BPM とは「Business Process Management (ビジネスプロセスマネジメント)」の略称です。ビジネスにおいて業務フローや業務プロセスを管理し、継続的な業務改善を実現するための手法です。本記事では、BPMの基本を知りたい方を対象に、BPMの考え方や具体的なツールをご紹介します。

BPMとは

BPMは「Business Process Management (ビジネスプロセスマネジメント)」の頭文字を合わせた略称で、定型的な業務を対象とした継続的な業務改善を目的として考えられた管理手法です。業務プロセスを可視化し、継続的に生産性と効率性を管理・計測することで、プロセスを改善し続けるマネジメントの方法になります。

BPMについて表した図
BPM(ビジネスプロセスマネジメント)の概要図

BPMの考え方と基本要素

ここではBPMの基本を少し掘り下げます。BPMを構成する以下の要素が継続的なパフォーマンス改善を実現する根幹となっています。

業務の流れをプロセスとして捉える

業務の多くは開始から終了までの流れが決まっていて、複数の部署・担当者が決まった流れで順番に作業を進めていくことで業務が完成します。BPMでは一連の業務の流れを「プロセス」として考えます。業務全体を手続き・順序が存在するプロセスとして捉え、部分的にではなくプロセス全体を最適化し、より良い状態にすることを目指した考え方になります。

業務の流れをモデル化する

マネジメントの対象を一連のプロセスとして捉えることで、業務の流れをモデル化する(=特定の型として考える)ことができます。モデル化は標準化と捉えていただいても差し支えありません。業務の流れを毎回変わるものではなく固定的なものにすることで、定量的に問題点や課題、ボトルネックを明らかにできるようになります。

継続的な改善を前提としている

繰り返しになりますが、BPMを際立たせる特徴は「継続性」です。一時的な改善ではなく、対象事業の目的や価値を理解したうえで、繰り返し発生する業務を少しずつ改良していくことで継続的な業務パフォーマンスの向上が実現できます。

BPMがマネジメント手法として優れている点

BPMの前身となる考え方の一つにBPR(Business Process Re-engineering:ビジネスプロセス・リエンジニアリング)があります。BPMと似た言葉ですが、BPRは「業務改革」と訳され、Re-enginieering(リエンジニアリング)という言葉からも業務プロセスや組織構造の再構築を表します。

BPMとBPRの差異は端的に言うと”継続性”になります。BPRは特定のテーマや課題を解決するための打ち手としてフローや体制の再構築を行いますが、あくまでも一時的な改善活動です。その一方で、BPMでは改善活動を継続的に実施することを前提としています。BPMはBPRを継続的に繰り返している状態と近く、継続的にBPRを繰り返すことで外部環境が変化しても柔軟な対応が可能となり、持続性が高い業務プロセスを構築できている状態が実現できます。少々乱暴に説明すれば、BPMはBPRが進化した形、ということができます。

BPMを活用する目的

既に述べている通り、BPMは一連のプロセスがある程度決められている業務や定型業務を対象に活用されます。BPMを活用する目的は端的に言えば、「より生産性が高い状態にすること」となりますが、QCDの観点で捉えると分かりやすいです。QCDはそれぞれ以下の頭文字を持った内容です。

  • Q: Quality(品質)
  • C: Cost(費用)
  • D: Delivery(納期)

また、QCDにおいては関係性が重要でこれらの3要素はトレードオフ(一つの要素を改善するために別の要素を犠牲にしなければならない)関係にあります。

QCDの概要を表した画像です。
QCDの関係性について表した図

BPMに取り組む際には、対象の業務の現状を把握し、QCDのどの部分に対してアプローチしたいのかを明確にすることが重要となります。QCDの基本・詳細について解説した記事がありますので、合わせて参考にしてください。

BPMによって得られる具体的なメリット

BPMを活用することで得られるメリットについて、抽象的なレベルではQCDの改善になりますが、よりイメージしやすい具体的な効用では、例えば以下のようなものになります。

