始末書は業務上のミスやトラブルを起こした本人が作成する書面です。従業員に反省を促し、再発を防ぐための対応を誓約させる目的があります。
この記事では始末書の例文と書き方のポイントを紹介します。従業員に始末書を書かせる場合の注意点も解説していますので、今後の対応に活かしていただければ幸いです。
始末書とは
始末書とは、ミスやトラブルを起こした従業員が反省の意を示し、同様の事態を起こさないよう誓約するための書面です。当事者である従業員本人に始末書を書かせることで、ミスやトラブルの経緯と原因を振り返り、再発を防ぐために何をすべきか自ら考えさせることができます。
始末書は従業員の反省を促すことに重きを置いており、問題の経緯と再発防止策を客観的に記載する「顛末書(てんまつしょ)」とは目的が異なります。顛末書の目的は再発防止にあり、問題を起こした本人ではなく第三者が記載することもあります。
始末書を作成するシーン
始末書の作成・提出が必要になる主なシーンは次のとおりです。
- 正当な理由のない遅刻を繰り返したとき
- 会社の備品を紛失・破損したとき
- 仕事上のミスによって関係者が迷惑を被ったとき
- 社用車で交通事故を起こしたとき
- 就業規則に違反したとき
本人に責任のあるミスやトラブルが起きた際には、反省と再発防止を促す目的で始末書を書かせることがあります。企業としても仕事上のミスやトラブルが発生した経緯を把握し、従業員に対する処分の根拠とすることができます。
始末書の書き方
始末書は不祥事の経緯を説明するだけでなく、反省や謝罪の意を示して再発防止を約束する目的があります。ここでは読み手に伝わる始末書の書き方を紹介します。
発生日時と事実の内容を記載する
始末書には事象が発生した年月日や時間、場所、状況について正しく記載します。
始末書を書き始める前に時系列を整理しておくと効率よく書き進められます。
自分の不注意が原因でトラブルが起きてしまうと、少しでも責任を軽くするために事実を曖昧にしてしまうことがあります。しかし、言い訳のような始末書では反省の意が伝わらず、「本当に反省しているのか」「また同じミスを繰り返すのではないか」と不信感を持たれてしまいます。事実を曖昧にしたり誤魔化したりせずに、いつ・どこで・何が起きたのかを明確にすることが大切です。
例:交通トラブルの場合
〇年〇月〇日〇時頃、〇〇区〇〇町の〇〇交差点において追突事故を起こしてしまいました。
双方に怪我はありませんでしたが、車両の修理が必要な状況となりました。
事実に対する反省を記載する
記載した事実に対する責任を認め、反省や謝罪の意を示します。
ミスやトラブルが起きた原因を分析したうえで、それが自分自身の責任であること、関係者に迷惑をかけたことへの反省・謝罪の言葉を記載します。
例:遅刻を繰り返した場合
度重なる遅刻によって業務進行に遅れが生じ、関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
再発防止策を記載する
最後に再発防止策を記載します。
今回発生したミスやトラブルを踏まえ、同様の失敗を繰り返さないためにどのような対応を講じるのか、再発防止の決意を明示しましょう。
事象に対する反省や謝罪の言葉だけでなく、それを受けて今後どうしていくのかまで具体的に記載することが大切です。
例:備品を紛失した場合
二度と同じ過失を繰り返さないよう、総務部内で管理体制の見直しを行いました。
終業前に持ち出し記録の確認を行い、「いつ」「誰に」「何を」「いくつ」貸し出したかを常に把握するようにいたします。
【状況別】始末書の例文
始末書が必要になるのは以下のような状況にあるときです。
- 遅刻をしたとき
- 物品を紛失したとき
- 物品を破損したとき
- 作業ミスを起こしたとき
- 交通トラブルを起こしたとき
ここでは始末書の例文を状況別に紹介します。
遅刻したときの例文
私は〇年〇月〇日から〇年〇月〇日までの期間に〇回遅刻をいたしました。
〇〇課長よりその都度注意を受けていたにもかかわらず、正当な理由なく遅刻を繰り返し、関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深く反省しております。
遅刻の原因は私の自己管理能力の欠如に他ならず、弁解の余地もございません。
今後は起床時間を毎朝6時に固定し、十分な睡眠を確保することで生活習慣を整え、自己管理を徹底いたします。二度と遅刻をすることがないよう、一社会人としての自覚を持ち、再発防止と信頼回復に努めてまいります。
物品を紛失したときの例文
〇年〇月〇日、私の不注意により会社所有の〇〇を紛失し、皆様に多大なるご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。
