近年、企業を取り巻く環境が急速に変化するなか、従業員の理解と行動を促しながら変革を定着させる手法として「チェンジマネジメント」が注目されています。組織変革を成功させるには、従業員一人ひとりが変化を前向きに受け入れ、自ら行動できる環境を整えることが重要です。
この記事では、チェンジマネジメントの基本的な考え方や進め方、代表的なフレームワークについて解説します。
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チェンジマネジメントとは
チェンジマネジメントとは、組織が新しい仕組みや制度を取り入れる際に、従業員や関係者が迅速に適応できるよう支援する手法をいいます。
チェンジマネジメントの具体例としては以下のようなシーンが挙げられます。
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- DX推進に向けて新システムを導入する際、研修やトレーニングを重ねて従業員の不安を解消する
- ビジネスモデルの転換に伴い、顧客や従業員へのフォローを重ね、新しい仕組みやサービスへの理解を深める
- 組織再編で役割が変わる場合、意図を丁寧に伝えて段階的に移行する
変化や変革を行う際は、従来のやり方に慣れた人や新しい仕組みに不安を感じる人など、必ず一定の抵抗が生まれます。チェンジマネジメントは、こうした「人の受け止め方」に着目し、不安や抵抗といったネガティブな感情に対応しながら、組織全体の変革を円滑に進めることを目的としています。単に制度を導入するだけではなく、関係者の理解・納得を得て行動変容を促すことが、組織変革を成功に導く鍵となります。
チェンジマネジメントが注目される背景
近年、少子高齢化に伴う人手不足やグローバル競争の激化、AI技術の進展など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。不確実性の高いVUCA時代とも呼ばれるなか、企業が持続的に成長し競争力を維持するためには、従来のやり方にとらわれず柔軟に変革を進め、変化に適応していくことが求められます。
しかし、先述したように変化や変革には現場の抵抗を伴うケースが多く、計画通りに進まないことも少なくありません。そこで、従業員の理解と行動を促し、新しい仕組みを組織に定着させるための方法として、チェンジマネジメントの重要性が高まっているのです。
チェンジマネジメントのアプローチ手法
チェンジマネジメントの手法は、大きく「個人レベル」「プロジェクトレベル」「組織レベル」の3つのフェーズに分かれます。ここでは、各レベルにおけるアプローチ方法をご紹介します。
個人レベル
個人レベルのチェンジマネジメントは、従業員一人ひとりに変革の意義を理解してもらい、その過程で必要となる知識やスキルの習得に前向きに取り組めるよう支援することを目的とします。変化に対する受け止め方は人それぞれ異なるため、上司との対話や個別面談などを通じて丁寧にコミュニケーションを取り、個々の不安や疑問に寄り添いながら新しい役割への適応をサポートすることが求められます。
プロジェクトレベル
プロジェクトレベルのチェンジマネジメントは、特定のプロジェクトを円滑に進めることを目的とし、メンバーに対して変革の目的や役割を共有しながら進行を管理します。これにより、メンバーが変革の意識を高めて自らプロジェクト内で変化を生み出し、その成果が企業全体の変革へと波及していきます。
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組織レベル
組織レベルのチェンジマネジメントは、組織全体の文化や構造を変革に合わせて整え、持続的な成長や競争力の強化につなげることを目的とします。そのためには、個人やプロジェクト単位で生まれた行動変容を組織全体に広げ、制度や文化として定着させていく必要があります。まずは従業員一人ひとりが変化を前向きに受け入れ、新しい役割や業務に積極的に取り組める環境を整えることが重要です。
変革を阻む「チェンジモンスター」の存在
組織変革を進めるうえで大きな障壁となるのが「チェンジモンスター」の存在です。チェンジマネジメントの文脈では、企業が進める新しい取り組みへの心理的な抵抗感を意味し、結果として変革の進行を遅らせてしまう要因の一つとなります。
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以下はチェンジモンスターの種類の一例です。
- タコツボドン:自分の担当業務以外に関心を持たない人
- ウチムキング:社内評価を優先し、顧客や社会の視点を軽視する人
- ノラクラ:理由を並べて行動せず、変化を先送りにする人
- カイケツゼロ:問題提起はするものの、改善への行動を起こさない人
こうしたチェンジモンスターは一定数存在するため、変革を進めるうえでは変化に後ろ向きな従業員への対応が欠かせません。何に対して不安や抵抗を感じているのかを把握し、その背景や理由に寄り添いながら丁寧に説明や支援を行うことが重要です。変革に対する抵抗感そのものを否定するのではなく、対話を通じて変革の目的や意義への理解を深め、前向きな行動へとつなげていくことが求められます。
チェンジマネジメントの基本プロセス
変革に対する課題や抵抗があるなか、チェンジマネジメントを成功させるにはどのように進めていけばよいのでしょうか。ここでは、ハーバード大学ビジネススクール名誉教授であるジョン・コッター氏が提唱した「変革の8段階プロセス」に沿って、チェンジマネジメントの具体的な取り組み方をご紹介します。