業務の標準化による品質の安定

BPMによって業務がモデル化されることで、誰から見ても明確な手順・方法で業務が表現されることになります。それにより、マネジメントする管理者だけでなく、作業メンバーも業務プロセスについて共通認識が持てます。組織全体の業務プロセスへの認識が揃いマネジメントしやすくなるだけでなく、業務品質も安定と向上が実現できます。

業務の属人化の解消

業務の流れが標準化され、マニュアルやフロー図といった形で可視化されるので、メンバーの熟練度や知識量に依存せず、安定して作業ができるようになります。また、これにより新たなメンバーが増えた場合や、配置換えなどが発生しても迅速に適応できる土壌が整います。

部署を横断した業務改善の実現

マネジメント対象が業務プロセス全体であることから、業務に関わる部署や担当者のすべてを包括した管理となります。ただし、実態としては現場におけるBPMの管理範囲は様々で、特定の部署で閉じたマネジメントとなることも少なくありません。このようなケースでも徐々に管理対象の範囲を前後に広げていくことで、より包括的に、業務全体に関わる全ての関係者を巻き込んだ業務改善が可能となります。

外部環境の変化にも柔軟に反応し最適化できる

継続的なマネジメントと改善を前提としているので、外部環境が変化した場合でも瞬時に気づくことが可能となります。さらに、変化に気づくだけでなく、改善活動自体が継続的に実施されている状況なので、その変化にあわせた業務プロセスの最適化も迅速に行えます。

リソースの最適化による業務効率の向上

業務プロセスが可視化されると作業ごとに必要なスキルや対応が明らかになります。それにより、適した能力を持ったメンバーのアサインが可能となり、業務生産性が向上します。実際に適材適所を実現するためには個々のメンバーのスキルや能力についても可視化が必要です。スキルを可視化する手法となるスキルマップの作成方法について解説した記事も合わせて参考にしてください。

BPMに取り組む前の確認事項

BPMの管理対象となる業務かどうか

前提として「作業の流れやフローが決まっていて、繰り返し発生する定型業務」が管理可能な対象となります。逆に管理が難しい業務としては、プロジェクトやタスクフォースで発生するような「一時的な課題解決や目標達成を前提とした流動的な業務」はマネジメントの対象外です。観点として、以下のすべてに該当していればBPMによるマネジメント、業務改善が行えます。

  • 作業の流れやフローが決まっている、または決めれられる
  • 繰り返し発生する(日次・週次で発生するような頻度が高い業務)
  • 複数のメンバーやチームが連動しながら対応している

BPMに取り組むかどうかの判断ポイント

生産性向上のためにBPMに取り組むとしても、効果が出やすいケースとそうでないケースがあります。基本的には以下の要素を確認ください。

1. 業務課題
現在抱えている業務上の課題や改善したい点がBPMによって効果を発揮できる領域かどうかを確認してください。以下を目的とした活動であれば、問題ありません。

  • 業務のQCD(品質、コスト、納期)のいずれかに改善したいポイントがある
  • そもそも、業務の標準化、可視化ができていないので実現したい

2. 発生している業務量
業務量が少ないと、BPMに取り組んでも効果が出づらいため、業務量について確認してください。目安としては以下です。

  • 対象業務に2名以上で取り組んでいる
  • 月当たり0.5人月以上の工数をかけている
  • 業務範囲の拡大、業務量増加の可能性がある

3. 対象部署・チームの規模
管理を想定しているチーム・部署の人数も重要な要素になります。チームがあまりにも少数の場合、効果が出づらいため注意してください。

  • 業務を対応しているメンバーの総数が3名以上
  • 組織拡大、組織再編の可能性がある

BPMの具体的な推進手順

BPMの流れを抽象化した場合、考え方自体はPDCAサイクルとほとんど同じものになります。
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)を継続的に繰り返し続けることで、常に最適な業務プロセスを実現し、高い生産性を維持できます。PDCAサイクルについては別の記事で詳細に解説されていますので、合わせて参考にしてください。

