共有ができなかったり、相手の反応を直接見られないため不安感を抱きやすかったりするだけでなく、そもそもチームとしての意識を持つことが難しくなります。リモートワークが主流になっている時代ですが、普段顔を合わせないチームは尚のこと、心理的安全性に目を向ける必要があります。

心理的安全性の高さを判断する方法

では、自分のチームの心理的安全性が高いかどうかはどう判断したら良いのでしょうか。心理的安全性という言葉を初めて提唱した、ハーバードビジネススクールの教授であるエドモンソン氏が使用している方法をご紹介します。

エドモンソン氏は、以下の7つの質問をチームメンバーに問うことで、チームの心理的安全性のレベルを確認できるとしています。

  1. チームの中でミスをしても、ほとんど非難されることはない。
  2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
  3. チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがない。
  4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
  5. チームの他のメンバーに助けを求めることは容易である。
  6. チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
  7. チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。

実際に活用する場合は、より正確なデータをとるため、7つの質問にそれぞれ3〜5段階のレベルを設けて、数値で回答してもらうのがおすすめです。

ただ個人的には、「チームの状況を自分で見直してみること」が最重要であると考えています。心理的安全性は各チームの中で生まれる雰囲気や文化に近いので、心理的安全性を構成している要素もチームごとに異なります。したがって、質問の回答では見えない部分で、そのチームにとって重要なポイントがあるはずです。今のチームの状態は安全と言えるのか、自分自身で考えてみてください。

心理的安全性を高めるための方法

先述した通り、心理的安全性を構成する要素はチームごとに異なるので、心理的安全性を高めるためにも「これをすれば心理的安全性が高まる」と言えるような絶対的な方法はありません。ただ、チームの状況に合わせた改善策を考えるのは難易度が高いため、取り入れやすいアクションをいくつかご紹介します。

  1. チーム内でのメンバーごとの発言量を揃えるよう意識する
  2. 立場の弱いメンバーに積極的に話を振る
  3. 1on1や360度評価を取り入れ、メンバーが素直に話せる場を設ける
  4. メンバーの強みやリーダーシップについてフィードバックする機会を設ける
  5. まずは尊敬の念を持つよう意識する

特に、尊敬の気持ちを忘れずチームメンバーを尊重しようという意識は重要です。他メンバーの主張を頭ごなしに否定したり、部下だからと軽んじたりすることなく、いちチームメンバーとして平等に関わることが大切です。

また、チーム内の心理的安全性を高めるための個人の取り組みとして「完璧を求めない」「とりあえず場に出す」などの意識を持つよう、部下に直接伝えてみても良いでしょう。

自分のチームの状況に合わせて、検討してみてください。

おわりに

心理的安全性を高めることは、業務改善に取り組みやすくするためにも、施策の効果を上げるためにも効果的です。業務改善を考えている方は、自分のチームの心理的安全性についてぜひ見直してみてください。また、リーダーとメンバーでは心理的安全性の捉え方が変わってきます。メンバー視点でも、ぜひ一度考えてみてくださいね。

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