紛失の原因は、持ち出し記録の確認を怠り、保管場所を明確にしていなかった点にあります。私の確認不足と管理の甘さが原因であり、弁解の余地もございません。現在、各部署に確認を行っておりますが、○月○日現在も発見できておりません。
今後は終業前に持ち出し記録のチェックを行い、「いつ」「誰に」「何を」「いくつ」貸し出したかを常に把握するとともに、持ち出し記録と保管場所の個数に相違がないか確認いたします。同様の過失が再発しないよう管理体制を見直し、細心の注意を払って職務に臨む所存です。
物品を破損したときの例文
〇年〇月〇日、私の不適切な取り扱いにより、会社所有の〇〇を破損してしまいました。
破損の原因は確認不足と操作ミスであり、ひとえに私の注意力の欠如がもたらした結果でございます。この度の過失により、多大なるご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
今後は基本的な取扱手順や確認事項を遵守し、二度とこのようなことが起きないよう再発防止に努めます。また、必要な知識や技術の向上に努め、丁寧な作業を心がけることを固くお誓いいたします。
作業ミスを起こしたときの例文
これは発注作業における私の集中力の欠如が原因でございます。業務の進行を優先するあまり、慎重さを欠いていた点も深く反省しております。
今後は発注前の確認作業を徹底し、上司や同僚とのダブルチェックを実施いたします。また、異常な数量が入力された際にはアラートが表示されるよう、システム面での再発防止策も講じてまいります。同様の過失を二度と起こさないよう細心の注意を払い、職務に取り組む所存です。
交通トラブルを起こしたときの例文
〇年〇月〇日〇時頃、社用車の運転中に追突事故を起こしてしまいました。場所は〇〇区〇〇町の〇〇交差点です。幸いにも、被害者の方および私自身に怪我はありませんでしたが、車両の修理が必要な状況となりました。この度の件で関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。
事故の原因は前方車両への注意不足とブレーキ操作の遅れにございます。外の景色に気を取られたことで安全確認が遅れ、その結果として今回の事態を招いたことを深く反省しております。
今後は安全運転を徹底し、スピードの抑制と車間距離の確保を心がけるとともに、運転中の集中力を一層高めて再発防止に努めることをお誓いいたします。この度は誠に申し訳ございませんでした。
始末書を書かせるときの注意点
従業員に始末書を書かせるときには以下の点に注意する必要があります。
始末書の提出義務を就業規則に明記する
就業規則に始末書に関する規定がない場合、従業員に対して作成・提出を強要することはできません。業務命令として始末書の提出を求めるためには、あらかじめ就業規則に「始末書が必要なケース」を明記しておく必要があります。
始末書については厚生労働省がまとめた「モデル就業規則」にも記載されています。こちらを参考に、自社の就業規則を見直してみることをおすすめします。
(懲戒の種類)
第67条 会社は、労働者が次条のいずれかに該当する場合は、その情状に応じ、次の区分により懲戒を行う。
① けん責
始末書を提出させて将来を戒める。
② 減給
始末書を提出させて減給する。(略)
③ 出勤停止
始末書を提出させるほか、〇日間を限度として出勤を停止し、
その間の賃金は支給しない。
(以下略)
参照元:モデル就業規則|厚生労働省
始末書の文章は従業員本人に考えさせる
始末書を書かせるときは「従業員本人に考えさせる」ことが大切です。始末書の目的は本人に反省と再発防止を促すことであり、自分の言葉で書いたものでなければ意味がありません。例文を示して「これをそのまま書けば良い」と指示するのではなく、ミスが起きた経緯や原因、業務に支障をきたしたことへの反省、二度と同じミスを繰り返さないための対応など、従業員自身の言葉で書かせるようにしましょう。
本記事でも始末書の例文をまとめていますが、これらはあくまで一般的な例文に過ぎません。文章の構成や流れを参考にすることはできますが、実際に始末書を書くときには事実に即した内容を当事者本人の言葉でまとめる必要があります。
おわりに
始末書とは、従業員本人に責任のあるミスやトラブルに対して反省の意を示し、同じ失敗を繰り返さないよう再発防止を誓約するための書面です。読み手に伝わる文章を書くためには、始末書の基本的な書き方を押さえておく必要があります。
始末書に記載する項目は次のとおりです。
- 発生日時と事実の内容
- 事実に対する反省
- 再発防止策
始末書の作成が必要になるシーンには、度重なる遅刻や備品の紛失・破損、社用車利用中の交通トラブルなどが挙げられます。ミスやトラブルを起こした本人は少しでも責任を軽くしたいと考えるかもしれませんが、始末書は「事実を正確に、正直に書く」ことが重要です。従業員に始末書を書かせる場合は、問題となった事象を自分自身でしっかりと振り返ってもらい、自分の言葉で考えて書くように促しましょう。