PDCAサイクルの流れを表した画像です。
BPMに取り組むためのPDCAサイクルの流れ

ここではより具体的にお伝えしたいため、PDCAより一段細かい、実際のBPMのステップを分解した内容で解説します。それぞれ順番に記載します。

BPMについて表した図
BPMの概要図

1. 設計

設計フェーズで実施することは以下になります。

  • 改善対象の業務を決定
  • 対象業務の現状について可視化・見える化
  • 定量的な改善目標(KGI・KPI)を決定

計画においては定量的な目標設定ができるように意識してください。例えば「ミスが多いから業務改善をして減らしたい」という場合、「1ヶ月で発生するミスの件数を現状のXX件からX件まで削減する」という形にしましょう。

また、計画を立てる前に重要となるのが「対象業務の現状について可視化・見える化」です。業務の現状を把握しなければ、目標を置くことも、そこまでの計画を立てることもできません。現状把握においてはBPMN(Business Process Model & Notation)というモデリング手法もありますが、そこまで厳密にこだわる必要はありません。
おすすめの方法は対象の業務に合わせ、必要最小限の要素に絞って業務プロセスのフローチャート(業務フロー図)を作成することです。フローチャートの基本的な考え方や作成方法をまとめた記事がありますので、合わせてご参考ください。

業務フロー図のサンプル画像です
業務フロー図のサンプル画像

また、よくある疑問として「業務が属人化しており明確な業務フローが存在しない場合はどうすればよいのか?」というものがあります。当該ケースにおいても複数パターンアウトプットがある状態でも良いので、可能な限り業務を可視化しておくことをオススメします。次のモデル化のステップで理想状態への標準化を実施するため、ここでは正しさや正確さを意識しすぎる必要はありません。

2. モデル化

現状の把握と目標設定が完了したら次にモデル化、つまり理想的な業務プロセスの設計を実施します。特に、設計段階で現在の業務プロセスがバラバラであることが判明した場合には、ここで想定される理想形を決めましょう。標準化のレベル感は目標や目的によって変わりますので、常に意識しながら取り組んでください。以下はあくまでも目安ですが、目標に応じたモデル化を目指してください。

<例> 目的が業務における単純なミス削減の場合
・大きな業務プロセスの変更は実施しない
・作業手順や方法が確立されていないことが原因である可能性が高いため、標準的なプロセス策定を目指す

<例> 大幅な納期短縮、業務効率化が目的の場合
・既存の業務プロセスの中でそもそも対応が不要な部分がないかを探し出す
・システムの導入によってプロセスを自動化、置き換えが可能かを検討する

また、目標を立てたら具体的な作業計画に落としていく必要があります。アプローチ方法は多岐にわたりますが、代表的なアプローチを紹介します。

  • 業務の廃止・統合…不要なプロセスや処理、作業を廃止・統合する
  • フローの再設計…業務の流れや方法を変更する
  • システム導入…作業を効率化するためにツールやシステムを導入する

特にオススメなのは、業務プロセスを再設計する際の観点が表されているECRSという考え方・アプローチです。ECRSについての詳細を記載した記事もありますので、合わせて確認してみてください。

3. 実行

計画した目標に到達できるように、変更後の業務フローを実行していきます。
もし、大規模な業務で突然の変更が難しい場合は、実行フェーズを更に分割して、少しずつ業務を変更していくことがBPMを成功させる鍵となります。必要に応じて、マニュアルの準備や説明会を実施できるとよいでしょう。
また、万が一、新しい業務プロセスが定着しない場合や、不具合が見つかった場合に対応できるようにリカバリ方法(元の業務プロセスに戻す等)の認識合わせは必ずしておきましょう。