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【1】危機意識を高める
最初のステップは、市場環境の変化や競争の激化、自社の業績などのデータを示し、組織内で「今変わらなければならない」という共通認識を形成することです。現在の立ち位置とともに、変革を避けた場合に想定される影響を具体的に説明し、従業員一人ひとりに「危機意識」を持ってもらいます。
【2】変革推進チームを構築する
次に、組織の変革を主導するチームを編成します。各部門のリーダーや影響力のある人材など、役職にとらわれず幅広いメンバーを選出し、多様な視点と実行力を備えた体制を構築することが重要です。
【3】ビジョンと戦略を策定する
将来のあるべき姿を示すビジョンと、それを実現するための戦略を策定します。ビジョンは実現可能であることに加え、将来像を具体的にイメージできるシンプルで魅力的な内容が求められます。明確な指針があれば、組織全体が一丸となって同じ目標へ進むことができます。
【4】ビジョンを共有・浸透させる
策定したビジョンは、社内広報や説明会などさまざまなチャネルを用いて繰り返し発信し、組織全体に浸透させていきます。言葉で伝えるだけでなく、変革推進チームのメンバーが自らの行動でビジョンを体現することも重要なポイントです。
【5】自発的な行動を促進する
既存の制度や慣習、古いシステムなど、変革の障害となっている要素を取り除き、従業員が主体的に行動できる環境を整備します。また、失敗を恐れずに新しい取り組みを始められるよう、従業員の挑戦を後押しする評価制度や支援体制の構築も欠かせません。
【6】短期的な成果を創出する
短期間で達成可能な目標を設定し、実際に成果を創出していくフェーズです。小さな成功体験の積み重ねは、次の取り組みへのモチベーションとなり、変革への信頼感や組織内の前向きな雰囲気を醸成します。また、短期的な成果を上げた人材を評価し、適切な報酬や称賛を与えることも重要です。
【7】成功体験を次の変革につなげる
得られた成功要因を分析し、さらなる改善や変革へとつなげていきます。この段階では組織のビジョンが浸透し、従業員一人ひとりが自発的に動ける環境が整っているため、大きな変革へと発展させやすくなります。
【8】新しいアプローチを組織に定着させる
最後のステップは、変革によって生まれた新しい仕組みを組織に根付かせることです。評価制度への反映や次世代リーダーの育成などを通じて、変革を一過性の取り組みに終わらせず、組織文化として定着させることが求められます。
その他の代表的なフレームワーク
チェンジマネジメントのフレームワークは、コッターの8段階プロセス以外にもさまざまあります。ここでは、変革の進め方をシンプルに整理した「レヴィンの組織変革プロセス」と、人の心理的変化に焦点を当てた「ブリッジズのトランジション理論」をご紹介します。
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レヴィンの組織変革プロセス
ドイツの社会心理学者クルト・レヴィン氏が提唱したフレームワークで、組織変革のプロセスを以下の3段階に分けて捉えるものです。
- 解凍(Unfreeze):変化を受け入れる土台をつくること
- 変革(Change / Move):新しい仕組みや行動へ移行すること
- 再凍結(Refreeze):変化を定着させること
最初の「解凍」は、現状への問題意識を高め、従業員が変化を受け入れられる状態を整える段階です。次の「変革」では、新しい制度やプロセスを導入し、実際の行動を変えていきます。最後の「再凍結」は、新しいやり方を組織の文化として定着させ、元に戻らないよう仕組み化することを指します。このプロセスを段階的に実行することで、変革の混乱を抑えながら持続的な成果につなげることができます。
ブリッジズのトランジション理論
アメリカの心理学者ウィリアム・ブリッジズ氏が提唱した理論で、人が変化を受け入れる過程を以下の3段階に分けて捉えるものです。
- 終焉(Ending):これまでのやり方や価値観を手放す段階
- 中立圏(Neutral Zone):変化の途中で試行錯誤が続く移行期間
- 新たな始まり(New Beginning):新しい状態が定着し始める段階
まず「終焉」の段階では、これまでの役割・環境が変わることに対して喪失感や戸惑いを感じやすくなります。次の「中立圏」では、新旧の状態が混在し混乱が生じる一方で、新しい発想が生まれやすい時期でもあります。最後の「新たな始まり」は、新しい仕組みや行動が受け入れられ、一定の抵抗や不安を抱えつつも変化に適応していく段階です。変革プロセスをスムーズに進めるためには、このような個人の心理変化を踏まえたマネジメントが必要となります。
おわりに
これまでのやり方を変えることには混乱や抵抗を伴うケースが多いものの、それを避けていては企業の成長は望めません。チェンジマネジメントは、変化や変革を受け止める従業員の心情に配慮しながら、組織全体で新しい取り組みを定着させる手法です。まずは従業員一人ひとりが当事者意識を持てるよう、変革の必要性を認識してもらうことから始めましょう。本記事で紹介したチェンジマネジメントの基本プロセスを参考に、段階的に従業員の理解と行動を促進していくことが求められます。