4. 監視

実行状況をモニタリング・監視のうえ評価を行います。
ここでは「よりリアルタイムに業務の状況を把握できているか」「最初に設定したKPI・KGIなどの定量指標の実績を把握できているか」が重要になります。ツールなどを利用しても良いですが、最初はExcelやスプレッドシートを利用してKPI・KGIに合わせた表を作り、日次や週次で対象の指標を記録すると良いです。
この際に、可能であれば定量指標だけでなく定性的な情報(例えば、メンバーから「作業が楽になった」「コミュニケーションが取りやすくなった」など)を確認できると、潜在的な要素として判断や改善に活用できます。
情報の取りまとめは可能であれば、管理者やリーダーの方が対応してください。肌感覚として現場の状況を掴めるようになります。

5. 最適化

設定した目標に近づいているか定期的に振り返りを実施します。業務の規模によりますが、業務プロセスに対して大きな変更や改善を加えた場合は、1週間〜2週間に1回の頻度で定例会を設けて結果を振り返るとよいでしょう。
最適化の工程においては、大きく「業務プロセスとして正しく機能しているか」「目標としていた改善が達成されているか」の2点で確認を実施してください。
また、業務が安定してきた場合も振り返りは必ず継続してください。最低でも1ヶ月に1回は実施することを推奨します。最初に設定した目標が達成できたら、次の目標を設定して繰り返し取り組んでいきます。

代表的なBPMツール 5選

BPM(ビジネスプロセスマネジメント)をWordやExcelで管理することも可能ですが、ツールを用いることで、より簡単・効率的に活用できる可能性があります。弊社も「octpath」というツールを提供しておりますが、国内外含めて代表的なツールを紹介させていただきます。
また、BPMツールについての最新情報は、BPMツールごとの詳細な特徴をまとめた記事がありますので、合わせて参考にしてください。

octpath

弊社が提供しているサービスです。業務プロセスごとに手順や作業結果の管理ができ、octpathに従うだけで誰でも同じように作業できます。ミスや作業漏れを未然に防ぐことで進捗管理自体を不要にし、ダブルチェックや進捗確認、完了報告などのコミュニケーションコストも削減できます。

サービスサイト: https://octpath.com/

octpathのサービス納品プロセスに関わるイメージ画像です
octpath

pipefy

pipefyは海外のサービスで、かんばんボードが特徴的なBPMツールです。日本では知名度が高くありませんが、各業務ステップをかんばんボードの1列ごとに設定し、チケットを左から右へ進めることで進捗状況を管理できます。
サービスサイト: https://www.pipefy.com/

pipefyのイメージ画像です
pipefy

Process Street

海外のサービスで、他のツールに比べマニュアル管理に重きを置かれています。デザインはシンプルでありつつ、進捗率をバーで示したりタスク完了時にクラッカーのエフェクトを出したりと、ビジュアル化に力を入れています。

サービスサイト: https://www.process.st/

process streetのイメージ画像です。
process street

Ranabase

Ranabaseは、業務フロー図の作成と、それに対する情報記録がメインで、ややBPRに近い概念のサービスです。フローチャートを作成し付箋感覚で記録やメモを残していきます。他のサービスとは異なり進捗管理の機能はありませんが、業務を通して記録を残していくことで後続の作業者へ情報を伝えたり、業務の改善ポイントを明らかにすることができます。

サービスサイト: https://lp.ranabase.com/

Ranabaseのツールイメージ画像です

kissflow

kissflowはインドの企業が提供しているサービスです。複数のシステムに分かれており、そのうちの「Process Automation」や「Workflow」の中でBPMに該当する機能が提供されています。
サービスサイト: https://kissflow.com/

kissflowのイメージ画像です
kissflow

まとめ

BPMの概要やポイントについて理解できましたでしょうか。
「継続的な業務改善」と聞くと大変そうに聞こえるかもしれません。もし、具体的な改善点や改善策が見つけられない場合でも、現状の業務を継続的に”把握”できるようにするだけでも大きなメリットが得られるはずです。ぜひ、検討してみてください。

本格的にBPMに取り組みたい、検討したい方はBPMに取り組むための記事を集約したものがありますので、合わせて参考にしてみてください。

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